2020.04.17.FRI

品質システム(PQS)

医薬品品質保証こぼれ話【第15回】

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執筆者:浅井 俊一

医薬品品質保証こぼれ話【第14回】

法定表示事項の記載ミス対策

医薬品の直接の容器や添付文書への記載事項については、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下、「薬機法」)の第50条に、また、添付文書等の記載に関しては、同第52条に、それぞれ、詳しく定められています。直接の容器・被包への記載事項に関しては、「製造販売業者の氏名又は名称及び住所」など15項目、添付文書に関しては、「用法、用量その他使用及び取り扱い上の必要な注意」など5項目について規定されています。こういった、いわゆる、「法定表示事項」は、万一、記載に際して間違いがあると、直ちに不良医薬品となり回収の対象となることは周知のとおりです。

PMDA(医薬品医療機器総合機構)の回収報告に見られる回収事例は、その内容から大きく、医薬品の品質に関わる問題、つまり、「製剤の品質不良に関わるケース」と、それ以外の、「製剤品質そのものに問題のないケース」に二分されます。法定表示ミスは、この後者の代表的なケースであり、回収報告においても様々な表示ミスの事例が見られます。ちなみに、製剤品質に問題がない回収で、表示ミス以外のものとしては、許可のない製造所での医薬品製造や、許可を受けていない原薬の使用などが挙げられます。この種の回収は、製剤調製の段階では問題なく品質が確保されたものであるだけに、非常に残念な回収と言わざるを得ませんが、表示ミスによる回収も、回収に要する手間や経済損失、また、その品質保証体制の不備が問われるという点において、ほかの回収と何ら変わりありません。

法定表示の記載ミスが、直ちに回収となる理由は、改めて述べるまでもありませんが、医薬品は一般の製品と異なり、外観だけではその本質を見極めることができず、個装箱や添付文書の記載事項を見て初めて、そのものが何であるかが判断できるものであると同時に、用法や用量など、その記載内容に誤りがあると、場合によっては患者の生命に影響することがあるからです。

さて、この重大な問題に発展する可能性のある法定表示ミスにも、回収事例に見られるようにいろいろなケースがあります。製造番号の印字漏れ、製造販売業者名の記載なし、用法の記載ミス、承認書に記載のない添加剤の記載、また、改訂前の添付文書の誤使用、など様々です。こういった表示ミスは、製造過程における作業者の表示材料の取り違えや、生産準備段階の引き当てミスなどを除くと、多くの場合は表示物の作成の段階で発生します。すなわち、製造工程(製造業者)ではなく、製造販売業者(本社機能)における表示物の作成や改訂作業などにおいて発生することから、新規、改訂を問わず、印刷される前の一連の業務の進め方が重要となります。

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浅井 俊一

浅井 俊一

1974年ロート製薬入社。品質管理・薬事・品質保証の各業務にそれぞれ7年・15年・16年間従事。退職後、2018年まで中国の原薬工場および国内受託企業において、改善・人材育成を含む品質保証全般に携わる。
中国での活動に、「新薬事法下の日本の医薬品品質保証体制」(2009/上海),「日本に輸出するための原薬品質の要件」(2017年/杭州)などの講演や、北京CFDA(現, NMPA)主管「医薬経済報」への「中国原薬の品質確保の視点」の連載(2012年)などがある。
取り組みテーマは「製薬工場のヒューマンエラー対策」,「中国等の海外原薬の品質と安定供給の確保」,「GMP記録の信頼性確保」,「組織コミュニケーションの活性化」,「作業者のモチベーションの確保」など。
著書に「改訂版GMP教育訓練マニュアル」(㈱じほう、共著),「3極対応/試験検査室管理実践資料集」(㈱情報機構、共著)などがある。
元,日薬連品質委員会常任委員。元,日本OTC医薬品協会品質委員会委員長。元日薬連CSV検討会メンバー。 薬剤師。