2020.02.07.FRI

開発薬事

GCP入門【第2回】

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執筆者:大場 誠一

GCP入門【第1回】

GCPの4本柱
 前回は平成元年10月に発出された通知を「旧GCP」と呼称した。しかし、これは、平成9年3月に発出された「GCP省令」に対して「旧」と呼んでいるのであって、発出された当時はもちろん「旧」という接頭語はなく、GCP基準とか、単にGCPとかと呼ばれていた。旧GCPの詳細はここでは省くが、主な内容は次の4点に集約されるであろう。

1)   治験の契約は組織と組織の契約、すなわち治験依頼者と医療機関とで締結する
  こととされた。契約担当者について具体的に例示されており、製薬企業の代表
  権を持つ者と医療機関の長(医療法上の管理者)との間で締結されなければな
  らない。前回紹介したような製薬企業の開発部長と医師個人のような、個人対
  個人の契約は認められない。
2)   治験審査委員会(IRB)を設置することとされており、ここでは倫理的かつ科
  学的な観点で治験の開始の適否及び実施中の審議が行われなければならない。
  委員構成についても、医学、歯学又は薬学の専門家の他、少なくとも1人の専
  門家以外の委員を加えることになっている。
3)   インフォームド・コンセント、すなわち被験者には情報を十分に伝えられたう
  えで自由意志による同意が必要とされた。原則として文書同意という規定であ
  って、口頭同意も認められていたが、発出後数年経つと文書同意しか認めない
  雰囲気にはなっていた。
4)   記録の保存はすべてのGXPにおいて重要なことである。治験を倫理的かつ科学
  的に実施したと言っても、そのevidenceとなる記録が一定期間保存されなけれ
  ばならない。もちろん必要時に検索できるように、きちっと保存されなければ
  ならないのは
  言うまでもない。
 ここに述べた4点、すなわち①治験の契約、②治験審査委員会、③インフォームド・コンセント、④記録の保存の4つを「GCPの4本柱」と、当時は呼んでいた。「当時は」というのは、医薬品医療機器総合機構(PMDA)は現在では「被験者の人権の保護(安全の保持、福祉の向上)」と「治験の科学的な質(成績の信頼性)」の2つを「GCPの2本柱」として、 医薬品・医療機器等GCP/GPSP研修会で毎年紹介している。

医の倫理と国家試験問題
 医療資格の国家試験でGCPに関連した設問が出題されることがある。医師国家試験では2日間で400問ほど出題されるが、GCPや臨床試験という言葉が年に1-2問程度は出されているようである。薬剤師国家試験は350問程度の出題であり、GCPやGMP関連の設問が年に数問であるが近年特に出題が増えているように思う。歯科医師国家試験では360問ほどのうち臨床試験に関係する問題は2-3年に1度の頻度である。
 


 平成21年2月に行われた第102回歯科医師国家試験で図1が出題された。GCPに限らず医療に携わる方にとってはそれほど難しい問題ではなかろう。5肢択一の正答は「e ニュールンベルグ綱領」である。面白い問題ではあるが、私が出題するとすれば「ヒポクラテスの誓いから左右に枝分かれしている理由は何か」ということを問いたい。その答えは、右側の枝は医療現場(診療)における倫理であって、左側の枝は臨床試験の倫理ということになろう。この左側の枝の「ニュールンベルグ綱領」と、これに続く「ヘルシンキ宣言」という言葉をまずは覚えておいていただきたい。

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大場 誠一

大場 誠一

株式会社エスアールディ 信頼性保証部 部長
国内の製薬企業で十数年間薬理学の研究に従事した後、旧GCP施行当時から試験監査室長としてGCPとGLPの監査を担当。その後の欧州系製薬企業では信頼性保証室長としてGCPとGLPの監査の他、GMPとGPMSP(当時)の監査に携わる。そして後の米系CRO(開発業務受託機関)ではQA DirectorとしてGCP監査の責任者。現在は国内CROの信頼性保証部長としてGCPと臨床研究の監査を担当する。またGCPに関連した執筆や多くのセミナーでの講演活動、さらにDVDやe-ラーニングを用いた教育に携わるなど、30年間にわたってGCPに深く関わり続けている。

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