2020.01.24.FRI

品質システム(PQS)

医薬品GMP理解の第一歩【第3回】

この記事を印刷する

執筆者:小山 靖人

医薬品GMP理解の第一歩【第2回】

医薬品GMP理解の第一歩

【第3話】GMP省令における品質システム要素とシステム監査について

 

 【著者セミナー】
  医薬品GMP理解の第一歩
  ●日時:2020年3月27日(金)
 

1.はじめに

 前回はISO9001をベースに医薬品の開発から製造・品質管理全般を包括し、継続的改善を推進する指針である「医薬品品質システムのガイドライン」(ICH Q10、以下Q10)をご説明しました。それでは、GMPの分野で品質システムをどのように考えればよいのでしょうか。今回はそれについて考え、あわせてシステム監査の重要性についても論じたいと思います。

2.米国FDAの医薬品品質システム

 実は医薬品品質システム(Pharmaceutical Quality System, PQS)という考え方を初めて提示したのは米国のFDA(食品医薬品局)であり、Q10に先立つ2002年のことでした。当時、このPQSとは一体なんだろうかと、業界でずいぶん議論になったことを懐かしく思い出します。それはともかく、このPQSの考え方を背景にFDAはGMP査察官向けに「システム査察」と称される査察のガイドを発行しました*。その中で、GMP査察のポイントとして、6つのサブシステムが明確に示されています。次の通りです。
 1)品質システム
 2)製造システム
 3)施設と設備のシステム
 4)原材料のシステム
 5)包装と表示のシステム
 6)試験室管理のシステム
   *Drug Manufacturing Inspections (2002/2017改訂), FDA Compliance Program Guidance Manual 7356.002
筆者が以前に勤務していた米国系の外資系医薬品企業ではこの6つに加え、企業ポリシーとして、さらに7)無菌性保証のシステム、8)コンピュータ化システムを加えた8つのシステムを運用していました。このように、企業ごとにバリエーションはあるのですが、現在この6つのサブシステムは査察のガイドに止まらず、医薬品製造における品質保証/GMPのシステムとして、米国系企業を中心に広く受け入れられています。筆者が対応した海外企業によるGMP監査(企業による「監査」を当局による「査察」と区別しました)の経験でも、事前に送られてくる監査計画書の章立てがこの6つのサブシステム通りになっているケースが多くあります。また、こちらから海外企業の監査を行った場合に、サイトマスターファイル(Site Master File)と呼ばれる製造所の概要を記載した文書を確認するのですが、その内容がやはり6つのサブシステムの順に構成されていたりと、6つのサブシステムの考え方の支配力?に少々驚かされることがあります。
6つのサブシステムはあくまでも米国FDAの考え方ですが、EU圏でもEU-GMPを見ると基本は同様の内容と言えますし、近年の欧米の医薬品企業の合併でできたグローバル企業ではFDAの考え方もポリシーに取込む必要があり、今やこうした6つのサブシステムはグローバルに通用する考え方と言ってよいように思えます。
次項では、6つのサブシステムのうち特に1)品質システムに焦点を当て、わが国のGMP省令を品質システムの観点から考察します。

1 / 2ページ

小山 靖人

小山 靖人

小山ファーマコンサルティング代表
NPO-QAセンター顧問

1979年藤沢薬品工業株式会社(現アステラス製薬株式会社)入社、責任者として無菌製剤の製剤化研究、並びにGMP及び治験薬GMP全般に関する品質保証業務に従事。2003年日本イーライリリー株式会社に入社、開発QAマネージャーを担当。2007年塩野義製薬株式会社に入社し、金ケ崎工場の品質部門長を経て、本社部門の品質保証部にてGQPに関する製造所管理業務に従事。2019年、小山ファーマコンサルティングを起業。
この間、厚生労働科学研究「医薬品・医薬部外品製剤GMP指針」を座長として取りまとめ、厚生労働省より発出 (2003~2006年、主任研究官 檜山行雄先生)。厚生労働省の「PIC/Sガイドライン比較分析ワーキングチーム」に参加(2010~2011年)、また厚生労働行政推進調査事業「GDP国際整合化研究班」に参画し(2016年~現在)、GDPガイドライン発出に関与。日本薬剤学会「製剤の達人」受賞(2011年)、薬剤師、日本PDA製薬学会代議員。