2020.01.10.FRI

品質システム(PQS)

ドマさんの徒然なるままに【第12話】

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執筆者:古田 ドマ

ドマさんの徒然なるままに【第11話】



第12話:チコちゃんに叱られそうな大人たち2

「弊社はGMP遵守で作業しています。」とのコメントとは裏腹に、「ボーっと仕事してんじゃねーよ!」ってチコちゃんに叱られちゃいそうな製造所があったりする。どれだけ反面教師として参考になるかはともかくとして、GMPとしての問題点を認識するには有効かもしれない。第4話「チコちゃんに叱られそうな大人たち」でもお伝えしたが、そんな問題児とも言える製造所を、最近の米国FDAによるWarning Letterや薬業ニュースの中から、筆者のお好みで取り上げてみた。


反面教師も先生だと思い込んでいる大人
中国のOTCメーカーB社に関するものである*1。指摘としては、Data Integrity、特に記録保管不備オンパレードによるものであるが、そのレベル、いや感覚が半端ない。

例えば、ザクッと挙げるだけでも、バッチごとの使用期限後1年の記録保管を無視、試験検査の判定前に出荷を実施、品質部門の無責任な対応(手順、OOS、洗バリ、その他)、苦情処理の記録不備など、など。

究極は、技術移転(武漢⇒河北)の際に前施設での製造記録と製品サンプルを紛失したとのこと。まさに「開いた口が塞がらない!」の世界である。

こんなことを言ったら失礼かもしれないが、確信犯なんじゃないかと思われる仕草である。ただ、GMP違反および記録保管不備とは何か、といった点については、大変有益(?)な情報とも言えるWarning Letterである。何のこっちゃ!?

GMP違反であっても模範(?) は素晴らしいと思い込んでいる大人
米国O社の製剤製造所に関するものである*2。模範的、もとい典型的な複数のGMP違反が挙げられている。以下に列記する。
・製造エリア内の通路と製造室内に、非製造時で清掃済み(clean)とされながら
 白い残留物あり。ちなみに、本製造エリアは共有で各種栄養補助食品(サプリメ
 ント)や医薬品が製造され、しかも幼児・小児用医薬品まで製造されていたとか。
 恐ろしい。
・サンプリングプランと試験方法が科学的に適切ではなく、試験用水・最終製品の
 微生物試験もダメダメのダメ出し。
・PVができておらず、バッチ製造記録も不十分。
・品質システムが不十分で、品質部門が効果的に機能するための権限とリソースが
 与えられるようなトップマネジメントのサポートが必要とFDAから推奨されるほ
 どお粗末。

合せて、サプリメントに対する粗悪性とラベリング不備を含め、おびただしい数の指摘が列記されている。ハッキリ言って、かなり長いWarning Letterなんだわ、これが・・・。


● 洗浄という名の恐怖を認識していない大人
米国M社のインド原薬製造所に関するものである*3。例の発ガン性不純物、N-nitrosodimethylamine (NDMA)およびN-nitrosodiethylamine (NDEA)の混入で問題視された製造所の1つでもある。その原点として、複数業者から供給されたニトロソアミン汚染された溶剤について、保管タンクを識別しうる明確な記録がなく、かつ調査も不十分だったような。

また、非専用設備についての洗浄が不十分であったような。記述によると、「洗浄済み(clean)」と表示された2点の設備に“しみ(stains)”が認められ、それはニトロソアミン不純物で問題とされているバルサルタン原薬だったとのこと。「あらまー!?」といったところでしょうか。

当該社、グローバル製薬企業ではあるが、非専用設備の洗浄不備によるコンタミ・クロスコンタミの懸念について、本製造所以外にも米国内の施設など過去からFom483も含めて度々指摘を受けており*4, *5、その改善に疑問を抱かれている状況にあった。Quality Cultureなることが問題提起される昨今である。そういう意味では、「このようにならないようにしよう!」という良い例かもしれません。


● クロスコンタミの恐ろしさを認識していない大人:おーっ、強烈!
インドC社の製剤(固形・無菌)製造所に関するものである*6。これまた洗浄設備の不備、不具合調査の不備、無菌・滅菌工程の不備、無菌工程エリアの環境モニタリング不備といった不始末しまくりである。非専用設備については、残留物として多数の成分が検出されたとか。おぞましい。

挙句の果てには、当該製造所として米国市場向け製品の無菌医薬品の製造を永久に中止するとしてFDAに通知(you informed the FDA that you would permanently cease production of injectable drug products for the United States)したような。ただ、FDAとしても相当頭に来たようで、「改善回答としては、それが他サイトへの移転であれ、他社への譲渡であれアクションプランを示すと共に、米国内用の注射剤製造を再開する場合は書面で通知せよ」とまで付記している。

さらに、こんな事さえ分かってないんじゃないのかと言わんばかりに、企業向けガイダンス“Sterile Drug Products Produced by Aseptic Processing – Current Good Manufacturing” *7を見よとまで記している。どうも、当該製造所、過去にも2度Warning Letterを喰らっており、FDAとしても限界に達したようである。まぁー、その気持ち、分からないではない。

ちなみに、本項のサブタイトルの「おーっ!強烈」から丸善石油/小川ローザのCM「おーっ!猛烈」を思い出した方、明らかに60歳越えです。1969年当時としては放送限界ギリギリのエロいCMであったような気がする。まだうら若き中学生であった筆者も、番組そのものにも増して興奮して見ておりました。当時はビデオもなく、CMを狙ってのTV鑑賞は結構難しかった(現在ではYouTubeで見ることができます)。


● 細かいこと(?)を気にしてはいけないと思い込んでいる大人
インドG社の製剤(局所用軟膏・クリーム)製造所に関するものである*8。問題として、苦情処理・OOS・温度管理などが挙げられている。ザラザラ感があるとのことで、2010年時のFDA査察で既に指摘されており、その際は改善対応として処方変更を提案していたものの、直近の査察においては、2018年11月には処方変更の検討中に(その堅牢性も曖昧なまま)改善されたとのことであったとか。一方で、2017年11月以来、元の処方による製品20バッチが不合格で、38件の苦情があったとか。

また輸送温度についてはUSPを守らず、逸脱しているにも拘らず、リスクアセスメントも再発防止策も図られていなかっただけでなく、OOSとして不合格となったバッチについての適切な根本原因調査も効果的なCAPAもしなかったとか。

さらに容器施栓系については、穿刺・穴・亀裂に関する70件以上の苦情があったものの、適切に調査することもせず、原因は消費者による不適切な折り畳み(folding)と再折り畳み(refolding)によるものであり、「苦情率は取るに足りない(the complaint rate is insignificant)」として恍けたような。某国の政治家の責任転嫁に勝るとも劣らないその態度、恐れ入りました。普通ではマネできません(良識人であればマネなどしないが・・・)。

うーん、ある意味素晴らしい。ここまで品質無視・消費者無視となると、Quality Culture以前に人間性に疑問を抱いてしまう。


● 金のなる木こそ我が命を信念としている大人
ちょっと珍しいが、米国FDAによる米国G社の本社査察に関するものである*9。当該社自体は販売ネットワーク会社である。問題は、その販売製品がcGMP違反のためWarning LetterやImport Alertを受けている海外受託製造業者およびサプライヤーから輸入したもので、Dollar Treeブランド*10のOTC医薬品として、Dollar TreeおよびFamily Dollarの店舗で販売したというものである。

相当あくどい商売をしていたのであろう。News Releaseまで出されている*11。Dollar Treeなるその名前って、何となく「金のなる木」のような意味合いに聞こえる。言い得て妙な・・・。


● 水はあくまでオマケでしかないと思い込んでいる大人
米国T社の製剤(座薬・経口液剤・点鼻剤)製造所に関するものである*12。一言で言えば、製造用水システムの不備である。よりハッキリと言えば、当製造所、製造用水システムのバリデーションと日常管理を理解していないようである。それともまったく気にしていないのか? かなりの強者のように思える。

製造用水のチェックポイントといった意味合いでWarning Letterを読んでみるのも良いかもしれない。少なくとも、読者の皆様は気を付けましょうね。


● 某国公文書廃棄問題に匹敵する行為を物ともしない大人
インドS社の製剤製造所に関するものである*13。メインはData Integrityに関する指摘であるが、この製造所の凄いところは、スクラップヤードの55ガロン(約210L)ドラム缶に製造記録を含むGMP文書がシュレッダー待ちしていたということである。しかも、文書の日付は査察1週間前であり、品質部門によるレビューもチェックもされていなかったとか。

「おったまげー!」である。某国行政の公文書もシュレーダー待ちをしていたのを、野党からの提出申請の当日にシュレーダーにかけたとか。シンクライアント保管のバックアップは公文書とは言わないんだとか。GMP文書・記録の保管の原則って何なのかを根底から覆すような話が出てきているが、このインドの製造所はinspected by US-FDAですからねー。そもそもGood Practicesの本質って、管轄官庁・部署や業務には関係ないんじゃないかと思うんですが・・・。


と言うことで、今回はここまで。

米国FDAのWarning Letters、中国・インドという二大巨頭は相変わらずで、その地位は揺るぎのないもののように思えるが、度を越した製造所や会社を取り上げているので目立つということも背景にある。筆者の感覚にすぎないが、Warning Letters全体の最近の傾向としては、米国内の製造所が増加しているように思われる(人員不足で海外査察が減少しているという話もあり、その影響か?)。

さて、前回の第4話にも記したが、本話は出勤後の仕事開始前や仕事の合間のコーヒータイムでの“ちょい読み”を意図し、面白みのある驚愕の製造所をピックアップして概略紹介しているにすぎない。チコちゃんに叱られないようにするためのGMP・GDP・GQPの勉強としては、出典に挙げた原文をお読みいただきたい。上っ面だけの読み方では、チコちゃんに「ボーっと読んでんじゃねーよ!」と言われるどころか、「ボーっと分かったつもりでいるんじゃねーよ!」って叱られちゃいますよ。

では、また。See you next time on the WEB. 

【徒然後記】
本稿がウェブ掲載される頃は正月も過ぎてしまっていますが、明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い申し上げます。令和は昨年5月からのスタートなので短くて当たり前ですが、既に令和2年。益々時間の過ぎるのが早く感じる。毎年、年初めには「今年こそ、良いことあるかなー。」なんて思い(願い?)ながら、暮れには「今年も特に良いことがなかったなー。」で終わることが多いような・・・。と言いつつ、「今年こそは・・・」と期待してたりする。人間って、何と自分勝手なことか。たぶん、こんな気持ちを抱くのは筆者だけではないはず。いいんです。信じましょ。期待しましょ。それが人間らしさですよ。仕事ばかり、勉強ばかりじゃなく、ときに頭休めとして「ドマさんの徒然なるままに」でも読んでくださいな。書く側としては決してお気楽に書いている訳じゃなく、結構頭を悩ませながら書いていますが、読者の皆様の頭休めとちょっとした学習に貢献できているのであれば、筆者としての目的は果たしておりますので。では、また来月。


 
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*1:米国FDA/Warning Letter「Bingbing Pharmaceutical Co., Ltd MARCS-CMS 584327 — October 03, 2019」
https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/bingbing-pharmaceutical-co-ltd-584327-10032019
 
 
*2:米国FDA/Warning Letter「OHM Pharma, Inc. MARCS-CMS 586428 — November 19, 2019」
https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/ohm-pharma-inc-586428-11192019
 
*3:米国FDA/Warning letter「Mylan Laboratories Limited - Unit 8 MARCS-CMS 589297 — November 05, 2019」
https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/mylan-laboratories-limited-unit-8-589297-11052019
 
*4:米国FDA/Form483「Mylan Pharmaceuticals Inc, Morgantown, WV. 483 issued 4/12/2018」
https://www.fda.gov/media/114553/download
 
*5:米国FDA/Warning letter「Mylan Pharmaceuticals, Inc. MARCS-CMS 557903 — November 09, 2018」
https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/mylan-pharmaceuticals-inc-557903-11092018
 
*6:米国FDA/Warning letter「Cadila Healthcare Limited MARCS-CMS 584856 — October 29, 2019」
https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/cadila-healthcare-limited-584856-10292019
 
*7:企業向けガイダンス「Sterile Drug Products Produced by Aseptic Processing—Current Good Manufacturing Practice」https://www.fda.gov/media/71026/download
 
*8:米国FDA/Warning Letter「Glenmark Pharmaceuticals Limited MARCS-CMS 582701 — October 03, 2019」
https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/glenmark-pharmaceuticals-limited-582701-10032019
 
*9:米国FDA/Warning Letter「Greenbrier International, Inc dba Dollar Tree MARCS-CMS 574706 — November 06, 2019」https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/greenbrier-international-inc-dba-dollar-tree-574706-11062019
 
*10:Dollar Treeとは米国ではちょっと有名なディスカウント・チェーンストアらしい。
https://en.wikipedia.org/wiki/Dollar_Tree
 
*11:2019年11月14日付 米国FDA/News Release「FDA issues warning letter to Dollar Tree stores for receiving potentially unsafe drugs」 https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-issues-warning-letter-dollar-tree-stores-receiving-potentially-unsafe-drugs
 
*12:米国FDA/Warning Letter「Torrent Pharma IncMARCS-CMS 584701 — October 28, 2019」
https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/torrent-pharma-inc-584701-10282019
 
*13:米国FDA/Warning Letter「Strides Pharma Science Limited MARCS-CMS 576722 — Jul 01, 2019」 
https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/strides-pharma-science-limited-576722-07012019
 

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古田 ドマ

古田 ドマ

GMDPエッセイスト

2018年に薬業関係の某有名誌のオンライン版にコラムニストとして忽然と登場。製薬業界の内部事情に詳しく、特に監査業務に造詣が深いことから、医薬品の品質保証業務に従事していたものと推測されるが、その正体は不明。毒舌的な内容が多いものの、ヒューマニズムを掻き立てる心温まる物語的な内容のものもあり、歯に衣着せぬ物言いは実務担当者にとっての心の声を反映した本音トークとも言える。