2019.11.29.FRI

その他施設・設備関連

細胞加工施設を運用するキャリアの謎【第3回】

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執筆者:鮫島 葉月

細胞加工施設を運用するキャリアの謎【第2回】

細胞加工施設を運用するキャリアの謎

第3回 再生医療の隘路と哲学思考

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細胞加工施設をもつということは~細胞加工技術と再生医療のゆくえ~


本稿は、細胞培養加工施設と呼ばれるハードウエアに関わる人間が、出自文系という不可思議なキャリアを絡めつつ、再生医療分野についてつらつら書いている。あまり専門的な書き方はしないので、他分野の方もゆるりとお読みください。

▽侍従の苦労こそが「ケースバイケース」
 さて前回は施設管理に関わる人間を増やすべく、管理のオシゴトはこんなに素敵!楽しいよ!…とばかりの大変メルヘンなたとえをしてしまったのであるが(未読の方は第二回をご参照のこと)、思いのほかしっくりきたので、そのまま少しだけ続けたい。
 というのも、世ではお姫様を旅に出したい城が多いのか、この苦労した侍従のもとには、わりと他国の大臣や衛兵が「ハウツー」を教えてほしいとやってこられると思ってほしい。姫の安全を確保するにはどうしたら良いか。姫を無事送り出す手順はどのようなものだろうか?
 いえいえ、心配なのはわかりますが、侍従がお姫様を守る方法に「1+1」のような解はないのです。そう、侍従が守ってきたのは、あくまで「うちのお姫様」だけ。守りたければ、まかりまちがっても、よそのお姫様の話をうのみにしてはなりません。それが唯一の侍従の答えになる。
 滑る靴と滑らない靴はどれですか?という質問なら、この侍従も答えられる。しかし、滑る靴だろうがピンヒールだろうが、さっそうと歩ける隣の国のお姫様なら、もとより靴の心配などしなくていいではないか。侍従がとっても心配したのは、スニーカーをはかせても転ぶ「うちの姫君」だ。とはいえ、向かいの国のお姫様ほど睡眠時間が長くないのはとても幸い、実際の道中は短くて済む。転ぶリスクはそこである程度カバー。ただしお風邪を召しやすいので、お召し物にはとっても注意が必要――
 とまあ、要はすべては「お姫様の特性」にかかっており、侍従の苦労は、姫君の数だけ違うのである。まさしくこれが再生医療において多用される「ケースバイケース」というやつで、正解も答えもないからこそ、最適解を求めて東奔西走することが、施設管理の道となるのだということを、ここに前稿から間が開いたものの、補足しておきたい(註:間が開いた=10月はセミナーを行ったため、連載記事のほうは一呼吸おきました、という事象を指す。たぶんこれからもそうなる。ごめんなさい)。

 尽きぬ苦労をしてしまう侍従(管理者)であるが、実際慌てようが泣こうが倒れようが、お姫様は勝手に旅の一歩を踏み出してしまう、そういう時流である。だから侍従は真剣に、想像力を駆使して考えている。なにか不足していないか。確認できていない箇所はないか。未解決の問題はないか。今手に入る解決策はなにか、新しい手段はないか、もっともリスクが少ない選択肢はどれか。
 一体、なにをすれば、目の前にある問題は問題でなくなるのか?

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鮫島 葉月

鮫島 葉月

一般社団法人免疫細胞療法実施研究会事務局、株式会社日本
バイオセラピー研究所 事業推進部部長
慶応義塾大学大学院医学研究科(修士)修了後、2008年株式会社セルシードに入社。再生医療に係る臨床用細胞加工物の開発および品質保証を担当し、当時の細胞培養加工施設の運用整備(GMP準拠)に携わる。2012年(株)日本バイオセラピー研究所に入社、再生医療関連法に同社を適応させ、特定細胞加工物の製造許可を取得。新規の製造施設設計と運用構築、文書策定等を行い、年間3000バッチ以上の特定細胞加工物を製造する細胞加工施設の施設管理責任者を担っている。
一般社団法人免疫細胞療法実施研究会においては、研究会事務局として、再生医療等を行おうとする医療機関向けに申請サポートデスクを運営。すでに200以上の計画策定を支援している。
また当該法人にはICTA特定認定再生医療等委員会を設置し、委員会事務局として再生医療等の審査対応を行っている。