2019.11.08.FRI

レギュレーション

ドマさんの徒然なるままに【第10話】

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執筆者:古田 ドマ

ドマさんの徒然なるままに【第9話】



第10話:世界に一つだけのGMP

序章
本話は、前話「ドマさんの徒然なるままに」の第9話「Sustainable GMP」の補足的な話である。『勝手にGMP論』シリーズ*1 の第4弾でもある。今回もふざけたタイトルとお叱りを受けそうであるが、内容としてはマジメな話である。

なお、本話においては、品質に関わるGood Practices全体、具体的にはGMP省令・GQP省令・GCTP省令・GDPガイドラインの総称として「GMP」と記しているので、その点をご容赦願いたい。


第1章:標準的GMPって存在するのか?
筆者、コンサルテーションやアドバイスの業務をしていることもあり、「うちは、標準的GMPでやってます。」とか、「うちは、標準的GMPで十分です。」とかいう言葉をよく耳にする。が、そもそも個々の施設や製造所において、「標準的GMP」ってあるんだろうか。行政の思惑としては、GMP自体がMinimum Requirementの規制要件で“標準的内容”のはずだからである。そのため、対象となる施設や製造所はあくまで“標準的”なものを想定しているものと思われる。その意味では、標準的GMPは存在するということになる。禅問答のようであるが、おバカな筆者は、そう感じるのである。


第2章:お宅が標準ですか?
ただ、ここで考えなければいけないことは、“運用”については標準的で良いのか否かということである。そもそも、貴施設や貴製造者、まして貴社は標準なのか? もしそうだとしたら(そう思っているのだとしたら)、何をもって標準と考えるのか? GMPの運用については、必ずしも従業員数や売上高といった会社規模で考えるものでも、左右されるものでもない。あくまで、自施設・自製造所・自社としての取り扱い製品の品質を鑑みてベストな運用方法と手順を模索すべきであろう。そう考えれば、自施設・自製造所・自社が標準的かどうかよりも、現在のGMP運用の状態が適正か否かとして評価すべきものなのではないだろうか。


第3章:リスクベース・サイエンスベースって何ですか?
原点に戻って考えれば、リスクベース・サイエンスベースなアプローチって何なのか? 品質確保のためのベストウェイに他ならないはず。そうであるならば、自施設・自製造所・自社としての取り扱い製品の物性・特性を踏まえ、さらに当該施設の作業環境や作業状況を踏まえて個々に変動するはず。全く“同一”といった製品の取り扱いなどあるはずがない。違いがあるなら、当然その違いを踏まえて対応しなければならない。それこそが、リスクベース・サイエンスベースなアプローチのはず。言葉ばかりが優先し、実態としての運用(中身)が追いついていない。残念ながら、そんな気がしてならない。難しい言葉は要らない。やらなきゃならないことを適正に、適切にやればいい。それが本来のGMPコンプライアンスだと考える。そもそも、Good Practicesって、「適正管理」って意味合いで訳されているような・・・。


第4章:ましてGMPって進化し続けているんですが・・・、
この「ドマさんの徒然なるままに」の第5話「X+Yの悲劇」および第9話「Sustainable GMP」でも述べたように、GMPは確実に進化し続けている。自施設・自製造所・自社としての状況に変わりはないとしても、法規制として求めるコンプライアンスの質・量については、より広範囲かつ重きものになっている。ときにProcess Validationのように概念さえ変わってしまうことだってある。前話でも述べたが、概念が変われば、若干であれ何であれHow toは変えざるを得ない。GMP対応の時代遅れは、取りも直さず、コンプライアンス不備に至る。そうならないためにも、自施設・自製造所・自社としての取り扱い製品の品質にベストフィットするGMP運用を確立し、該当する法規制の改正があっても多少の変更で済むような核心を突いた運用を維持し続けることが望まれる。

ちなみに、この約30年間のGMPにおける品質の考え方の変遷を、筆者の独断と偏見で整理してみた(図1)。お宅は大丈夫ですか? 細部はともかくとして、大きな流れに気づかぬことも、溺れることもなく、流れに沿った適正な運用は図れてますか?
 
図1:GMPにおける品質の考え方の変遷
 
第5章:本質は普遍的であっても、現実対応は違うんじゃないですかー!?
では核心を突いた本質論だけのSOPで良いのか、と問われれば、現実の運用、しかもハンドリングに近ければ近いほど、そう単純ではない。理由は簡単である。概念的なことについては、普遍的であり、法規制の改正にもそう簡単には左右されない。一方で、個々の製品の製造や試験検査等のハンドリングについては、その物性や特性、さらに当該施設の実態・実情が強く影響する。まして、受託業者であれば、委託元の意向も反映せざるを得ない。そのため、誤解を招く表現とはなるが、例えば、逸脱管理手順ひとつを取っても、顧客ごとに微妙に異なる複数のSOPを用意する必要が生じる場合さえあるのではないか。基本的フローはともかく、細部については微妙に異なる複数の手順が存在する事態が生じる。そんなことは、往々にして在り得るように思う。

第6章:だからこそ、世界に一つだけのGMPが大事なのでは?
「GMPはサイエンスベース・リスクベースの基に品質システムの一環として実践されるべき」と言われ久しい。品目が変われば、その物性・特性が変わる。となれば、その背景にあるサイエンスは違って当然。また、それぞれに対するリスクの程度や低減策は変わる。必然的に同じGood Practicesは通用しない。逆に言えば、個々にGood Practicesが求められ、そのための個々に適切なSOPsが発生する。

さらに、GMPに順位付けがあるわけではない。グローバル企業だから立派なGMPだということでもない。グローバル企業は、その取り扱い品目数が膨大で、世界各国に製造施設等を抱えているため、その社会的・文化的背景の違いを超えての品質保証が求められることから、より効率的かつ効果的な品質保証の方法を行う必要があるというだけのことではないのか。歌の文句ではないが、「NO.1にならなくてもいい」、「世界に一つだけのGMP、一つ一つが違う物性・特性を持つ。その品質を確保することだけに一生懸命になればいい」と思う。そう、「もともと特別なOnly one」なのだから。読者の皆様は、どう思いますか。


終章
前話、第9話「Sustainable GMP」では、普遍的な本質を理解し、そこを突く運用について記した。本話では、一つとして同じモノやコトのない実態に則した手順書の作成とその運用について記した。一見矛盾とも思える二つではあるが、実際の運用においては、本質的で基本となる概念やポリシーといった部分とサイエンスベース・リスクベースなアプローチによる柔軟な対応が必要なプラクティカルな部分の両立が必要と言いたかっただけである。これこそが、筆者の言いたい「世界に一つだけのGMP」である。読者の皆様方に納得して貰えるとは思っていない。ただ、筆者の考え方を素直に忠実に記しただけである。

では、また。See you next time on the WEB.

【徒然後記】(本後記は10月22日に執筆しています)
ラグビーワールドカップ2019日本大会(以下、WC)は興奮すると同時に感動した。日本は準決勝への道は絶たれたが、予選プールでは4戦全勝という予想以上の結果であり、全てが日本のラグビー史に残る試合であった。初の決勝トーナメント進出、相手は競合の南アフリカ、結果はともかく素晴らしい試合であった。今回のWCでは“にわかファン”が増えたとか。かくいう筆者もその一人。TVを観ては、独りでガッツポーズをし、雄叫びをあげている。お蔭様で、ラグビーのルールや用語をおぼえ、その精神を学ぶという特典が付いた。最も感動的であったのは、対南アフリカ戦の後の選手たちの涙とホッとした安堵の表情。この4年間の練習の辛さと努力の深さに加え、選手たちの今大会に対する想いが滲み出ており、まさに一仕事を達成した勇者の表情である。合言葉であるONE TEAMということが試合中のみならず、日常的に発揮されていることも窺えた。結果はともかくとして、選手たちの思いは、ラグビー関係者のみならず、子供たちにも通じたに違いない。試合を見て感動した若者や子供たちが選手となり、いつの日か優勝に漕ぎ着ける日もさほど遠くないような気がする。このオヤジでさえ、あれほど感動したのだから。選手の皆さん、興奮と感動を有り難うございます。また、今回は日本代表に入れなかった選手の皆様、次回出場に向けて頑張ってください。そして、選手のために、いや観客のためにも尽力してくれた関係者の皆様、ありがとうございます。そして、表には出てきていないが、選手のための影の支えとなり、一方では日々の生活を犠牲にしてきたであろう家族の皆様、お疲れ様でした。今回の試合で引退する選手、これからも継続する選手、それぞれの道はあるでしょうが、4年後の次回WCへとバトンタッチされることは間違いない。そして、皆様のラグビーに対する情熱と熱き想いは、将来のスーパースターに受け継がれるに違いない。再度、興奮と感動をありがとうございます。

 
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*1:『勝手にGMP論』シリーズ、誠に勝手ながら、そう命名した。ちなみに、第1弾から第3弾までは、以下の通りである。
第1弾:第5話「X+Yの悲劇」
第2弾:第6話「Psの悲劇」
第3弾:第9話「Sustainable GMP」
 
 

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古田 ドマ

古田 ドマ

GMDPエッセイスト

2018年に薬業関係の某有名誌のオンライン版にコラムニストとして忽然と登場。製薬業界の内部事情に詳しく、特に監査業務に造詣が深いことから、医薬品の品質保証業務に従事していたものと推測されるが、その正体は不明。毒舌的な内容が多いものの、ヒューマニズムを掻き立てる心温まる物語的な内容のものもあり、歯に衣着せぬ物言いは実務担当者にとっての心の声を反映した本音トークとも言える。

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