2019.11.01.FRI

再生医療

再生医療等製品の品質保証についての雑感【第7回】

この記事を印刷する

執筆者:水谷 学

再生医療等製品の品質保証についての雑感【第6回】

【第7回】 再生医療等製品製造の再現性と工程操作の機械化

はじめに
 今回は、製造の再現性に関わる機械化についての雑感をお話しします。機械化と自動化については、以前、「細胞製品の品質確保のための要求事項」(第8回:工程の機械化と自動化)にて述べていますので、本稿では、品質保証の立場で機械化について関与できること、および、AMED事業「再生医療の産業化に向けた細胞製造・加工システムの開発」(SPL 紀ノ岡正博)での知見を踏まえた具体的な動作パラメータ設計の考え方について紹介します。
 また、本稿では用語の定義として、『自動化』を工程作業の無人化を目的とした操作間の「判断」を含む機械化と考え、製造工程の再現性を実現させるために必要な重要工程パラメータ(CPP)について、人(作業者)と機械を比較し機械動作とする可能性を考慮する、『機械化』に限定してお話しをします。


● 再生医療等製品の工程操作における機械化について
 一般的な製造工程の機械化については、特定の製造方法に対し、先んじて重要工程パラメータ(CPP)を標準化し製造再現性が安定されており、その上でスループットの向上のため機械装置の導入を行います。このとき、生産のスループット向上とコスト低減のためには、無人化を要件とした自動工程の開発が行われます。これに対し、現状の再生医療等製品の製造では、治験後において製造方法の変更ができないため、製品開発時において予め製造方法が決定してしまいます。そして、CPPについても、その時に特定のデザインスペースの範囲で設定されてしまいます。治験後に手操作の培養から培養槽を用いた懸濁培養へと変更し、CPPを標準化するというようなことは困難です。したがって、商業生産の工程設計において新たに製造方法が生じることは皆無と考えます。そのため、製造の品質保証の観点では、施設設計において新たな製造方法や手順の導入を考慮する必要は無く、製造工程の機械化に特に重要性は生じません。作業者の手操作であろうと機械装置であろうと、製品開発時に設定されたCPPが予め定められた基準の範囲内であり、それが再現性よく実施されるだけで良いのです。筆者としては、製造工程の機械化は製品開発(CMC)の範疇であり、品質保証として考慮する必要があるとは考えていません。もし、機械化に向けて苦労が生じたのであるならば、それは製品開発の段階でCPPが適切に設定されていないだけであり、製品開発において担保されるべきことと考えます。なぜなら商業生産の工程設計では、原則、治験時(開発終了時)から何も変えてはいけないのですから。
 すなわち、品質保証の立場における現状の再生医療等製品製造の機械化とは、治験時と異なる製造方法やCPP設計の機械装置は導入を考慮されず、少数の熟練者(開発者)による細胞加工における工程のCPPを最適化し、必要に応じて治験時とは異なる製造スケールで、いつでも同じ品質の製品を製造することができる製造再現性を達成することが要点となります。このとき、機械化の目的は、商業生産に係るスケールアップにおいて、例えば培養容器のサイズが変更されたり数量が変更されたりした場合においても、CPPが予め定められた範囲を逸脱せず、細胞加工操作の再現性においてばらつきが生じないようにすることであると考えます。

1 / 2ページ

水谷 学

水谷 学

大阪大学 大学院工学研究科 生命先端工学 特任講師。
1997年群馬大学大学院工学研究科博士後期課程を中退。国立循環器病センター研究所生体工学部にて生体適合性材料の研究を行った後、株式会社東海メディカルプロダクツにて循環器用カテーテルの開発および製造に関わる。2004年より株式会社セルシードにて再生医療に係る開発および品質保証を担当し、臨床用細胞加工物の工程設計や細胞培養加工施設の設計と運用を実施。東京女子医科大学での細胞シート製造装置開発を経て、2014年より現職。細胞製造システムの開発に従事。日本再生医療学会臨床培養士制度委員会委員、H-CARM特定認定再生医療等委員会委員。