2019.10.25.FRI

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ラボにおけるERESとCSV【第57回】

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執筆者:望月 清

ラボにおけるERESとCSV【第56回】

ラボにおけるERESとCSV

FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(27)


※DIの最新情報を解説!
FDA指摘300件に学ぶラボと製造のデータインテグリティ実務対応
~ガイダンスを読むだけではわからない現場レベルの対応とは~

 

7.483における指摘(国内)
前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。

 
■ JJ社 2018/6/5 483
施設:原薬工場


Observation 1
a) QAが電子生データをレビューしていない
b) QAが監査証跡をレビューしていない
d) QCラボにおいてOOS調査が報告されていない。
  OOS手順によると再テスト結果を平均するように規定されている。
e) 手動積分の手順が規定されておらず、日常的に手動積分が行われている。
  また、分析メソッドを事前承認なくQC職員が変更しており、変更管理も
  なされていない。
f)  Empower3ソフトウェアを使わずにHPLCのコントロールパネル操作により
  分析を行うことができ、総ての分析が記録されていることを保証できない。
  また、HPLCのコントロールパネルから積分面積をプレビューすることが
  できる。

★解説 a) b):
■QAレビュー
PIC/Sの査察官むけデータインテグリティガイダンスにQAレビューが以下の様に記載されている。(PI 041-1 Draft 3 §9.6)
•    QAは監査証跡のレビュー計画を策定すること
•    そのレビューは自己点検に組み入れること
•    監査証跡レビューにおいて、データレビューの効果と適格性を確認すること
•    QAによる監査証跡レビューは
 ◆  抜き取りでもよいし
 ◆  標的を決めて実施してもよい
また、オリジナル・レコードがダイナミック形式の場合
•    ダイナミック形式の電子記録を監査証跡を含んで維持しなければならない
•    QCにおけるデータレビューおよびQAレビューともに監査証跡を含む電子記録をレビューしなければならない

★解説 d):
■QCラボにおけるOOS調査
QCラボにおいてOOS(規格外 Out Of Specification)となった場合の調査は、下記ガイダンスに従い実施/報告するのがよい。
•    FDAのOOS調査ガイダンス
Guidance for Industry, Investigating OOS Test Result for Pharmaceutical Production
ファームテクジャパン2018/2にて解説
•    MHRAのOOS/OOT調査ガイダンス
Out of Specification & Out of Trend Investigations (Rev. 2017/10)
https://mhrainspectorate.blog.gov.uk/2018/03/02/out-of-specification-guidance/
 ◆  FDAのガイダンスを補完している
両ガイダンスの概要は連載第42回のObservation 2の解説を参照されたい。

★解説 e):
■手動積分/再解析
手動積分や再解析は良いとこ取りの繰り返し測定と疑われないよう、手順に従い実施しその記録を残す必要がある。手動積分や再解析の要件は以下の様になる。
•    開始条件を規定すること
•    監査証跡を含む電子記録をすべて維持すること
•    データレビューにおいて以下の妥当性を確認し記録すること
 ◆  開始条件
 ◆  手動積分/再解析の内容と結果
•    上記のレビューは監査証跡を含む電子記録により行うこと
シングルインジェクションも良いとこ取りの測定ではないかと疑われることがあるので、その妥当性を説明できるよう十分な記録を残しデータレビューにおいてその記録を確認する必要がある。ダイナミックデータであるのでシングルインジェクションの記録も電子記録で維持・レビューするのは言うまでもない。

★解説 f):
■HPLCのパネル操作とプレビュー
2つのことが指摘されている。
①    HPLCパネル操作
•    HPLCのハードウェアパネルからHPLCを操作できてしまう
•    その場合、操作の監査証跡が残らない
•    そのため、HPLCのハードウェアパネルから良いとこ取りの隠れ測定をしていなかったことを証明できない
HPLCのアプリケーションソフトウェアやCDS(クロマトデータシステム)の設定によりハードウェアパネル操作を禁止できるならそのように設定すべきである。設定により禁止出来ない場合は、操作パネルに保護カバーなどを付加しパネル操作を物理的に防止することなどが考えられる。
②    HPLCプレビュー
HPLCアプリケーションソフトウェアやCDSから分析状況をプレビューし正当な理由なく分析を中断すると、良いとこ取りをしていると指摘される。プレビューにより分析を正当な理由なく中断してはいけないことを規定するのはもちろんであるが、そのようなことが行われていないかデータレビューにおいて監査証跡により確認する必要がある。分析を中断せざるを得ないとプレビューにより判断した場合、その判断理由とともに電子記録を維持しデータレビューにおいて判断の適格性を評価し記録しておくこと。

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望月 清

望月 清

合同会社エクスプロ・アソシエイツ代表。
1973年山武ハネウエル株式会社(現アズビル)入社。分散型制御システム(DCS)を米国ハネウエル社と分担開発。2002年よりPart 11およびコンピュータ化システムバリデーションのコンサルテーションを大手製薬会社にご提供。2009年より微生物迅速測定装置の啓蒙普及に従事。2014年5月より現職。