2019.10.11.FRI

レギュレーション

ドマさんの徒然なるままに【第9話】

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執筆者:古田 ドマ

ドマさんの徒然なるままに【第8話】



第9話:Sustainable GMP

序章
本話は、「ドマさんの徒然なるままに」の第5話「X+Yの悲劇」および第6話「Psの悲劇」の続編である。さらに言えば、『勝手にGMP論』シリーズ*1の第3弾である。

なお、本話においては、品質に関わるGood Practices全体、具体的にはGMP省令・GQP省令・GCTP省令・GDPガイドラインの総称として「GMP」と記しているので、その点をご容赦願いたい。


第1章:お宅、なんでそうなるの?
読者の中には受託製造業者や原材料サプライヤーへの監査を経験したことのある方も多いものと推測する。その中で、こういったことを経験したこともあるのではないか。同一の業者・施設を複数回訪れる。最初に訪問した際は、応対者(QA責任者・製造管理者・各部門責任者に限らない)がそれなりの経験を有しているのか、かなり的確な受け応えであり、当該施設のGMP(場合によってはISO)レベルも満足しうるものと感じる。その後に再訪問した際には、別の応対者となり、最初に訪問したのと同じ施設とは思えない。場合によっては、以前の回答はウソだったのかと疑問を抱いてしまうほどの違和感を覚える。そんな経験である。

単に応対者のレベルの差と言ってしまえばそれまでだが、GMPレベル、まして品質システムのレベルという意味では、そう簡単に済まされるものではない。どちらが真のレベルなのか? そもそも実態としてどうなんだ。「応対者の教育訓練が不足していたので、今後はシッカリと教育訓練を施します。」なんてコメントされたら、ブチぎれてしまいそうである。そういう問題ではない。上手である方がよいのは事実であるが、上手か下手か、そのテクニックを問題視しているわけではない。あくまで当該施設、さらには当該社として、真の意味でのGMPをどのように解釈し運用しているのかを問うているのである。


第2章:お宅、勉強してる?
あるいは、このようなことはなかったであろうか。GMP省令等が改正されたにも関わらず、しかもだいぶ時間としては経過しているにも関わらず、その運営体制もSOPも何も変わっていなかったり。ひどい場合は、3年毎のSOP見直し期間を設定しているにも関わらず、改正による要件の追加や変更が反映されていなかったり。こういう事態に遭遇すると、「GMPって、世間の状況や時代の流れを踏まえて改正されるものであることを分かっているのか?」、「本気でGMPコンプライアンスする気があるのか?」と疑問を抱いてしまう。


第3章:お宅、自分で考えてる?
さらに、このようなことはなかったであろうか。SOPを拝見させて頂く。何となくどこかで見たような書きぶりと内容である。その場で思い出すかどうかはともかく、どこかの時点でハッと気づく。アレッて、某ウェブサイトに掲載されていたものだとか、某製薬団体で参考見本として配布していた奴だとか、である。

また、こんなことはなかったであろうか。SOPの内容が中規模の受託製造業者として不似合いなほど立派すぎる。例えば、変更管理手順書では、申請書の内容に影響を与える業務でもないのに、メインが一変レベルの変更手順として記述されていたり。記述の必要性と一変の有無の影響評価については理解するが、日常的に発生しうる変更についての記述が不十分な上、その手順があまりにも大げさで、「これで回るのか?」と不安になってしまう内容なのである。「こんな手順、大手の製造販売業者でもない限りやらないよなー!?」といった内容なのである。

また、別の例を挙げれば、逸脱管理手順書では、全ての逸脱についてシニアマネジメントまで巻き込んでのCAPAを実施するという素晴らしすぎる内容になっていたり。そこまでやることは悪いことではないし、やれるのであればそれでいい。「うちは中小企業なので工場長が経営者だから。」とでも言うのだろうか。でも、「大手の製造所だってそこまでやる会社は少ないよなー!?」と思ってしまう内容であれば、疑問を感じざるを得ない。申し訳ないが、「それって自社で作成した?」、「どこからかパクッてきていない?」、「委託元の製造販売業者からの受け売りのSOPなんじゃない?」と思わざるを得ないのである。

立派なSOPを準備することは悪いことじゃない。でも、実行できなければ、絵に描いた餅で終わる。それでは意味がない。あくまで、身の丈に合った、自施設・自製造所・自社にマッチしたSOPで十分と考える。むしろ、その方が実践的であり実務的と考える。大事なことは、当該製造所・当該製品のリスクを考慮した上で、“使える、そして使っているSOP、純粋に手順として使いこなせる文書”であるべきである。


第4章:法規制は進化しているんですけど・・・
この「ドマさんの徒然なるままに」の第5話「X+Yの悲劇」でも述べたように、GMPは確実に進化している。本邦でのGMPに限定しても、1976年の行政指導通知を皮切りに、省令化、許認可要件化、PIC/S GMPとの整合化、さらに現在は改正まで予定されている。自社の事情にお構いなしに行政上の思惑として進化していると言わざるを得ない。

法規制の改正の動き、特に今回のGMP省令の改正については、個々の要件についてのHow toが改正されていると言うよりも、むしろ原則的な概念、WhatとWhyの改正に思える。WhatとWhyが変われば、必然的にHow toは変わらざるを得ない。

したがって、先述のような「定期的な見直しによる改訂と称しながら、実態として中身に変更のない改訂には限界がある」としか言いようがない。悪い言い方をお許し頂けるのであれば、「形式としてのアップデート」と疑われても仕方ないのではないか。誤解は不安を抱かせ、不信に繋がる。内容に手を加える必要がないのであれば、結果としてはそれでいい。しかし、実際に世間の法規制の改正を熟読した上で、自施設・自製造所・自社として変更不要とした理由を答えられるようにして頂きたいものである。


第5章:でも本質は変わっていないし、変わらない
そもそも、品質関係のGMP省令・GQP省令・GCTP省令・GDPガイドライン(第5章のみGxPと記す)の四者の要件にどれだけ差があると言うのか? 読者の皆様方、考えたことや比較したことがありますか? 結論を言ってしまえば、要件としては大差ないのである。作業行為から生じる差、品目の物性・特性から生じる差については、当たり前であるが、致し方ない。むしろ、この物性・特性による差については、法規制としてのGood Practiceの問題ではない。単純に科学的な問題であり、常識的かつ良識的な判断として、品質不良や低下のリスクを少しでも低減させるための策を取らざるを得ないはず。そして、それが本来のサイエンスベース・リスクベースアプローチのはず。

GxPの規制要件としては大差ないことを一覧として纏めてみた(日本GxP省令等の項目比較表)。あくまで筆者個人の見解に基づくものであり異論もあるかと思うが、パッと見としては分かり易いかと思うので、良ければ、本話の最下段(注釈を含む)の「日本GxP省令等の項目比較表」をクリックして一瞥してみてください。ダウンロードも可能です。

あくまで、省令等のコンテンツ(条項)を一覧として示したにすぎず、個々の具体的要件、例えば、文書及び記録の管理で言えば、保管が求められるという要件を言いたいだけで、品目種別による保管年数の相違に言及しているわけではないことをご理解いただきたい。

第6章:ならば本質を押さえよう!
第5話「X+Yの悲劇」にも記したが、大事なことは、「要件の本質を満たすことであり、要件を満たすためには本質を見極め、そこを突くこと」なのである。それが最も効率的で効果的な手法なのである。なぜそれに気づかない。それとも気づいていながら修正(改訂)出来ないのか? 答えは簡単である。GMPの本質を読み取っておらず、最悪は読み取ろうともせず、「SOPは揃っています。」といった表面的な体裁だけを整えようとするからである。

行政や製薬団体のSOP見本をパクッて使う*2、もう少し金をかけた会社では、外部コンサルタントが作ったSOPを使っているからである*3。これが、「このSOP、どこかで見たことあるなー!?」と感じさせる所以である。


第7章:本来のperformanceをsustainableできますか?
正論ではあるが、立派すぎて、看板あるいは建前としか思えないGMPではなく、多少の拙さはあったとしても、また地道で目立つものではないとしても、当該製造所や当該会社の身の丈に合った、実行可能で着実かつ堅実に実行し続けることのできるGMPが求められる。

GMP自身が進化し続けていることも考え合せれば、実行し続けるということは、その時世に見合った考え方やサイエンスを取り込み、第三者からも納得されるGMPとして進化に歩調を合わせることでもある。GMP体制の構築という第一段階が終えたら、次は実行でしかなく、第二段階はその実行の維持・継続をどうするか考えるべきであろう。

GMPをやるなら、本来の目的に沿って、また自社の目標に向けてキチンとやりたいし、やって欲しい。「パフォーマンスGMP」に陥って欲しくない。ここで言う“パフォーマンス”とは、芸術の世界で言う“演技”に近い意味として、ここではちょっと皮肉込みとしての表現として用いている。少なくとも、GMPの世界で言う、PQの意味合いとしての“Performance(稼動性能)”とは縁遠いような・・・。せっかく行うのであれば、「Performance GMP」として実行して欲しいと願う。そして、それを持続していくことこそが、本話のタイトルとして記した「Sustainable GMP」である。筆者の思いが、もし少しでも読者に伝わったのであれば、洒落込み*4として本話を記した甲斐がある。

終章
何事もそうであるように、新たに何かにチャレンジすることよりも、ある程度の地位やレベルになってからそれを維持することのほうが難しい。スポーツ競技ならば、それは明白である。いわゆる、Challenging ChampionよりもDefending Championの難しさである。GMPは順位付けするものではない。しかしながら、ビジネスとして許認可取得のために、管理者や責任者を立て、SOPを用意してGMPの準備をすることは、目標が明確である上に、物理的に目に見える作業であることから、労力をかけさえすれば、その進捗も達成もどうにかなる。一方で、組織やSOP完成後の実運用となると、自身では不足・不備に気づくことも難しく、進歩に至っては全く見えない(感じとれない)と言っていい。

本話では、そんな本人も気づかぬ状態に陥った施設・製造所・会社をやり玉に挙げた。具体的にあの会社だとか、この会社だとか非難するつもりはない。単に、そういう現実問題を抱えてしまっている会社さんもあるんじゃないか、陥らないようにしましょうという注意喚起のつもりで記した。「うちも注意しなきゃ」と思って頂けたのであれば有り難い。逆に、「これはうちのことじゃない。よそ様はヒドイねー。」と思い込んでいるのであれば、それこそ危険な状態である。

では、また。See you next time on the WEB.

【徒然後記】
この数年、幼児虐待、しかも死に至るようなケースが多いと感じる。何の罪もない、純真無垢な天使のような子供を苛めるなんてこと、たとえカーッと頭に血がのぼるようなことがあったとしても自分の子供に手を上げることなど出来るものなのだろうか。決して他人の子供だったらいいなんてことを言うつもりはないが、実子・連子に限らず自分の子供であるからこそ容認してしまう、我慢できる、というのが親バカとも言える“親の本質”なのではないか。筆者自身、立派な父親であったと胸の張れるレベルではなかったかもしれない。でも、息子や娘に暴力を振るったことなどない。今では孫もいる。この子たちと同じくらいの年齢の子が、親から虐待を受け、大ケガ、さらに死んでしまうとは・・・。むごい、むごすぎる。ニュースを観ているだけで悲しくなり、泣けてくる。虐待を受けた子供たちには共通点がある。TVからだけで分かる。みんないい子、凄くいい子だということ。それが、なぜ、なんで・・・。未来を絶たれた子供たちのご冥福を祈りたい。現世では味わえなかった分を取り戻すほどに、天国で思いっきり笑って、遊んでね。合掌。


 
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*1:『勝手にGMP論』シリーズ、誠に勝手ながら、そう命名した。ちなみに、第1弾と第2弾までは、以下の通りである。
第1弾:第5話「X+Yの悲劇」
第2弾:第6話「Psの悲劇」
 
*2:行政や製薬団体としては、自施設・自製造所にフィットするようにカスタマイズして使用することを期待かつ意図し、あくまで“標準的”な参考SOPとして公開提示しており、さすがに100%コピーとしてパクッて使用されることまでは想定していないと推測する。
 
*3:外部コンサルタントによるSOP、率直に申し上げるが、元大手製薬会社のQA出身者であることが多く、自身の知識・経験に基づいて作成したSOP内容が中小企業にそぐわない場合がある。当人の期待度と当該社の現場の実情・レベルとが噛み合わないのである。どこまで行っても、現場で使用するSOPは現場担当者自らがまずは作成することが基本で大事と考える。
 
*4:「Performance GMP」や「Sustainable GMP」といった公式用語も定義もない。あくまでそれぞれの言葉のイメージから筆者が勝手に造った造語である。
 

※Excelダウンロード
日本GxP省令等の項目比較表

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古田 ドマ

古田 ドマ

GMDPエッセイスト

2018年に薬業関係の某有名誌のオンライン版にコラムニストとして忽然と登場。製薬業界の内部事情に詳しく、特に監査業務に造詣が深いことから、医薬品の品質保証業務に従事していたものと推測されるが、その正体は不明。毒舌的な内容が多いものの、ヒューマニズムを掻き立てる心温まる物語的な内容のものもあり、歯に衣着せぬ物言いは実務担当者にとっての心の声を反映した本音トークとも言える。

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