2016.01.06.WED

品質システム(PQS)

ゼロから学ぶGMP【第1回】

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執筆者:上田 泰生

ゼロから学ぶGMP

~GMP省令、施行通知や事例集から学ぶ~

 

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1. GMPの思想
 1-1 GMPの三原則

 GMPというのはいうまでもなくGood Manufacturing Practiceの略で、そのまま日本語に直訳すれば「適正製造基準」となりますが、この概念は不良医薬品を世に出すこと、すなわち患者さんにその不良医薬品が投与されることのないようにするための、医薬品等に特化した決まりです。
 このような決まりがなぜ求められているのかについて少し考えてみましょう。医薬品は、人の生命に直結しており、常に求められる品質に合致したものを市場に提供することが必須条件です。この事を保証するために、医薬品を定められた環境下で、定められた手順を守って製造することが強く求められています。すなわち出来上がった製品の品質検査だけでは医薬品の品質を保証することはできないという思想から由来したものです。それはガラス製品や家具などの商品と異なり、その品質の良否(有効成分が正しく含まれているかどうか、変質していないかどうかなど)が外観からだけではわからないものだからです。これは専門家たる薬剤師でも、処方する医師でも同様です(特別に試験をすれば別ですが、日常的には行われません)。ましてや、それを投与される患者さんにはわかりようがありません。言い方を変えれば、医薬品を使用する、医師、薬剤師、患者さん達は製造された医薬品を信頼して使っているということです、この信頼を裏切ることはできません。このことがGMPを守らなければならない大きな理由です。但し、このGMPという概念を“守らなければならない決まり”として理解するより、“品質確保のための思想”として捉える方がより理解が深まるものと思われます。この思想とは、GMPの三原則そのものです。GMPを少しでもかじったことのある方なら常識とは思いますが、改めて示します。

GMPの三原則
  1. 人為的な誤りを最小限にすること。
  2. 医薬品の汚染及び品質低下を防止すること。
  3. 高い品質を保証するシステムを設計すること。


 この思想を実現するために、いろいろな決まりをつくって、誰が作業を行っても品質に欠陥のない医薬品を作り上げること。そのことを可能にする手段を提供しようと意図して作成されたのがGMP省令であり、それに関係する通知や事務連絡などです。ただこれらの当局により提供されるものは、世の中で取り扱われている多様な医薬品をカバーする必要があるため具体性に欠けており、それだけで作業が進むわけではありません。しかしこれらの決まりをよく理解しておかないと、とんでもないこと、すなわち不良医薬品の製造や、それを出荷してしまった後の市場からの回収、更には医薬品の製造業の停止を命令されるなどの事態に陥ってしまうことになりかねません。
 また医薬品の製造所では、この三原則を守る目的でそれぞれに基準書や手順書(SOP)を作成し、製造所内で自ら定めた“決まり”が守られているか定期的に確認し(自己点検)、またそれぞれの作業員に周知徹底を図るために教育訓練等の実施が義務付けられています。これらの手順で三原則の内の2と3は、ある程度達成可能と考えられていますが、1の「人為的な誤りを最小限にすること。」については製造所内のシステムや、手順書等をいくら整備してもなかなか困難であると考えられています。これは一般にヒューマンエラーとよばれているもので、GMPの話に入るまえにヒューマンエラーについて少し述べてみたいと思います。

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上田 泰生

上田 泰生

1974年ミドリ十字入社、中央研究所配属。製剤研究部長、中央研究所業務部長を歴任。旧吉富製薬と合併後、信頼性保証部長としてGXP全般の監査を担当。その後2回の合併(三菱ウェルファーマ、田辺三菱製薬)を経る中で薬事監査部、品質保証部、薬制管理部を経験。2008年ニプロファーマ入社、本社品質保証部、城北工場品質保証部長を歴任。2013年退社。