2019.09.27.FRI

品質システム(PQS)

医薬品品質保証こぼれ話【第8回】

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執筆者:浅井 俊一

医薬品品質保証こぼれ話【第7回】

医薬品品質保証こぼれ話

【第8話】無通告査察と信頼関係

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GMPの無通告査察、いわゆる、“抜き打ち査察”が話題に挙がってから数年たちましたが、この言葉も今ではごく普通に耳に響くようになりました。この査察方式が提起されたきっかけは、一部の企業で確認された、製造販売承認書と製造記録の齟齬などの問題だったと記憶しますが、長年、事前調整型の進め方に慣れてきた製薬企業の関係者の多くは戸惑いを隠せなかったと思います。しかし、よくよく考えると、GMP の文書や記録、また製造工程の管理状況や試験検査の実施状況は、本来、いつ査察が行われても問題のない状態が保たれているはずのものではないでしょうか?

例えば、最新版のSOP(標準作業手順書)に基づき作業が行われ、作業の進行に伴いそのつど記録され、また、作業に変更があれば、その理由を記録し、責任者の承認を得てSOPを改訂し、関係者に教育訓練を行ったのちに、変更後の作業を行う、といった、GMPの基本が日常、順守されていれば、その結果として、作業と文書の整合性も常に確保され、査察の前の特別な準備は必要ないはずです。作業現場の4S(整理・整頓・清掃・清潔)の維持管理なども同じで、異物混入や微生物汚染を防ぐためには、清掃や洗浄が規定に従い日常的に行われる必要があり、原材料の取り違えを防止するためには、日頃から、区画と表示を基礎とした整理整頓が習慣化されていることなど、GMPの基本原則に準拠した作業が普段から実践されていれば、抜き打ちの査察であっても支障はないはずです。

しかしながら、人間は不完全な存在であり、分かっていてもなかなか理屈どおりにいかないのが現実です。GMP査察はその企業側の対応の不完全さを“査察”という形で補い、医薬品の品質確保や安定供給をより確実なものにする、という役割を担っているという見方ができます。医薬品の品質確保は、その有効性と安全性を保証し、患者の命や国民の健康を守るためのものであり、その重要な目的を、企業と当局がそれぞれの立場から力を合わせて達成するというのが本来の姿とすると、企業はGMPを基礎に医薬品の製造と品質保証活動を行い、行政は査察を通して、品質確保をより確かなものにするための指導を行う、そう考えると、査察は医薬品の品質確保のために大変重要な役割を担っていると言えます。

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浅井 俊一

浅井 俊一

1974年ロート製薬入社。品質管理・薬事・品質保証の各業務にそれぞれ7年・15年・16年間従事。退職後、2018年まで中国の原薬工場および国内受託企業において、改善・人材育成を含む品質保証全般に携わる。
中国での活動に、「新薬事法下の日本の医薬品品質保証体制」(2009/上海),「日本に輸出するための原薬品質の要件」(2017年/杭州)などの講演や、北京CFDA(現, NMPA)主管「医薬経済報」への「中国原薬の品質確保の視点」の連載(2012年)などがある。
取り組みテーマは「製薬工場のヒューマンエラー対策」,「中国等の海外原薬の品質と安定供給の確保」,「GMP記録の信頼性確保」,「組織コミュニケーションの活性化」,「作業者のモチベーションの確保」など。
著書に「改訂版GMP教育訓練マニュアル」(㈱じほう、共著),「3極対応/試験検査室管理実践資料集」(㈱情報機構、共著)などがある。
元,日薬連品質委員会常任委員。元,日本OTC医薬品協会品質委員会委員長。元日薬連CSV検討会メンバー。 薬剤師。