2019.09.13.FRI

その他施設・設備関連

細胞加工施設を運用するキャリアの謎【第2回】

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執筆者:鮫島 葉月

細胞加工施設を運用するキャリアの謎

第2回 加工施設の管理者に、畑違いのススメ


■執筆者によるセミナー開催
再生医療における細胞加工施設の運営とGCTPにつなぐ考え方
 
 
 私は現状、細胞培養加工施設と呼ばれるハードウエアに関わることが多く、専門分野を問われた際には、僭越ながら再生医療系の施設・製造管理と答えさせていただいている。  そこで、現在専門人材不足に悩みつつ、教育にも力を入れ始めている「再生医療」において施設の専門家みたいな顔をしている人間は、どのジャンルで仕事をしてきたのか。なにを勉強してきたのか。たまに尋ねられるそんな個人的情報を絡めつつ、本稿では再生医療分野のキャリアについてつらつら書いていきたい。
 そう、特に出自文系などという不可思議な略歴をなかなか書けずに、身もだえしているわが身の立場からだ。

▽施設管理に必要なスキルって?
 前回、私は再生医療系のフィールドはまだ人材が豊富とはいいがたく、そもそもマージナルな領域にあったため、専門性自体、様々な方がこの領域に関わっている旨を書いた。たとえば再生医療では立場ひとつとっても、治療を行う医師、細胞培養技術者、培養器材・資材系の開発者、品質試験の実施者、エンジニアなどの他にも、臨床試験の審査、人材育成、輸送、レギュレーション分野などで多くのポジションがあり、そのそれぞれが「再生医療の」としか言いようがない専門性の高さに悩んでいたりする。実に色々な職種の方が再生医療には関わっているから、医学、工学、理化学、生物学と出自もそれぞれだ。
 その中でも、細胞加工施設の、実務的な管理者となる人材については、いまだ定まったバックボーンがない。しかして今現在求められるスキルはどんなものかと考えてみると、これまた結構幅が広い。
1.細胞加工施設が扱う製造管理ドキュメントと品質管理システムの理解
2.細胞加工施設が保持している機能とスペック(清浄度保持等)の理解
3.細胞加工施設が製造する細胞加工物の特性、製造方法、検査方法、リスクの理解
4.施設の製造人員に即したマネジメント手法の理解
 これらを軸に、コスト・予算を考えたり、逸脱やトラブルに対応したり、製造人員の健康管理面を考慮したりするとなると、この業務はいわゆるプロマネにも近い。TVでいうならプロデューサー系だ。もちろん、製造管理の担当者や文書管理責任者、衛生管理責任者など、具体的な業務は個々に切り分けられるのだが、トータルでコーディネートされない施設は、やはりいびつになってしまう危険性がある(なお、上記すべてに私個人が精通しているのか、と言われれば心許ないのは確かだが、一応は実際の培養もできるし検査も実施可能だし、リスク分析もやるし、施設の天井裏も這うし、ドキュメントを一通り書いた上で適切に申請を行い、安パイの予算をとってくるといったことはできる。それもこれも、私が優秀だからではまったくなく、再生医療業界にとんと人が割り当てられていなかった時代を経た僥倖である)。
 細胞培養加工施設におけるいろいろなレベルでの逸脱発生は、それぞれにリスクが高く、それゆえに施設管理の人間に求められるスキルは幅広い。QMSの理解は当然ながら、ライン管理もロット管理もできず、ある程度の幅を持たざるを得ない「生きた細胞」が相手になる場だから、スキルを拾ってこい、と言っても拾いきれないほどあると言っていい。
 ただ、これら必要な知識を詰め込むことが、施設人材の育成かというと――個人的には、それもちょっと違う気がしているのだ。
 

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鮫島 葉月

鮫島 葉月

一般社団法人免疫細胞療法実施研究会事務局、株式会社日本
バイオセラピー研究所 事業推進部部長
慶応義塾大学大学院医学研究科(修士)修了後、2008年株式会社セルシードに入社。再生医療に係る臨床用細胞加工物の開発および品質保証を担当し、当時の細胞培養加工施設の運用整備(GMP準拠)に携わる。2012年(株)日本バイオセラピー研究所に入社、再生医療関連法に同社を適応させ、特定細胞加工物の製造許可を取得。新規の製造施設設計と運用構築、文書策定等を行い、年間3000バッチ以上の特定細胞加工物を製造する細胞加工施設の施設管理責任者を担っている。
一般社団法人免疫細胞療法実施研究会においては、研究会事務局として、再生医療等を行おうとする医療機関向けに申請サポートデスクを運営。すでに200以上の計画策定を支援している。
また当該法人にはICTA特定認定再生医療等委員会を設置し、委員会事務局として再生医療等の審査対応を行っている。