2019.06.07.FRI

その他施設・設備関連

細胞加工施設運営における『経年劣化・老朽化』への対応【第5回】

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執筆者:鮫島 葉月

細胞加工施設運営における『経年劣化・老朽化』への対応【第4回】

細胞加工施設運営における『経年劣化・老朽化』への対応

第5回 老朽化を見越したCPFのはじめ方


※執筆者によるセミナー開催
■6月19日
細胞培養加工施設をもつということ~細胞加工技術と再生医療のゆくえ~
 

臨床用にであれ研究用にであれ、ヒト細胞の調製、加工、製造を実際に行うには「細胞加工施設」と呼ばれるハードウエアが必要である。細胞加工施設は一般にCPC(Cell processing center)やCPF(Cell processing Facility)とも呼ばれており、再生医療分野での取り組みを行う上では、必須の施設だ。本稿では以下、CPFの略称を使用する。
昨今、大型建造もあちこちで見られるCPFについて、本稿では長期使用時の経年劣化や老朽化の兆候、それら現象への対応、管理法など実務的な側面を6回に分けて論じていく。5回目となる今回は、CPFの経年劣化や老朽化に関わるイニシャルな要素と、その影響について記載する。これは、これからCPFの建造・運営を考える人たちには重要な部分と考えられる。

▽いちばん最初に必要な要素
 もし今、自社でCPFを保有しようという話が持ち上がったなら。そして、新規に建造されるその施設の運用をあなたが任されるとしたら、あなたは最初になにを検討すべきだろうか?
 おそらく経営側の人たちは、なによりも土地建物の価格、そして社員が通える範囲でのアクセス、運用人員の配置、施設規模と管理コスト。そのようなことを検討せねばならないだろう。製造や技術に関わる人たちは、培養に必要な機器を選定し、ラボで行っていた作業をCPFに移管する上で、必要なスペースと機能を検討せねばならないだろう。
では実際の管理・運用を行う人間が、施設建造に対し最初に考慮すべきことはなにか。ここでは3点を取り上げたい。
 まず1点目は、大型機器等の搬入路が確保できるかどうか。
2点目に、立地だ。社員が通いやすいに越したことはないのだが、実は河川や田畑など近隣の環境はダイレクトにCPFに負荷をかける。
そして最後の3点目が、天井高である。こればかりは、「高さがあるに越したことはない」と言いたい。一般のオフィスビルなどでは難しいのだが、いざという時のため、CPFの天井裏には最低でも作業者が膝立ち程度で入れる高さを確保したい。
 以上3点、お気づきかもしれないがこれらはすべて後のメンテナンス時に大きく影響してくる要素である。勿論、電力確保のためのキュービクルスペースや、非常電源の有無など、他にも考慮したい点はあるだろう。だがそういった点は、費用さえ出せば解決する手段はある。実に上の3点は、後々まで影響を及ぼしてくる要素でありながら、一度立ててしまえば取り戻しがきかない部分だ。つまり、経年劣化が生じてきた際どうできるかは、実はこの初期の段階ですでに決まっているともいえる。
 この3点のイニシャルな条件によって、経年劣化対応が困難となるケースを、以下に具体的に例示する。

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鮫島 葉月

鮫島 葉月

一般社団法人免疫細胞療法実施研究会事務局、株式会社日本
バイオセラピー研究所 事業推進部部長
慶応義塾大学大学院医学研究科(修士)修了後、2008年株式会社セルシードに入社。再生医療に係る臨床用細胞加工物の開発および品質保証を担当し、当時の細胞培養加工施設の運用整備(GMP準拠)に携わる。2012年(株)日本バイオセラピー研究所に入社、再生医療関連法に同社を適応させ、特定細胞加工物の製造許可を取得。新規の製造施設設計と運用構築、文書策定等を行い、年間3000バッチ以上の特定細胞加工物を製造する細胞加工施設の施設管理責任者を担っている。
一般社団法人免疫細胞療法実施研究会においては、研究会事務局として、再生医療等を行おうとする医療機関向けに申請サポートデスクを運営。すでに200以上の計画策定を支援している。
また当該法人にはICTA特定認定再生医療等委員会を設置し、委員会事務局として再生医療等の審査対応を行っている。