2019.05.17.FRI

レギュレーション

ドマさんの徒然なるままに【第4話】

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執筆者:古田 ドマ

ドマさんの徒然なるままに【第3話】



第4話:チコちゃんに叱られそうな大人たち

「弊社はGMP遵守で作業しています。」と言いつつ、傍から見たら「うーん、ちょっとねー!?」と疑問を感じさせる製造所があったりする。その度合いによっては、「ざーけんじゃねー!」と切れそうになる製造所もある。GMPを理解していたつもり、GMP対応でやっていたつもり。が、必ずしもそうじゃなかったりする。そんないい加減なことばっかりやっていると、「ボーっと仕事してんじゃねーよ!」ってチコちゃんに叱られちゃいますよ。ここでは、米国FDAによるWarning Letterや薬業ニュースの中から、そんなチコちゃんに叱られそうな製造所を挙げてみた。


CMOに丸投げしちゃダメと分かっていない大人
米国V社*2に関するものである。指摘としては、「品質管理部門(本邦で言う品質部門でQA/QC)が適切な品質管理を実施していない」ことによるものであるが、そのレベルが度を越している。

要は、バッチレビューによる自らの最終的な承認/却下もせず、丸投げでCMOにやらせており、Quality AgreementではCMOに判断の責任があるとしていたようである(本邦ではGQP違反に相当)。指摘回答として、SOP作成し適切にレビューするとしながらやっておらず、コンサルタントによる監査をするとしていながらその報告もなし。さらに、変更・苦情・OOS等の手順が不十分という品質管理部門の不備のオンパレード。しかも、配送業務を行っている医薬品の中には当局に未登録なシロモノまであったような。

おまけに、医薬品以外にサプリメントも取り扱っていたようであるが、こちらについては表示違反があったような。
「ボーっと仕事してんじゃねーよ!」、品質部門のQA業務における反面教師としてはベストな例かもしれないが、困ったちゃんの製造所である。

洗浄の意味も試験検査の意味も分かっていない大人
中国H社*3に関するものである。これまた、本来の品質管理部門の役割を認識していないことによる問題が露呈している。

洗浄バリデーションなどせずに数種のOTC医薬品を共有して製造、さらには医薬品以外の製品にも使用していたようだ。試験検査については全く無頓着とも言え、出荷前に必要な試験が終わっていなかっただけでなく、OOSでも出荷してたり、さらには安定性試験もいい加減であったような。

「ボーっと仕事してんじゃねーよ!」と言うよりも、「GMPって何ですか?」の域に達しているようにも思えるが・・・。


カタチあるモノがあれば品質は二の次だと思っている大人
中国H社(先の製造所とは異なる)*に関するものである。これも、試験検査の意味合いを全く認識していないと思われる無様な品質管理部門が露呈している。
出荷試験って何? 原材料の受け入れ試験って何? 使用期限のための安定性試験って何? 規格及び試験方法って何? SOPって何? 
「モノが造れれば、それでいいんじゃないっすか?」という声が聞こえて来そうに思える。

「ボーっと仕事してんじゃねーよ!」、試験検査部門の業務における反面教師としてはほぼ完璧と言える。ただ、こんな事例を教育訓練に提示しても、普通の感覚であれば「ありえへん」ということで、勉強にならないような気がする。

もし、この製造所と先に照会した製造所の親会社が同一ならば、関連工場全てが「呆れて物が言えない」というレベルなんじゃないかと思うが・・・。


「WL、みんなで違反すれば怖くない」を地で行く大人
これまた中国H社とH社(先の2つの製造所とは異なる)*5,*の2つの製造所に関するものである。

前者は、ローション・クリームの製造所のようであるが、原薬を含む購入原材料の受入試験をせず、CoAを丸のみ。信じられないのは、クリーム一次容器のチューブがサプライヤーのミスで違っていても無視。うーん、“さすが”である。

後者は、OTCメーカーのようであるが、外部試験委託で試作バッチ(?) (a small batchと記されている)の結果を出荷用の本バッチに利用していたような。製造記録が当該試験記録の1週間以上も後であったとか。当たり前にように、安定性試験は実施されず、保存サンプルを試験するとしていながら行わず。さらに、これまた原材料の受入試験なし。うーん、何とも言い難い。

先の2項目も含めて、今回紹介した中国の4製造所の名前の頭文字の“H”は全て「Hangzhou」であり、所在地は、全て中国浙江省杭州市(Hangzhou, Zhejiang)である。中国浙江省杭州市と言えば、「杭州ハイテク産業開発区」とも言われる工業地区であるような気が・・・。しかも今回紹介した4製造所のWarning Letters(WL)は2018年7月から2019年1月の約半年間だけである。名前と住所だけなので、同一のグループ会社かどうかは不明であるが、杭州市における医薬品産業は贈収賄の疑惑まで浮上している地域である*。チコちゃんに「ボーっと仕事してんじゃねーよ!」で済まされるレベルではないような・・・。


やって良いことと悪いことの区別のつかない大人
インドV社*8に関するものである。原薬製造所のようであるが、顧客へは元原薬のサプライヤーの住所と会社名を削除したCoAを発行していたとか。しかも、この元原薬サプライヤーは、米国FDAから輸入警告措置(Import Alert 99-32)を受けていた施設ということなので、確信犯だったかも? 

バッチ製造記録(Batch Manufacturing Records:BMR)については、発行・使用・照査の手順はなく、製造担当者が個人用ノートブックまたはドラフトBMR(?)に記録し、その後にマネジャーがデータを別のBMRに転記、そのBMRを管理職に署名のため回覧とか。まったくMater Batch Recordシステムを無視した方法のような。しかも、生データとも言える“ドラフトBMR”については焼却処分するとか。極め付けは、この会社の代表者が「このやり方のどこか悪いなじゃ!」と査察官に言ったとか。うーん、凄すぎるわ。日本の会社で、こんな“根性(?)のある会社”はないんじゃないかと思いますが・・・。

設備洗浄は「水だけ」で、堂々と壁に「水で洗浄」と示されていたとか。しかも、マネジャーは「これが設備洗浄では一般的だ」と言い切ったような。この原薬製造所では“水溶性”の物質しかない??? 査察官曰く、「黒い点々が見られた(visibly encrusted with black)」とか。うーん、何とも。さらには、製造用水システムはバリデートされていないというオマケつき。コレって、たぶん製造に使用する水について言ってるんだろーなー、と思いますわ。ここまで来ると、異次元の世界と思えるが、いかがであろうか。


記録は物理的に存在すれば良いと思っている大人
「記録のいい加減さ」と言えば、こんなものがある。スペインP社*に関するものである。OTC製造所のようであるが、Warning Letterによると、以下のような者が挙げられている。
・修正液によるホワイト修正
・曖昧なデータ
・データ欠如(密度試験結果・バッチ承認日)
・サインも説明もない上書きや削除線
・試験検査結果についての第二者のイニシャル・署名の欠如(例えば、粘度・密度・
 外観・臭い)

ここまで来ると、「Data Integrityなんてクソくらえ!」とも思える。さらに、この製造所、出荷試験を待たずに出荷してたり、安定性試験プログラムがなかったり、と“お決まり”のような不備までやらかしている。

ある意味、「恐れ入りました。」の感がある。ここまで来ると、「ボーっと生きてんじゃねーよ!」のほうが適切な表現のような気がしなくもない・・・。


PVの考え方が変わっていることに気づいていない大人
プロセスバリデーションが製品ライフサイクルに基づいて実施するという、その考え方自体が進化していることに気づいていない、時代錯誤したWarning Letterがある。米国P社*10に関するものである。

当該製造所、過去に実施したPVのバッチサイズを変更していただけでなく、Process Performance Qualification Planもバリデートプロセスの保証プログラムも欠如していたような。査察官からは、ガイダンス「Process Validation: General Principles and Practicesを読め!」*11と言われたような・・・。

ちなみに、当該製造所、その他にも微生物試験の外部試験のOOS不備や製造用水システムのバリデーション不備等も問われているので、元々が「ボーっと仕事していた」会社のようである。


“はじめて”が自慢にならないと分かっていない大人
DSCSA(Drug Supply Chain Security Act)は2018年11月に本格施行となった。
そのDSCSA違反ということでは、“お初”となるWarning Letterがある。
米国M社*12に関するものである。

以下の3点が主たる違反行為とされているが、具体的事例3点も挙げられている。
・違法製品の当局通知の不備
・違法の疑いのある製品の隔離と調査の不備
・違法の疑いのある製品に関する調査記録と違法製品の処分記録の6年以上の保管に
 関する不備

当該社については、DSCSAの全面施行以前から問題があったようで、Form483も出されており、その積み重ねの結果とも言えるが、DSCSA違反は米国におけるGDP違反に相当し、今後増加することは容易に想像しうる。ただ、DSCSAについては、本邦の考える温度管理を軸とする医薬品の保管・輸送に対するGDP(この点については。むしろGMPとして取り扱われているケースが多い)とは異なり、偽造医薬品や盗難品などの違法医薬品に関するもので、その違反行為はほぼ犯罪に近いとも言える。


と言うことで、今回はここまで。

ひとつ読者の皆様にお願いしたいことがある。指摘の内容を反面教師あるいは自分たちのGMDP(本邦ではGQPも含む)の運用上の注意点として勉強したいということであれば、元のWarning Letter等をお読み頂きたい(末尾に出典を記している)。

本話は、あくまで気軽な読み物としての“うけネタ”で書いているのも事実だからである。最近のWarning Letter等の要約と言えば聞こえは良いが、筆者の勝手な抽出でもある。その点を予めご理解頂き、出勤後の仕事開始前や仕事の合間のちょっと一息のコーヒータイムに、読むとちょっとだけ参考になるといった感じで受け止めて頂ければ有り難い。


では、また。See you next time on the WEB.

【徒然後記】
米国FDAのWarning Letterを筆頭に、その内容がどうかは別として、本話のような査察での指摘事項のネタには困らない。問題は、そういったネタが多々あるということを喜んでよいのか、悲しむべきなのかと言ったところである。
単に内容を紹介するだけであれば、他のマジメな先生方の執筆や他誌にお任せするとして、筆者の場合は、そこに“気軽な読み物”とするための工夫を凝らすことになる。具体的には、当該施設や査察時の状況をイメージとして膨らまし身近に感じさせること。同時に、ちょっと皮肉や洒落を加えることなどである。さらに格好つけて言えば、少しでも読者の製造所との類似点・相違点(度を越していると思うが・・・)を意識させ、注意を喚起させることも意識している。そのため、似たような指摘のケース、逆に極めて稀なケース、異常とも言えるケースなどを記憶しておき、時期が来たら適度に散りばめて放出するようなことを考えている。
自分で言うのも何だが、この作業、結構記憶力を要する。後日にウェブサイトでキーワード検索でもすれば、とも言えるが、それでは自分の好みに仕上げられない。Warning Letter等がウェブに掲載されたり、業界ニュースで記事にされたりした時点で、ザーッと読んで頭の片隅に。ある程度まとまったら、原稿執筆のために頭をフル回転して記憶を辿り、再度Warning Letter等を丁寧に読み直し、原稿を認めるといった状況である。
結局のところ、一番勉強になっているのは筆者自身という結果になる。ただ、この手の作業、知識や情報の幅を広げるのみならず、認知症防止には効果があるように思える。業務で忙しい読者の中に、こんなことを試すような物好きな方は居ないと思うが、もしウソだと思うならば一度お試しあれ。その効果は抜群である。


 
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*1:2019年4月29日付で米国FDAウェブサイトの大幅な変更がありました。それに
   伴いWarning Letter(書式も変更)やGuidance等についても、その所在となる
   URLsが変更されています。以下には変更後のURLsを示しています。

 
*2:米国FDA/Warning Letter「Vilvet Pharmaceutical MARCS-CMS 566336 — 25/02/2019」
https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/vilvet-pharmaceutical-566336-02252019
 
*3:米国FDA/Warning letter「Hangzhou Guoguang Touring Commodity Co., Ltd. MARCS-CMS 564286 — 14/12/2018」
https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/hangzhou-guoguang-touring-commodity-coltd-564286-12142018
 
*4:米国FDA/Warning Letter「Hangzhou SunKing Nonwovens Co., Ltd.  MARCS-CMS 568546 — 29/01/2019」
https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/hangzhou-sunking-nonwovens-co-ltd-568546-01292019
 
*5:米国FDA/Warning Letter「Hangzhou Karic Commodities Co., Ltd.  MARCS-CMS 556676 — 31/07/2018」
https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/hangzhou-karic-commodities-co-ltd-556676-07312018
 
*6:米国FDA/Warning Letter「Hangzhou Zhongbo Industrial Co., Ltd.  MARCS-CMS 562839 — 27/11/2018」
https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/hangzhou-zhongbo-industrial-co-ltd-562839-11272018
 
*7:2014年5月28日付朝日新聞デジタル「中国・杭州市、医薬品業界の贈収賄を調査」 http://www.asahi.com/business/reuters/CRBKBN0E803G.html
 
*8:米国FDA/Warning Letter「Vipor Chemicals Private Ltd.  MARCS-CMS 555392 — 29/01/2019」
https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/vipor-chemicals-private-ltd-555392-01292019
 
*9:米国FDA/Warning Letter「Proandre SL MARCS-CMS 567234 — 13/02/2019」
https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/proandre-sl-567234-02132019
 
*10:米国FDA/Warning Letter「Pure Source LLC MARCS-CMS 555240 — 20/02/2019」
https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/pure-source-llc-555240-02202019
 
*11:Guidance for Industry:Process Validation: General Principles and Practices https://www.fda.gov/media/71021/download
 
*12:米国FDA/Warning Letter「McKesson Corporation Headquarters 2/7/19」
《注》本Warning Letterは下記2点のURLsのアーカイブサイトに移行されたようです。
https://wayback.archive-it.org/7993/20190214023432/https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/ucm631088.htm

https://wayback.archive-it.org/7993/20190424183855/https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/ucm631088.htm  

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古田 ドマ

古田 ドマ

GMDPエッセイスト

2018年に薬業関係の某有名誌のオンライン版にコラムニストとして忽然と登場。製薬業界の内部事情に詳しく、特に監査業務に造詣が深いことから、医薬品の品質保証業務に従事していたものと推測されるが、その正体は不明。毒舌的な内容が多いものの、ヒューマニズムを掻き立てる心温まる物語的な内容のものもあり、歯に衣着せぬ物言いは実務担当者にとっての心の声を反映した本音トークとも言える。

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