2019.04.05.FRI

品質システム(PQS)

GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第19回】

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執筆者:中川原 愼也

GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第18回】

GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第19回】

逸脱半減


※関連セミナー開催(2019年4月)
GMPヒューマンエラー防止のための文書管理
 

1.爆弾処理係
 私がまだ、県職員で、県庁を早期退職について考えたころ、ある製薬企業のサイトQA長の採用面談の際、「サイトQAは、主にイベント対応だけど、公務員だと、実際の逸脱や変更処理を行っていたわけではないので、対応は難しいのではないか。」と問われた。今まで、逸脱処理や編管理の処理についても、指導していた立場なので、問題ないと回答したが、採用には至らなかった。サイトQAの業務は、製造所における品質システムを構築し、維持することである。逸脱半減を目標にする製造所も多いと思う。逸脱を半減できれば、サイトQAの人員も減らせると考える経営陣もいるだろう。そのような考えでは、逸脱は半減できない。そもそも、サイトQA業務は爆弾処理係ではない。逸脱の処理をすることのみがサイトQAの業務であると考えるのは根本から間違いである。サイトQA業務は逸脱の再発や未然に防止するCAPA活動を円滑に進めることが任務である。つまり、逸脱半減のために、発生した逸脱の再発防止策の有効性を確認し、他に同様の逸脱が発生する可能性がないかリスク分析をすることが業務であり、発生した逸脱をその場しのぎ的に処理することではない。爆弾処理係のような業務の遂行では、逸脱は一向に減ることはなく、逸脱半減を達成することはないだろう。
 逸脱処理の件数ばかり気にしても、逸脱の件数は減らない。逸脱が発生した時には、まず、その原因を究明することである。原因が特定できなくとも、リスク分析として特性要因図などを用いて、推測することが重要である。原因が特定できないからと放置してはならない。原因を特定あるいは推測したなら、その再発防止策を検討する。決して、安易な再発防止策となってはならない。「教育訓練の徹底」は是正策にはならない。推測であっても、その原因となる事象を無くすか、発生を減らすことが必要である。その逸脱の品質への影響の程度を低くすることも一つである。その後の検出率を高めることもリスク低減の一つの方法であるが、ただ、チェックを増やすことで、低減とはすべきではない。チェックは見逃す可能性があり、根本原因を解決することが重要である。そして、最終的には、CAPAの有効性確認を忘れてはならない。その逸脱が本当に再発しないかを確認することが重要である。また、同様の逸脱が他の製品や他の製造ライン、他の作業等に起こらないかを予防措置として確認することも忘れてはならない。逸脱処理において、ステップ毎にきちんと記録することが各ステップを忘れず実施する基本となる。逸脱処理は、時間経過があり、原因調査においても現場と何回か連絡をし合うこととなる。その記録はメールでも構わない。メールは印刷すると、その発出日時、発信者、宛先等も残り、データインテグリティとしても担保できる。記録を形式にこだわることなく対応するべきである。原薬輸入商社の品質保証部長として在籍していたころ、毛髪の混入のクレームの対応をすることがあった。海外サプライヤーは、クレーム連絡をしてもすぐに納得することはない。その為、何度もメールのやり取りがある。そのやり取りのメールをきちんと残すことで、その経過も明確となり、是正措置につながった。そのやり取りの概要は次のとおりである。
輸入ディーラー :客先(製剤工場)で、毛髪が見つかった。
         原薬メーカーが原因でないか調査してほしい。
海外サプライヤー:原薬の製造において問題はない、
         日本で混入したのではないか。
輸入ディーラー :原薬メーカーで混入する可能性がないことを確認したい。
         どのような更衣を行っているか。
海外サプライヤー:更衣のSOPはある。
輸入ディーラー :更衣の内容を教えてほしい。
海外サプライヤー:ヘアキャプ、白衣、手袋を着用している。
輸入ディーラー :更衣の写真を送ってほしい。
結果、ヘアキャップをきちんとかぶっていない写真が送られ、更衣について、ヘアキャップを耳をすべて覆い、毛髪が飛び出すことがないよう更衣することを規定し、更衣を適切に行った記録をする改善をしてもらった。相互の認識を共有することは難しい。あいまいな表現では伝わらないこともあると考えて、取決め等を結ぶことが必要である。

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中川原 愼也

中川原 愼也

高田製薬株式会社生産本部品質統括部門品質統括部長
1984年神奈川県庁に入庁し、1997年国立公衆衛生院(現在の国立保健医療科学院の前身)でGMP研修を受講後、薬務課及び小田原保健所等で医薬品等の製造販売業、製造業の許認可、審査、指導を主にGMP・GQPリーダー査察官として16年にわたり活躍した。その間、MRA(日・欧州共同体相互承認協定)の締結の際のEUの調査、2005年の製造販売承認制度の施行に携わり、PIC/S加盟にあたり、厚生労働省の委員等委嘱を受け、次の活動に参加した。
平成20、21年度 GMP/QMS調査・監視指導整合性検討会委員
平成21、22年度 厚生労働科学研究~GMP査察手法の国際整合性確保に関する研究
2012年に神奈川県庁を退職し、医薬品原薬輸入商社であるコーア商事株式会社で、品質保証部長として国内管理人としてのGQP取決め及び医薬品製造業としての GMP管理を統括した。2015年から株式会社ファーマプランニングにて、GxPコンサルタント業務に携わり、2017年高田製薬株式会社に入社、4月より同大宮工場製造管理者に就任。