2019.02.22.FRI

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ラボにおけるERESとCSV【第49回】

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執筆者:望月 清

ラボにおけるERESとCSV【第48回】

ラボにおけるERESとCSV

FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(19)

7.483における指摘(国内)
前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。
 
BB社 2017/9/8  483
施設:原薬工場


本483に対しウォーニングレター(WL)が2018年8月に発行された。

Observation 1 
製造、ラボ、材料など様々な部門に対し品質管理が必要であるが、品質部門がそれらを十分に管理していない。

1.2    セキュリティが確保されていない自動データ収集システムを製造が使用して、
   重要な工程内ステップの移行を決定している。このシステムの監査証跡が
   オンになっていない。個人毎のID/PWを使用しておらず、運転中の機器に
   複数名がアクセスできる。
1.3    分析法バリデーションが不十分
1.4    製造記録に含まれていないテストデータがある。
1.5    年次製品レビューにおいてQCと製造が使用している電子ワークシート
  (スプレッドシート)の管理が不十分


★解説:
このObservation 1はウォーニングレターにおいて引用されている。

1.2    工程内規格試験における指摘であると思われる。
   データインテグリティ基本対応ができていないことを指摘されている。
   ただし、WLの記述からすると次のような状況であったのかもしれない。
◇HPLCを夜間運転する場合、あるオペレータが前日に起動した分析を
 他のオペレータが翌日操作しなければならないことがある。
◇そのため個人毎のID/PWとしなかった。
このような場合、権限設定を工夫することなどにより問題解決できないか
HPLCメーカと相談するのがよい。

1.5    WLには以下のように記載されている。
◇保護されていないスプレッドシートにより、年次製品レビューのために
 製造データの標準偏差計算や統計処理が行われている
◇そして、それらの電子ファイルは権限のない変更から保護されておらず
 変更の履歴もない
 
製造工程やQCラボの品質試験において日常使用されるスプレッドシートは、計算式の保護やバリデーションなどの管理が必須である。従って、製造やQCラボにおいて日常使用されるスプレッドシートの不適切な管理は査察において指摘される。
一方、本指摘から以下のことが読み取れる。
◇年次製品レビューに使用するスプレッドシートも、製造やQCにおいて
 日常使用するスプレッドシートと同様の管理をFDAは求めている
◇製品の出荷判定には係わらないが、年次製品レビューはGMP要件
 であるので査察対象となる
 
図24に年次品質レビューにおけるスプレッドシート指摘事例を記載したので参照されたい。年次レビューに用いるスプレッドシートは以下のような点に注意する必要があると考えられる。
◇年次ごとに異なるスプレッドシートを使用することがありうる
(スプレッドシートが毎年変更される)
その場合;
・都度のバリデーションあるいはベリフィケーションが必要
(ベリフィケーション:計算結果を電卓等で後検証)
◇計算結果はプリントアウトではなく電子記録で維持することが多いが
 計算結果を電子記録で維持する場合;
・電子記録の真正性、見読性、保存性の確保が必要
(真正性の要件:セキュリティ、監査証跡、バックアップ)
・電子記録に照査・承認の署名が必要
・スプレッドシートへの入力データのチェック記録を適切に残すこと
(入力データが正しいことを検証した電子もしくは紙の記録が必要
 であり、査察指摘事例もある)

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望月 清

望月 清

合同会社エクスプロ・アソシエイツ代表。
1973年山武ハネウエル株式会社(現アズビル)入社。分散型制御システム(DCS)を米国ハネウエル社と分担開発。2002年よりPart 11およびコンピュータ化システムバリデーションのコンサルテーションを大手製薬会社にご提供。2009年より微生物迅速測定装置の啓蒙普及に従事。2014年5月より現職。