再生医療等製品の品質保証についての雑感【第28回】

再生医療等製品におけるQbDの活用 (3) ~ CQA(重要品質特性)について

はじめに
 本テーマの2回目(第25回)では、細胞加工製品のCQAが治験時の重要原材料特性(CMA)と重要工程パラメータ(CPP)に紐づけられる概念と、全工程を通した複合的な相関により、工程内管理を目的としたPAT(工程解析技術)の活用が望ましいことをお話ししました。その理由は、細胞加工製品設計ではそもそも、QbDの実施が困難だからです。本稿では、その辺りについて、よりわかりやすくお話しできればと考えます。

● 細胞加工製品においてQbDでできること/できないこと
 以前(第24回)にも述べましたが、細胞加工製品では、製薬と同じQbD(クオリティバイデザイン)を実施することは困難です。その理由としては、最終製品における細胞特性を網羅的に評価することができず、治験後に規定された最終製品の出荷規格のみから製品を再現できないと考えるからです。具体的には、予め治験時において適用した培養方法や使用した培地の種類などを知らず、後から工程を設計(デザイン)して製造した製品がそれらの手順に準じていなければ、製品の出荷規格を満たしていても、治験時と同等の有効性を保証することが難しいことです。
 以前に用いた図を基点に説明します。左側の製薬開発のモデルでは、治験後に新たに設計した工程で製造した製品の品質は、予め特定したCQAにより評価が可能です。このとき、逆向きの考えも成立し、工程を適切に理解することができると、目的物質の収量向上や、産生する不純物の制御が適切に実施可能です。すなわち、適切にQbDを実施するためには両者が「双方向」であることが前提となっています。(ここでの双方向は、設計から品質が作れると同時に、品質から設計が作れることを意図します。)これに対し、細胞加工製品では、治験により「特定されたCQA」は製造方法など手順を含むため、目標としての位置づけが「双方向」とは言えず、いくらデザインを詰めても、品質(クオリティ)を高めることはできません。実運用上では、治験後の工程設計は、決定されたCQAに含まれるCMAやCPPの要素を評価して互換性を確認する手順(筆者個人はデザインバイクオリティ(笑)と呼びたくなるもの)へと変わります。このとき、QbDを考慮するメリットとして、工程の互換性においては、工程解析技術(PAT)により、予め選択された製造方法に伴い生じる固有の変動(プロセス中における重要な出力)を評価することで、目標の製品が製造できていることを担保することが可能であると考えます。これらは、細胞製造が播種から最終製品までの一連の工程群が独立しない1つのプロセスとみなした上での、「インプロセスのCQA」に相当すると考え、工程モニタリングにより、第6回および第7回で述べたような、製造の再現性構築に資する技術として活用できると考えます。

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