GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第46回】

新型コロナウイルスから学ぶ

1.緊急時対応
 コロナウイルスワクチンの接種が進む中、温度管理が不適切で廃棄になるニュースをたびたび耳にする。電源プラグが抜けていたや届いたワクチンを常温で放置したなどファイザー社製新型ウィルスワクチンは温度管理が厳しいことは周知のものであったのに、どうしてこんなに発生するのかと思ってしまう。GMPやGDP(医薬品適正流通ガイドライン)において、常に、温度管理の必要性を認識している読者にとっては、あきれてしまうことだろう。医薬品倉庫の温度逸脱時に緊急連絡システムを設置している製造所や物流センターも多くある。自治体の首長の謝罪会見が報道されているが、その後の対策はどのようになっているかまでは報道されていない。謝罪することより、必要なことは、温度管理を適切に行うことで、そのための必要な設備とその運用にある。しかし、今回は臨時の設備や緊急の応援者が、普段と異なる状況の中で対応することは難しいことであるが、しっかりとした管理は求めたい。
 製造所においても、生産計画の急な変更等で他部門からの応援なので乗り切ろうとすることがある。他社の違反事例や回収事例で、代替品にあたる品目の生産対応を迫られた製造所も多いことと思われる。通常と異なる対応をしなければならない時こそ、事故につながることが多い。通常の業務として行っている者には、目の前の急がなければならない業務と普段、その業務を行っていない者への指示などその作業の配慮もしなければならず、苦労が多い。応援者も、慣れない業務を熟さねばならず、大変であろう。GMPでは、臨時の応援者等に対して、GMP管理エリアに立ち入るならば、更衣や手洗いなどの衛生管理やその作業についての教育訓練をあらかじめ行わなければならないが、急な応援では、十分な教育訓練ができないことも考えられる。普段からこのような対策を行っておくことが必要である。
 コロナウイルスワクチンでは配送時のミスによる温度逸脱もあったようだ。通常医薬品を配送しない者が対応したのかどうか不明だが、GDP管理が適切に行われたか疑問に思う。GDPガイドラインが発出されて、輸送時や物流センターでの温度管理に対して、厳しい目が向けられている中、輸送時の温度検証や物流センターの温度マッピングなどの実施はあったのか疑問に思う。ワクチンの接種会場でトレーニングとしての模擬訓練も実施したことが報道されていたが、保管や入出庫での管理についてはされていたのだろうか。模擬訓練を行うことは、リスクアセスメントとして重要である。机上のみの検討では発見できないことが多い。製品が届いた際にすぐ冷凍庫や冷蔵庫へ搬入する余裕があるのか、到着時は、製品の確認や輸送時の温度に問題ないか温度ロガーの確認や配送者から必要な情報伝達もある。行うべき作業は多い。人員も限られた中で、多くの確認作業と速やかな保冷庫への搬入など、通常の作業場所ではないところで、貴重なワクチンを扱うプレッシャーも作業者にはある。その点も加味して対策をたてられているか考えるべきである。
 医薬品の取り扱いは、供給の面と品質の面をしっかり対策を立てなければならない。コロナウイルスワクチンで、会場のことや接種者数が問題として取り上げられているが、医薬品としての品質維持と安定供給を行うために必要な管理と有能な人員の確保は欠かせない。また、その環境も考慮する必要がある。当然、精神論的問題にすり替えてはならない。緊急時だからこそ、そのマネジメントを適切に行い、貴重な医薬品を無駄にしてほしくないと願う。

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