医薬品工場建設のノウハウ -プロジェクトの成功に向けて- 【第6章-7】

SAT、パンチリスト、IQOQ
生産機器の搬入据付、ユーティリティ接続、開口仕舞が終わり、各生産機器ベンダーによる組立作業、運転調整が終わると現地受入検査(サイトアクセプタンステスト、SAT)が実施される。
この章では、生産設備組立後のSAT、メカニカルコンプリション、IQについて説明する

(1)SATの実施
生産機器は搬入据付後、運転調整まではベンダー主体で進行するので、ユーザーは見守っていながら状況によっては何らかの支援をする、テスト材料を提供する等の対応となる。
試運転調整が終わると、いよいよSATであるが、SATではどんな検証をするかについては、あらかじめ、ベンダーとユーザーの間で協議し個々の検証の手順を明確にした計画書を定めておくべきである。
最新のバリデーションの考え方では、IQOQにSATの結果を引用する事が出来る。この考え方を採用すると、IQOQに似た計画書の議論をSATの開始前にほぼ終わらせなければならなくなり、従来に比べるとバリデーションが前倒しになったような忙しさは生じるが、SATの後に同様の検証をもう一度実施しなければならないという煩わしさがなくなり、日程の短縮と設備導入コストの低減が図れる。
この手法で進めるためには、ベンダーのSATの計画書・要領書、報告書がGMP図書として使えるものになっていなければならない。また、検証項目、検証方法が適切であることを確認し承認しておく必要がある。
つまり、一つにはGood Documentation Practiceをベンダーに理解し対応してもらうこと、もう一点は、ユーザーが求める設備の機能すなわちURSをベンダーが理解していてSATでURSを実現できていることを検証することである。
この二点目の対応は、DR/DQの章で述べられている「URSをベンダーと協議しながらまとめる」というプロセスを踏んでいれば難しいことではない。ただし、検証内容が見積範囲を超えていることがあるで、その場合はベンダーとの協議が必要になる。
検証事項がSATで対応出来ない場合は別途IQまたはOQの計画書を起案し検証を実施する。

(2)パンチリスト
機器の製作過程では、設計図書では確認しきれなかった点が改善箇所、修正箇所等として抽出される。これらは「パンチリスト」に記録して完了までフォローしていく。
生産機器のようにベンダーの工場で製作されるものは工場出荷前に出荷前検査(ファクトリアクセプタンステスト、FAT)を実施している。FATでは、問題となった点、改良することで合意した点などが発生するが、これらはパンチリストにまとめておく。
SATでは、計画書で決めた項目以外にこのパンチリストに記録された項目が完了したかも確認する。
原薬の合成設備のように現場で設備を構築してゆくような設備の場合は、FATでは機器単体の材質確認、溶接確認程度しかできず、SATで設備が出来上がってからやっと品質、安全、環境などのすべての検査ができる。このため問題点も多く検出される。これらはパンチリストに記録するが調整等で修正が可能なものはその場で調整し確認する。図面の修正などに及ぶ場合はプロジェクトの変更管理を行い再度リスクアセスメント、DQが必要となる事もある。SATでは各検査項目の他に各種設定パラメータリスト、取扱説明書、保全手順書などの図書も確認をする。これらの図書は、次のPQ,PVのためのSOPの作成のための重要な資料となる。

パンチリストに多数の項目が残った場合、SATをいつの時点で完了とするか?これは、どんな問題点が残っているかによる。リスクアセスメントで品質影響があると判定したコンポーネントや機能がパンチリストに挙がっているような場合はSAT自体もその項目が不合格になっているのでSATを完了することは出来ない。品質影響がなく安全、環境にも問題は無いが使い勝手が悪い等のような瑕疵であれば、SATを完了として報告書を上げてもらうようにした方が得策である。
SATが完了しないと次のバリデーションの実施に進めなくなるからである。

パンチリストに残件を残したまま次のステップに進む場合、パンチリストの残件はコミッショニングの完了確認としてエンジニアリング部門がフォローすることになる。
 

 

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