業界雑感 【2021年3月】

 今回の薬価改定で、いわゆる「G1」ルールによって初めて市場からの撤退を予定している長期収載品があるとのこと。G1ルールとは後発品への置き換え率が80%以上の長期収載品について、6年をかけて薬価を後発品と同じ価格まで引き下げるというもの。後発品メーカーが増産体制を確保するため、撤退にはG1適用開始から6年間の猶予期間が設けられているが、増産体制が確保されればそれより前に撤退することも可能ということである。従来の方法で長期収載品を市場から撤退させるには、供給停止事前報告書を厚労省に提出し、疑義解釈委員会の審議を経て経過措置の告示後、一定の経過措置期間を経てようやく可能となる。供給停止事前報告書の提出に至るまでにも社内ですったもんだする期間があり、ようやく提出できたとしても関係学会・オピニオンリーダーの先生・医療機関への対応など丁寧な調整が必要となる。さらに供給停止が了承されても経過措置期間中は一定の在庫を確保しておく必要があり、市場からの撤退にはとても長い時間と労力が必要となる。
 2013年にオーソライズドジェネリック(AG)が登場したときは、長期収載品からAGさらにジェネリックという流れで長期収載品が市場撤退しやすくなる、と思ったのだったが、実際はそうはならなかったようだ。AGは一定のシェアを確保し、長期収載品の売上高は漸減となりつつも一定量が残るという、単に長期収載品とジェネリックが分け合っていた特許切れ医薬品の市場にAGが割って入った格好となり、その結果ジェネリックメーカーはより小さくなったジェネリックのシェアを分け合う形になってしまった。それでも後発薬使用促進策によりジェネリックメーカーは大きく業績を伸ばす結果となるのだが、逆に多くの先発メーカーは長期収載品ビジネスに見切りをつけ、ジェネリックメーカーやファンドに譲り渡してきたことで、ジェネリックメーカー同士がそれぞれに長期収載品・AG・ジェネリックを持ちシェアを争うといったへんな構図になってきたように思える。

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