ゼロベースからの化粧品の品質管理【第4回】

 化粧品は、体を清潔にしたり、外見を美しくする目的で、皮膚等に塗布等するもので、作用が緩和なもので、効能表現は56種類の表現に限定されています。このような制約の中、各社では機能効果がある原料を配合することで品質の優位性が確保できると考える商品企画部門の方や処方開発者の方と多く接してきました。
 化粧品の品質を考える時、このようなコンセプト原料の配合のみで品質の優位性が確保できるのではなく、もう少し幅広いアプローチが必要と考えます。そこで、今回は化粧品の品質についてもう少し深堀してみます。なお、化粧品においては、安全性の確保は大変重要ですが、私の専門外ですので、安全性が確保出来ている前提でお話します。
 また、原料の配合に関しては、単に配合するだけでなく全体のバランスが重要です。例えば、皆さんが良く配合するグリセリンとヒアルロン酸、グリセリンとキトサンにおいても、ある一定の配合比で保湿効果を格段に発揮します。そのため、原料の組合せによる相乗効果や有機概念図や相図を用いた処方の基礎的なアプローチも大変重要ですが、この件は別の機会にお話しすることとします。

 今回は、化粧品に求められる品質について考えてみます。一言で言えば、『お客さまの期待に応え、安心して長く使用して頂ける製品であること』ですが、これはどのような機能、化粧品の持っている特性でしょうか?
 医薬品では求められる機能は明白で、有用性で『薬効』が高いことです。勿論、薬効と同時に、反面の副作用が低いことですので分かり易いのですが、化粧品は一筋縄ではいきません。サロンシャンプーと謳っている商品がありますが、品質の優位性とその根拠、サロンと一般的な家庭向け商品と何が違うのか良く判りませんね?
 化粧品の効能は官能的な要素があることと、機能の定義も薬機法の範疇で明確な効果があってはならないため、医薬品よりも分かり難いというのが本音です。お客さまにとっての満足感は、官能的な要素もあり、正直、処方成分だけで明確に説明できないのが現状です。そのため、自社の品質を考える上では、その品質特性を理解することが必要ですが、主機能が高いことだけに捉われない視点が必要で、更に複雑です。
 主機能に関しても、同じ配合成分の商品と言っても、製造工程により乳化状態が変わり、使用感もがらりと変わるケースがあります。従って、処方面だけの議論ではなく製造工程の要素、更には、容器・用具類も重要な要素であることが、より化粧品の品質の議論に関して複雑さを増しています。
 私の経験では、マスカラのブラシ、ファンデーションのパフが処方以上にインパクトのある場合もありました。また、過去、ヨーロッパのメーカーのマスカラを分析したところ、カールタイプとロングラッシュタイプが同じ処方でブラシの違いでしかなかったことも経験しています。一般的には処方面で機能追加をしますが、用具で正反対の機能を生み出していたのには驚きでした。(*処方は分析結果から判断しました。水分を与えることで睫毛は真直ぐになります。逆に、ワックス成分等の油分、若しくは樹脂でかためカール感を出します。)
 但し、医薬品においても薬効だけが品質ではないケースもあります。前職時代には、ニキビ薬でニキビの治療効果を求めるだけでなく、ニキビで赤くなったり、炎症を起こして肌荒れが目立つ対応に着目し、肌色の補正効果を持たせて顔のニキビをカバーできる商品であることを優位性として謳った商品や、化粧品で培った低刺激の基剤処方の商品とすることで使用される時のなめらかさ、肌なじみの良さといった感性面での差別化を訴求した商品もありました。

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