ドマさんの徒然なるままに【第21話】


第21話 QA三秒ショッキング4/感染防止をマネしただけなのに

♪♪♪  ~ ♬ ♬ ♩ ♩ ♩ ♫ ♫ (某ご長寿料理番組のミュージックのつもり)
はーい、QA三秒ショッキングのお時間です。今回は前話での「政治家に学べなかった」の状況を猛省*1し、新型コロナウイルスの感染防止から学んでみたいと思います。前話での顧客監査が続いているようです。結果は今ひとつ???のようでもありますが、どうなったことか・・・。
それでは、普通に「スタート!」
ちなみに、本話の内容は、前話同様すべてフィクションです*2

● アラート!?
顧客監査の場で
 「では、製造用水について確認させてください。まず精製水のシステムはどう
  なっていますか?」
 「施設ごとに精製水システムが設置され、バリデーションの結果に基づき、毎
  週末の滅菌と全ユースポイントのローテーション採水でチェックしています。」
 「アラートレベルとアクションレベルは設定していますか?」
 「アラートレベルは設定していますが、アクションレベルは設定していません。」
 「どうしてですか?」
 「あんたね、東京アラートだってアクションレベルなんて設定してないじゃな
  いですか。それどころか、アクションにさえ触れてないですよ。どうして、
  水ごときにアクションレベルが必要なんですか!」
 (天の声)マジ、あかんわ・・・。
 《筆者注》アラートレベルとアクションレベルは“対”として設定、成立するものだと思っていたんですが、行政の感覚ではそうではないらしい。工場であれば、アクションレベルに入れば、稼働は即刻停止でフル点検整備。一歩間違えば、医薬品の使命のひとつである安定供給にも影響が及ぶ。そうならないように、これ以上悪化するか正常値に戻るか、各項目の再点検・再確認(チェックという意味ではアクションしている)と並行しての注意しつつの様子見がアラートなんじゃないかと思っているんですが。
ちなみに、製薬用水だけじゃなく、クリーンルームでも、防虫防鼠でも、基準に基づく管理においては、アラート/アクションの設定は求められますよ、ご注意のほど。そもそも結果で動くんだったらリスク管理なんて縁の無いことだし。

● 基準!?
顧客監査の場で、
 「では、原点に戻って基準について話をしましょう。アラートレベルとアク
  ションレベルの設定を前提として、基準を設定しますよね? 特に御社の
  場合は複数サイトの工場がありますが、共通で基準を設定してるんでしょ
  うか?」
 「共通? 各工場で独自に決めていますが、何か問題ありますか?」
 「今や、医薬品品質シスデム(PQS)もありますし、何か科学的な理由とか
  客観的な根拠とか無く、工場ごとに独自に設定しているというのは、あま
  り感心しないのですが。目的やリスクの相違もあるので、必ずしも同一の
  数値である必要はないですが、設定の考え方とかは普通同じになるんじゃ
  ないですか?」
 「あんたねー、東京都だって他県とは別に新型コロナウイルス感染の重傷者
  をカウントしてたじゃないですか。」
 (天の声)救いようがないとは、こういうことじゃ。
 《筆者注》色々な側面からデータ収集するのは良いことと考えるが、まずは厚生労働省の基準に従い、必要に応じて独自の基準による解析を参考データとして取り扱うんじゃないかと思うんですが。統一基準でないと全国の状況や地域差、ましてトレンドが負えなくなり、科学的データとして取り扱えなくなってしまう。もし国の基準に疑問や不満があるならば、公表とは別に関係者内で議論すべきことなんじゃないですかねー。「東京都≒日本」みたいな言い方をするマスコミにも問題があるのは事実ですけど。
基準値や管理値に対する考え方自体は、GMDPだって一緒なんじゃないのかな。科学的な評価や分析の出来ない数値って、データとは言えないんじゃないかと。不安や不信を煽るって、こんなちょっとしたことの積み重ねから生じるんですよ。他人事じゃなく、気を付けましょう。

● 自粛!?
顧客監査のコーヒーブレイクで、
 「この工場では、今般の新型コロナウイルスの影響はありますか?」
 「はい、ありますね。」
 「特に何が困りましたか?」
 「自粛要請じゃないですかね。現在も継続して自粛中です。」
 「作業者の通勤や工場の稼働ってことですか?」
 「いえ、GMPの自粛中なんですよ。」
 (天の声)Oh! My GOD
 《筆者注》GMDPの自粛なんて在り得ませんから。もしそれに近いことしたら、それは単純に“手抜き”と言います。

● 営業時間短縮!?
顧客監査のコーヒーブレイクで
 「この工場、4直3交代の24時間稼働ですよね?」
 「はい、そうです」
 「医薬品の製造工場なんで、飲食店のような営業時間短縮の要請も直接的に
  影響がなくて良かったですね。」
 「いえ、そうでもないんですよ。」
 「どういうことですか?」
 「個人的な営業(作業)時間の短縮だ、なんて言いだす奴がたくさん出てき
  てるんですよ。」
 「それは困りもんですねー。それでどう対処してるんですか?」
 「元々手抜きしていたんで、操業には全く影響ありませんわ。」
 「・・・。」
 (天の声)おい、こら、こらーーー!
 《筆者注》飲食店の営業時間短縮の効果って、どうだったんでしょうかね? 課題は、時間云々よりも感染防止を意識しない質(たち)の悪い客(本人気づいていないでしょうが、酒癖の悪さも含みます)にあるような気がしてならないんですが。質の悪い客は、自分は感染なんかしない(当然他人にうつしてなんかいない)と思って勝手な言動・行動をするような・・・。しかも、こういう輩は何かあれば店のせいにするような気もするし。
ちなみに、工場の「効率化と称した手抜き」は絶対にあってはなりません。GMDPについては、必ずしも評価指標が目に見えるわけでもなく、また結果として直ぐに出て来るわけでもない。重篤な逸脱や回収といった、とんでもない事態になってやっと気づくといったシロモノでもあるので、それだけ注意が必要です。

 
● Go To トラブル!?
顧客監査でコーヒーブレイクが終了し監査が再開、
 「では、逸脱についてお尋ねしますが、この数年間の記録を拝見できますか?」
 「はい、これです。」
 「率直に申し上げて、それぞれの事態のレベルはともかくとしても頻度と言うか、
  件数としては結構多いですよね。」
 「そうですか。この工場では毎年この程度で発生しますけど。」
 「今年に至っては、1月から8月末までの8ヵ月間で、昨年超えしてますよねー。」
 「あぁー、今年はですね。政府に合せてキャンベーン実施中なもんですから。」
 「どういうことですか?」
 「Go To トラブル、なーんちゃって。」
 (天の声)工場、ロックダウンじゃー!
 《筆者注》あくまで冗談ですが、こんな状態の工場であったら、ビジネス的には破たんすると思います。ちなみに、travelとtrouble、日本語だと“a”と“ou”や“v”と“b”の発音の区別がないこともあって何となく似ている。そのためか、ニュース等でも一瞬間違えたりするキャスター等が散見され、ちょっと笑ってしまうのは筆者だけ? 
ちなみに。Go To トラベルでもGo To イートでも、さらに計画されているGo To イベント(2020年9月24日時点)でも、人どうしが密になれば感染リスクが高まることは明白。一方で、家にジーッとしているにも限界があるのも自明の理。お店側は何かあれば風評被害込みで大損失となるので可能な限り対策を講じるはず。となれば、必要なことは、利用者として出かけるならば気を緩めないことしかないでしょうね。それに、自衛策はお店に迷惑をかけないことにも繋がりますし。

● 対策徹底宣言!?
顧客監査の場で、
 「では、自己点検についてお伺いします。SOPと記録を拝見できますか?」
 「はい、これがSOPでこれが記録です。」
 「チェックリストによる点検ですね。」
 「はい、そのほうが抜けもなく効率的にできますので。」
 「確かに。それでもし不備・不備があった場合は?」
 「チェック項目の備考欄にその旨を記します。」
 「後日に改善対応を図り、進捗や完了した旨などはどのように残すのですか?」
 「自己点検によるチェックしたということだけで、その後のことは考えていま
  せん。」
 「えっ、どういうことですか? それじゃ、自己点検の本来の目的である継続
  的改善に繋がらないと思いますが。」
 「あんたねー、東京都の感染防止徹底宣言ステッカーだって、自分でチェック
  して、自分で印刷して貼っているだけじゃないですか。同じことでしょーが。」
 (天の声)アンビリーバブルなのじゃ!
 《筆者注》レインボーをイメージした東京都の感染防止徹底宣言ステッカー、正直、都で準備したチェックリストを自分でチェックして印刷・貼付するということを知らなかった。現在では保健所等による立ち入り調査も入るようになったらしいが、当初、マスコミではあたかも保健所等の第三者チェックがなされた優良点の印象を与えていたように思えてならない。
チェックリスト、項目的には一通りカバーし、「あり/なし」や「やってる/やってない」の状況確認として利便性が高い。反面、あくまで一般論の型にはめての運用のため形骸化し易く、その中身の程度については曖昧になることが多いという難点がある。そういう意味で、GMDPにおいてもチェックリストのみに頼る自己点検については客観性のない行為に通じさせてしまう可能性がある。あくまで自主的な改善行為を期待したい。
それに加えて、先の保健所等の第三者チェック同様、行政査察って、抜き打ち(無通告)が基本で、いつ立ち入られても「普段通りにやっていて
問題なし」が前提となりますから。突然の来訪でギクッとすることは認めるが、それでアタフタするようじゃ、日常の姿に疑問を抱かれても仕方ないように思えるんですけど。気を付けましょうね。

● アプリ・システムは使える/使えない、使おうと思う/思わない!?
顧客監査の場で、
 「では、話題を変えましょう。貴工場でのコンピュータシステムはどうなって
  いますか?」
 「他工場も含めて、弊社のすべての工場は統一したシステムで運用されていま
  す。」
 「CSVは?」
 「当初はバラバラの部分がありましたが、2008年には各アプリともコンソリ
  デートして完了しています。」
 「素晴らしい。使い勝手は良いですか?」
 「使い勝手? さぁー、どうでしょうか。」
 「えっ、どうってどういうことですか?」
 「システムはCSVも完了し自慢できるレベルですが、現場でまともに使ったこ
  とがないので、使い勝手は分かりません。」
 「・・・。」
 (天の声)こいつらが分かってないだけで、何らかの形でコンピュータを使って
      いるじゃろーに。一昔前は、製造現場と本社筋のコンピュータ担当が
      別々だったりしてたからのー。それとも、こいつら、CSVしてあれば
      Data Integrityも品質保証も問題ないと勘違いしとるんか?
 《筆者注》新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)とやら、それ自身を否定するものではなく、その意図は評価に値する。ただ、陽性者は、自身で申告しないとダメで、しかも申告から登録された接触者への通知にはタイムラグがあるとか。さらに、通知とアプリ表示と食い違うことも多々あるとか。うーん、それって腑に落ちないと言うか、合点がいかないと言うか。不具合対応としてバージョンアップを図ってはいるらしいが、現時点(2020年9月24日現在)では、本来の目的に至っていないように思えてならない。率直に申し上げて、陽性者全員が自ら手間かけて申告しますかね? また申告から接触者への通知までにタイムラグがあれば、2次感染の防止には繋がらないと思うんですが・・・。あくまで任意であり、性善説に基づくという日本人らしい発想は素晴らしいのですが、本来の目的からはちょっとズレてるように思えてならない。
どんなに立派なアプリやシステムであったとしても、使いやすくて使いもんになるものでなきゃ、少なくとも使おうという気を起こすものでなければ意味ないんじゃないんですかねー。そう思うのは、筆者だけ? ところで、お宅のアプリやシステムは大丈夫? 

今般の新型コロナウイルスのパンデミック、誰しも予想しえなかった歴史に残る問題となってしまった。各国の対策は、その国の政府の考え方によって異なる。それはそれで各国の事情と思惑があるものと察する。
日本の対策については、疑問に感じることは少なからずあるが、個々の対策そのものをとやかく言うつもりはない。日本の首都であり、通勤者も含めて出入りが異常な数に上る東京都の話や数値が前面に出されて報道されることも致し方ないと思う。ただ、一般の方は、このGMP Platform読者のような製薬関係とは異なり、報道された数値やコメントに影響を受け易いことを留意して頂きたいものである。数値の一人歩きや勝手な推測・解釈は時に不安を煽り混乱を導く。
数値の一人歩きや勝手な解釈といったこと、それは新型コロナウイルスに限らない。GMDPの世界でも同じ。良い方向を想定していたとしても、結果として悪い方向に行っては意味がない。解釈を間違えず、冷静、客観的かつ科学的に原点に戻って見直しましょう。今やっていることが正しい方向なのか、ちょっと逸れてしまっているかが見えて来るんじゃないでしょうか。
自社・自工場の規模や製品群を鑑みることは必要だが、グローバル企業に振られる必要もなければ、ましてマネする必要などない。場合によっては、Warning Lettersの反面教師であったとしても、真実を見極め、少しでも正しい方向に、改善に結びつければいい。大事なことは、医薬品の品質に問題があれば、安全性と有効性に問題が生じ、それは患者の生命に関わるということ、それを常に意識しておくこと。今般の新型コロナウイルス感染を通じて、医薬品に携わる者として必要なことを再認識して頂けたら嬉しい。言い訳ですが、本話、そういう使い方として読んでください。

では、また。See you next time on the WEB.


【徒然後記】
アゲハ蝶のサナギに学んだ人間模様
前20話「QA三秒ショッキング3/政治家に学んだだけなのに」の徒然後記に書いた、我が家の柚子の木に宿るアゲハ蝶の幼虫の話の続きである。本話は、そのサナギに関する話である。
青虫と化した幼虫は、次にサナギに変態することはご存知の通りである。私の観察では、このサナギへの変態が一番苦労する段階のように思える。まず大変そうなのは、サナギとなる場所を探すこと。あのノロノロと歩く青虫が、異常な速さで移動するのである。そもそも、柚子の木から離れ、ごつごつとした地面を這い、壁やフェンス等に自身を2本の糸で固定しサナギ化するのである。ときには、3m近くある2階の壁まで登っていったり、駐車場を横切り隣家の壁にまで行く奴がいる。
そんな根性のある奴がいたかと思えば、庭の水まき用のバケツの裏側(バケツを裏返して置いてあるため)にくっつく奴もいれば、途中でギブアップしたのか、「いくらなんでも、こんな所で・・・」と思うような、あからさまに餌にしてくださいと言わんばかりのいい加減な場所で落ち着く奴もいる。
もっと要領のいい奴さえいる。なんと、幼虫時代の枝の中から、居心地の良さそうな太めの枝(周囲の影に隠れ天敵から狙われ難く、しかも風の影響も少ないような位置)でサナギ化してしまう奴。
昆虫と言えど、個体ごとに性格や考えがあるようで、色んな奴がいるなーと思わざるを得ない。と同時に、コレッて人間社会と同じじゃないかと考えさせられる。要領の良い奴から、「成長になって大空に飛び出しゃ、それでいいんじゃない!」と人生を教わったような気がする。

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*1:(天の声)「猛省」という言葉自体、政治家が不始末をしでかした時にし
        か出て来ないような気がするが。「猛烈に反省してる」と言う
        よりは、「ホントは反省なんかしてないからねー、ばーか!」
        って聞こえるんじゃが。
   (筆者)そーね。俺もそう思うよ。むしろ、普通に「反省」って言ってく
       れたほうが素直に受け取れるよね。
   (天の声)お前もそう思うか? 初めて意見が合ったな。
   (筆者)合せるつもりはないけど、そういうコトもあるかもね。たまたま
       でしょうが。
   (天の声)お前、ホントに性格悪いな。
   (筆者)あんたに言われたくない、そっくり返すよ。

*2:(天の声)前話でも言ったが、誰が読んでも、そんなこと直ぐに分かるわい。
        ここに出て来るようなことやらかしてたら、それって違反を通り
        越して犯罪に近いぞよ。
   (筆者)だからこそ、ダメな部分を強調し注意喚起として書いているのだ。
   (天の声)単にウケ狙いじゃろ。
   (筆者)やかましい!

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