医薬品品質保証こぼれ話【第20回】

ウィズコロナ時代のヒューマンエラー対策

新型コロナウイルスの感染に歯止めがかからず、これから先の世の中の呼び方にも、感染の終息を見据えた“アフターコロナ”から、ウイルスとの共存を意識した“ウィズコロナ”へと、微妙に変化が見られます。今のような緊張や不安が長く続く世の中においては、人は平時よりミスや失敗、いわゆる、ヒューマンエラーを引き起こしがちです。今回はこういった状況に鑑み、いま行われている感染の制御や防止対策の現状に触れながら、ウィズコロナ時代におけるストレスと、それがもたらすヒューマンエラーへの対処の考え方について若干の考察を試みたいと考えます。

ヒューマンエラー対策に関しては、これまで、執筆やセミナーの場、また、本Platformにおいても連載の機会をいただき、「製薬工場におけるヒューマンエラー対策」を基本テーマに、いろいろな観点から考え方や進め方を述べさせて頂いておりますが、ウィズコロナの時代においては、これまでお伝えしてきた内容に加え、この時代固有の配慮も必要になってくるでしょう。その理由の一つとして、先が見通せない今の状況の中で、これまで経験のないさまざまなストレスや不安に長くさらされることにより、"コロナ鬱"に代表される精神面の不調を来たす人の増加が挙げられます。こういった精神面の不調につながるストレスが、今のようなコロナ対策の流れの中でどのように生まれるのか、少し考えてみたいと思います。

一般に、ウイルスや細菌のような見えない敵との闘いにおいては、問題発生の確認が遅れがちであること、また、感染や汚染の原因究明が難しいことから、決定的な改善・防止の対策を見出すのは簡単ではなく、少し油断をすると予期しない重大な問題に発展することも珍しくありません。今回のウイルスのように、変異しやすく、感染性や感染力について不明な点が多いケースでは、特に、感染拡大の原因究明に困難を極め、決め手となる対策を打ち出すのは容易ではありません。たとえば、発症の数日前から感染力をもつという知見にしても、実際、どれぐらいの割合で発症前のウイルス保有者(PCR検査陽性者)からの感染が起きているのかなどは、未だ詳細が分かっていないのが現状かと思います。これに関しては、保有するウイルスの量が通常より多く、かつ、近距離での会話により飛沫を直接受けるなど、悪い条件が重なった場合の稀なケースなのか、電車やレストランなどにおいて偶たま10分間程度となり合わせになるといった通常の接触でも感染するのか、検証は容易でないとは思いますが、このあたりついてもう少し詳しく分かれば対策もとりやすくなるのではないでしょうか?

また、毎日のように聞かれる、“(糖尿病などの)基礎疾患のある者は重症化しやすい”、といった専門家のコメントにしても、“基礎疾患”が何を指すのか、糖尿病以外にどういった疾患が対象となるのか?このあたりについても、もう少し具体的に示していただければ対応もしやすく、不安も少し小さくできるのではないでしょうか?これに関しては、“がん患者や膠原病・リウマチなどの自己免疫疾患の治療で免疫抑制剤を服用している方は重症化リスクが高く、感染対策により厳重な注意が必要である”ことなども、もっと明確なメッセージを発信し周知する必要があるように思います。さらに、マスク・手洗い・うがいなどの効果や意義についても、報道される識者のコメントに一貫性がなく、また、医学や公衆衛生に依拠したマスクの合理的な着脱の考え方や方法が整理した形で示されないことが、国民の感染防止行動に迷いを生じさせる一因となっています。このような状況を背景に、暑い時期に入っても、混雑していない屋外などにおいても、多くの人がマスクを着けるという状況を招き、これによる呼吸や体温調節機能への悪影響が懸念され、同時に、精神面でも大きなストレスとなっています。

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