初めてのGDP(医薬品適正流通基準)【第2回】

1.はじめに

 わが国で医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン(以下、GDPガイドライン)が2018年12月に厚労省より発出され、早くも1年以上が経過しました。製薬企業と医薬品の流通に関連する企業ではGDPガイドラインへの対応を検討、あるいは模索されてきたのではないかと思います。その一方で、他社や業界の様子眺めをしておられる企業もあるかもしれません。
 そのような状況下で、本年2月に大阪府が「医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン解説書」を公表しました。筆者はそれを、行政も本格的にGDPに取組むよ、という意思表明のように受け取りました。今後ますますGDPガイドラインとその運用について企業が考えねばならない時期に来ている、と言えるでしょう。

2.わが国のGDPガイドライン制定の経緯

 わが国は2014年7月にPIC/S(医薬品査察相互認証機構)に加盟しました。これに先立って、PIC/SのGDPガイドライン(以下、PIC/S-GDP)が同年6月に発効となっていましたので、このPIC/S-GDPをわが国の行政当局がどのように取り扱うのか、非常に関心が持たれました。当時、先進国で公的なGDPがないのは日本だけ、と言われていた状況があり、業界も国内のGDP動向に注目していたのです。そうこうしている中で、2015年9月に公表された厚生労働省の医薬品産業強化総合戦略において、「医療用医薬品の安全性確保のあり方については、PIC/SのGDPに準拠した国内GDPの策定の検討を行う」とされたことによって、私たちには、国が本気でGDPに取り組むのだな、ということが分かりました。さらに2017年12月にはこの個所が、一歩踏み込んで、「医療用医薬品の安全性確保のあり方については、PIC/SのGDPに準拠した国内GDPの策定の検討を速やかに進める」(下線筆者)と一部改訂されました。
 こうした行政の動きに応じて、厚生労働行政推進調査事業「GMP、QMS及びGCTPのガイドラインの国際整合化に関する研究」(研究代表者:医薬品医療機器総合機構 櫻井信豪先生)の分担研究「医薬品流通にかかるガイドラインの国際整合性に関する研究」(分担研究者:金沢大学 木村和子先生)研究班が2016年3月に発足し、筆者も委員として参画しました。この研究班でPIC/S-GDPをベースとして、わが国の法令や流通の業態を考慮した日本版のGDPガイドラインの研究が始まりました。
 その成果物として、2017年度に「日本版GDPガイドライン素案(H28年度版)」が作成され、厚生労働省に提出されました。このGDPガイドライン素案に準拠して、2018年12月28日に厚生労働省より公式にGDPガイドラインが発出されるに至りました。

3.GDPガイドラインの位置づけ

 皆さんは医薬品の製品ライフサイクルという言葉をお聞きになったことがおありでしょうか?製品ライフサイクルとは、医薬品の開発→製造→流通→使用(→販売終了)というステップを指します。
 このステップごとにGXPsと総称される次のような薬事規制があります。
   開発:GLP、GCP、GMP  製造:GMP、GQP  使用:GVP、GPSP
ここではGXPsのそれぞれを解説することはいたしませんが、これまで流通のステップには対応するGXPがなかったところに、GDPガイドラインが発出されたことにより、めでたく開発から使用に至るGXPsのリンクがつながりました。
 ご注意いただきたいことは、上記のGXPsはGDPガイドラインを除きすべて厚生労働省令であることです。つまり、省令ですので企業に対して強制力がある基準です。それに対してGDPガイドラインは「ガイドライン」ですから強制力はなく、企業の自主的な運用に任されています。

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