GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第31回】

1.スキル
 もし、GMPの適用範囲で自転車を使う必要がある場合、その操作手順書は必要であるか考えてほしい。自転車に乗れない人もいる。スキルとして設定する必要があるだろうか。トレーニングが必要か考えるべきである。自転車に乗れない者をその部署に配置することも問題であるが、自転車に乗れることをスキルとする必要があるか考えなければならない。その業務を行うためにスキルとするならば、トレーニングを行うか、又は、そのスキルを習得していることの判定が必要となるかを考えなければならない。そこで、製品品質へのその業務についてリスク分析を行うことになる。自転車で、原料や製品を運搬する場合、途中で、転んで落下させることで品質に影響するなら、スキルが必要と判断することもある。しかし、自転車を乗りこなすスキルがあったとしても、横風やスピードの出しすぎなど、様々な要因まで、トレーニングに含むことは困難である。自転車での運搬におけるスピードのコントロール等を手順書に定めることでも十分との判断も可能である。
 GDP1)では、運搬におけるドライバーの教育訓練を求めている。車の免許以外にスキルを求めているわけではない。その教育訓練の内容として、偽造医薬品の侵入防止(セキュリティ)や温度等の品質管理の維持、事故時の医薬品の漏洩・拡散防止対策、緊急の連絡など手順に基づくものである。休憩時のエンジン停止により、冷蔵冷凍機能が停止させない手順、セキュリティ上の施錠の徹底などの実施とそれらを適切実施した記録について教育訓練することが重要で、特にスキルとして求められる技能とは異なる。
 最近は査察等で、スキルマップが求められる。教育訓練計画を立案する上で、重要な点である。そのトレーニングの教育訓練計画を立案する上で、目的とするスキルを明確にしなければならない。しかし、すべての作業にスキルが必要とはならない。作業をするうえで、手順書を確認するだけで十分実施ができるなら、スキルとする必要はない。逆に、手順書を読むことで作業ができることをスキルとすると、作業時に手順書の確認が不十分になる可能性もある。ベテランが起こすエラーは、その慣れから手順書の確認が不十分になり起こすことが多い。スキルが一般的に必要と思われる業務は次のとおりである。
・判定を行う業務(例:目視検査、試験検査、監査員等)
 目視検査など、工程検査は、基本的にスキルが必要である。しかし、工程検査や試験検査のすべてでスキルが必要とはならない。その検査内容により、技能が必要と判断したものである。監査も内部(自己点検)及び外部(供給者管理)の、その施設に対しての判定を行うことからスキルが必要となる。当局の査察官も「GMP調査要領の制定について」通知2)別添1にて調査員の要件として求められるスキルが明示されている。
・指導を行う業務(例:教育指導者等)
 GMP概論等の座学においても、現場トレーニングにおいても、その指導者を認定する制度を組み込んでいる製造所は多い。OJTの場合、そのスキルを習得したかの有効性評価として、A:指導ができる、B:一人で作業ができる、C:補佐する者の下なら作業ができる、D:作業自体ができず、その補助のみである、等の評価で、指導できる者としてのスキル評価をすることが多い。また、工程責任者等の責任者も指導能力があると判断することが多い。
・作業時に緊急な判断を要する業務(例:自動車の免許等)
 医薬品製造所における例示がないが、装置等が不具合で緊急停止した場合などの判断が要する業務もスキルが必要となる。自動車の場合、事故等で製品の漏洩等が考えられる場合はスキルが必要となる。ただし、緊急連絡等で、責任者等の判断を仰げる場合は、その責任者にスキルが必要とされる。
・作業にあたり、特別な技術、知識を要する業務(例:無菌操作、高活性品の扱い等)
 無菌操作や高活性品の取り扱いなども特別な技術、知識を要する業務としてスキルが必要となる。最近では、バイオ医薬品等の高分子医薬品や再生医療等製品等も特別な技能が必要なものとなる。コンピュータ化システムのプログラマーの技能もスキルを必要とする業務となる可能性がある。

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