再生医療等製品の品質保証についての雑感【第10回】

はじめに
 再生医療等製品の製造における上流工程とは、細胞の単離、細胞の増幅(複製)あるいは分化誘導などの細胞を加工する操作を実施し、必要な数の目的細胞を無菌かつ製品規格内で、再現性よく調製する工程群を意図しています。一般的な医薬品製造では、上流工程の主たるリスクは不純物であり、製造方法や工程の手順は製造設計時にユニークで決定することができます。一方、再生医療等製品製造では、製品設計時に培養を専門とする者(研究者)が構築した上流工程手順は、製造設計時において、製造方法はおろか工程手順の変更すら困難な場合が生じます。工程設計をする者においては、細胞を加工するという本質(細胞の特性)を理解することが工程の互換性や再現性を評価するために不可避となります。本稿では、上流工程における細胞加工への理解について雑感を述べさせていただきます。


● 細胞を製品とする場合における重要品質特性(CQA)の考え方
 再生医療等製品の製造を行う上で不可欠な、重要品質特性(CQA: critical quality attribute)にはどのような項目が含まれる(必須となる)でしょうか。『細胞加工医薬品等の品質及び安全性の確保に関する指針(平成24年9月7日付け薬食発0907第2~6号)』に示される細胞数、細胞純度、生細胞率などは出荷判定において必須の項目ですが、以前にも述べたようにQCの道具としては足りておらず、現状で実施可能な最終製品の品質試験項目では製品の同等性を評価することはできないと考えます。その結果、現状で製品のライフサイクルを通して品質特性の同等性を示すためには、原則として、治験時において採用された原料等および工程手順を容易に変更することは難しいと考えます。すなわち、製品のCQAには、原料である培地や添加物、および品質に関わる製造方法やその手順が含まれていることが示唆されています。
 一方で、CQAに含まれる製造方法および手順とは、あくまでも品質に関わる「潜在的な工程パラメータ」であり、実際に行われる操作(工程)そのものではないと考えます。例えば、手操作で行われていた製造手順による工程は、機械操作により実施する場合では、手操作とまったく同じ操作・動作でなければ同等性が失われるかと言えば、必ずしもそうではないと考えます。重要なのは、製品における目標品質プロファイル(QTPP: quality target product profile)より導かれる製品設計を達成するために、原料あるいは中間製品である『細胞の状態』をどのように変化させ、目的細胞に誘導するかを考慮した製造方法および手順であり、製品の目標品質に対してある程度の幅(デザインスペース)が示せることであると認識されます。元来、商用を目指す再生医療等製品は、このデザインスペースの幅の内に、ベンチスケールから商業生産までのバッチサイズや、手操作あるいは自動化(機械化)が選択可能な、工程に関わるパラメータが含まれている必要があります。
 再生医療等製品の製造におけるデザインスペースの設計は、図のような構図により、後に回顧的に実施することが難しいので、必ず製品開発時において適切に実施されていることが望まれていると考えます。
 
 
再生医療等製品の製造工程設計の考え方

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