ASEAN薬事規制とASEAN CTD(ACTD)作成のポイント【第9回】


 
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3.ACTD PART IVの内容 -セクションCについて-
 セクションCは治験サマリーについて記載する。セクションBの「臨床試験の概要」では個々の治験に対する結果や分析、あるいはそこから導き出される臨床敵な知見について記載したのに対し、セクションCでは、治験報告書、市販後調査データ等の実施したすべての治験および研究内容の結果を包括し、それらを基にメタ分析やクロス解析を行った結果について要約する。この章は内容により多寡があるが、おおよそ50~400ページにまとめられ、次の5つの項目から構成される。
 

1.生物薬剤学的な研究とそれに関連する分析法

ここは1)背景と概要、2)各研究結果のまとめ、3)研究結果の比較と解析の3つの部分に分かれている。1)では、開発の経緯やIn vitro、In vivoでの剤形的な特徴、生物学的利用率(BA)、生物学的同等性(BE)に対する治験結果などについて記載する。2)では生物薬剤学的な検討結果を表などにまとめ、要旨を述べる。この部分はICHのE3を参照するとよい。3)では、実施したIn vitro溶出試験や、BA、相対的BAに関する研究、処方変更や製造プロセスの変更などがIn vitroでの溶出試験や溶解性あるいはBA、BEに与える影響、薬物動態に与える変化等について記載するとともに食物の影響、相互作用などについて図表を使うなどして分かりやすく説明する。
 

2.臨床薬理学研究のまとめ

この項にはヒトで実施された薬物動態学的な評価、薬力学的な評価とともに薬物動態に関連するIn vitroで行われたヒト細胞や組織あるいはヒトの生体試料に相応したものを使って行われた実験なども含まれる。ワクチン製剤については用量や製剤処方などを決定する際の免疫反応に関するデータも提供する。まず薬物動態や薬力学的データを解釈する上で必要な生体試料を使った研究結果について説明する。これには例えば腸や脳血液関門の透過性、蛋白結合、肝代謝、代謝に関連した薬物間相互作用などが該当する。次に健常人および患者を使った薬物動態(PK)、薬力学(PD)およびPK/PD相関性、単回投与・連続投与でのPKの比較、用量反応と血中濃度と薬理反応との相関性などについての臨床研究結果が続く。また、このような臨床薬理学研究結果についても結果をわかりやすく図表にまとめるとよい。さらに免疫原性や免疫反応などと言った抗生物質などに見られるような特殊な医薬品に対する試験結果もここに含まれる。
 

3.臨床効果のまとめ

ここでは適応症に対する効果の主研究および関連する研究などについて用量反応、相対的な有効性、長期有効性、患者サブセットでの有効性などの観点から述べる。この項は臨床研究について記載されるが、効果に関連する非臨床試験データや臨床薬理学データを参照し、理解しやすくまとめることも重要である。医薬品の効能効果に関する研究結果の比較や分析、母集団の特性や基本情報、疾病の特徴や投与前の状態など医薬品の効能効果に関わる重要な研究について図表を使ってわかりやすくまとめることが重要である。ICHの「治験報告書の構成と内容に関するガイドライン」や「臨床試験のための統計的原則」などのガイドラインを参照しながら、結論づけられない研究結果、否定的な研究結果も含め、医薬品の有効性を評価するためのすべての治験結果をまとめて比較する必要がある。さらに、用量の選択、投与間隔を決めるための効能効果に関わる用量反応や血中濃度変化のまとめ、推奨される投与量や最大投与量などの治験情報の分析も行う。耐性に関する情報があればそれらも記載される。また、医薬品に関して一つ以上の適応症がある場合は適応症ごとにこのセクションを3A、3B、3Cの要領で記述してゆく。
 

4.臨床的な安全性

ここでは対象とした患者群や個々の臨床試験報告書等の安全性に関するデータを纏めたものから成る。ICHで示されているように安全性については次の3つのレベルがある。 1)投与量、期間、患者数などの暴露の程度を安全性の面から評価する 2)典型的な副作用や検査数値の変化を特定、分類し、頻度についてまとめる 3)重篤な副作用や他の副作用を特定し、頻度についてまとめる 医薬品の安全性に関わるデータは詳細且つ明瞭に図表を使うなどして説明する必要がある。医薬品を投与する場合には、安全性評価計画、安全性試験概要、被検者数や剤形、投与期間などの全体的な医薬品の暴露量、疾病の重篤度や被験者の背景を含む被験者群の人口構成や特徴についてもまとめる。副作用についても頻度や症例数、帰結、薬物治療の有無などの他、重篤度や因果関係について対照群との比較を行う。特に死亡例などの重篤な副作用が起きた場合には、血液分析値等様々な観点から解析を行う必要がある。その他、バイタルサイン、身体的所見や他の安全性に関連した所見など、治験効果と関係ないと思われる数値であっても変化が起きた場合には注意する必要がある。さらに薬物間相互作用や食物の影響、妊娠・授乳の影響、依存性など特殊な集団及び状態における安全性についても必要に応じて情報提供する。
 

5.個々の臨床研究の概要

個々の臨床研究報告書の概要をICHのE3のガイドラインに準じて3~10ページ程度で作成する。ここには臨床研究のリスト、個々の研究の概要が載せられ、適当に表や図を使ってわかりやすくまとめることが大切である。

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