エッセイ:エイジング話【第4回】

痛ましい事故の朝に純水とエイジング

 純水とエイジングへ進もうとした朝、幼稚園の送迎バス運転手が幼児を轢いたというニュースがありました。おそらく高齢の運転手と幼児の保護者に対し非難の声があがり、幼児の兄・両親祖父母までの広い年代に痛ましい記憶が残ります。
 エイジングというテーマを取り上げてしまったことを悔やみますが、気を取り直し純水とエイジングへ進みます。
 究極の汚れがない純水の用途には2つルーツがあります。1つは、ブランク水と呼ばれ水質検査に際して、検査対象が含まれない水が必要不可となります。
たとえば、BODの水質分析にはブランク水を充填した検体をつくります。BODの検体は恒温器に5日間保持した後、微生物によって消費された溶存酸素(DO)量を測定しますが、このとき検体のDO消費量から、ブランク水を入れた検体のDO消費量を差し引いてBODを算出します。
 また、水質検査にはこの他にもブランク水が必要になります。試薬の調製用水とサンプル容器を洗浄する水にもこのブランク水を使います。検体成分が含まれる水によって試薬調製やサンプル容器洗浄を行うと正確な水質検査ができません。
BOD:Biochemical Oxygen Demand 生物化学的酸素要求量
 2つは、水からの汚れ防止策として純水を使います。ボイラ給水中にイオン成分があると、時間経過とともにボイラ内で析出します。そのままに放置すると、ボイラ内にスケールとして付着し経年劣化の要因となります。
 これは注射用水製造用蒸留器内でも同様な現象が起ることがあり、安定した蒸留水を得るためには、濃縮水を所定量ずつ排出することにあわせて、イオン成分がない純水を蒸留器へ供給する必要があります。
 筆者が勤務した水質検査室では、水道水を蒸留器へ供給していましたから、蒸留器内部にはスケールが付着しており、掻き落としながら蒸留水を継続して準備していました。
 第十五改正日本薬局方(2006年)「精製水」の純度試験項目には、蒸発残留物がありましたが、検査室の蒸留器で掻き落としていた成分がまさに蒸発残留物です。
 TVが家庭にも普及した昭和30代は、現在のような薄型のTVではなく、ブラウン管に映像が映るしかけでした。このブラウン管の最終洗浄水としても純水が使われ始めました。多分はじめは、水道水で洗っていたのでしょうがクモリが残ったのでしょう。
 このクモリ除去目的の純水利用の延長線上として、半導体チップを洗浄するために超純水が生まれ、H2Oに限りなく近い純度の水を多量に使う時代へと繋がってゆきます。
 

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