通訳あるあるネタ【第5回】

今回は、査察官が気難しい人だった場合に私が心がけていることをお話します。一番大切なことは、リクエストに迅速に対応することです。そのためには、査察官のリクエストをSME(Subject Matter Expert: Plant TourやDocument Reviewの対応者)に正確に伝えることが必要です。Product Master Formulaと言われたら「製品標準書」、Quality Agreement と言われたら「取決め書」、CofAと言われたら「試験成績書」、CV/JDと言われたら「履歴書と業務分掌(又は職務記述書)」、QCラボでList of Privilegesと言われたら、「システムアクセス権限者リスト」、System Inventoryと言われたら「システム台帳(又は設備機器台帳)←どちらの意味か尋ねる」など、SMEがリクエストされた文書をすぐにイメージできるように訳出して、目的の文書がタイムリーに出てくると、査察官の機嫌が良くなります。また、時差ボケや疲労で不機嫌な査察官には、彼らになじみがある言葉で訳出することで、信頼を得ることができます。SMEがQCラボで「検体の出納帳」と言ったらSample Accountability Sheet、ラベルの収支確認はLabel Reconciliationと、査察官がイメージしやすい英語を使うと、現場の運用を正確かつ効果的に伝えることができます。セミナーを通じて通訳者やQAの皆様にお伝えしていることは、言葉の引き出しをたくさん持つことの重要性です。「弊社ではこの用語を使っている」、「参考品はreference sample(又はreserve sample)と訳すのが正しい」などの主張を聞くことが多いですが、査察官の中には「参考品」の意味でretain samplesという言葉を使う方も多いですし、system inventoryが「設備と分析機器の一覧」を意味する場合もあります。英語と日本語の言葉は必ずしも一対一対応ではありませんし、使用する場面によって意味が変わることもあります。欧米当局で用語に違いがあることもありますし、新しい言葉も次々に出てきます。私は当局査察やGMP監査の通訳を合計90回以上経験しましたが、今でも毎回新しい言葉やコンセプトに遭遇するので、毎回気が抜けません。

執筆者について

経歴 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

連載記事

コメント

コメント

投稿者名必須

投稿者名を入力してください

コメント必須

コメントを入力してください

セミナー

eラーニング

書籍

CM Plusサービス一覧

※CM Plusホームページにリンクされます

関連サイト

※関連サイトにリンクされます