製薬用水の実践知識【第3回】水質管理とモニタリング

はじめに
 
 製薬用水システムを設置したとき、立ち上げ時の水質を維持することが重要になります。製薬用水におけるバリデーションは、予め製薬用水システムへ要求した性能=水質を、システム完成後に継続して維持できているかを確かめることです。
 今回は水質管理についてお話しします。
 
 
1.品質管理と水質管理
 
 品質管理には2つの考え方があり、いずれも長所と短所がありまして、どちらが良いかを選択することは難しいところです。筆者はいずれも必要と考えています。
 1つ目の考え方は、完成品を直に検査する方法ですが、直に検査すると、破壊検査となるため、検査できるサンプル数が限られます。サンプル数が少ないと、サンプル間のバラツキが心配になります。利き酒はこの手法の例になります。
 2つ目の考え方は、製造工程中におけるパラメータを検査する方法です。品質と密接に関連するパラメータを選択すること、言い換えれば、最終製品の性能を、真に把握できるものをパラメータに選択する必要があります。
 温度や圧力など信頼性が高い測定項目をパラメータに選定できると、検査精度は向上しますが、品質とパラメータとのギャップがしばしば問題になります。
 狂牛病が発生した際、当局は食肉輸入元に対して、枝肉における全数検査を要求しましたが、食肉輸入元からは、全数検査に代わって食肉加工における工程管理を徹底して実施しており、「全数検査の必要はない」との主張をしました。
 この工程管理とは、「管理された工程から不良品は発生しない」という考え方であり、医薬品の製造管理に定着したバリデーションは、この工程管理の考え方が背景にあります。
 簡便に言えば、適切なパラメータによって工程管理がなされれば、「良い製品が生まれる」となります。
 水質管理において、理化学試験による純度試験は、完成品を直に検査する方法、1つ目の考え方に該当します。パラメータとして導電率によるオンライン検査は、2つ目の考え方に該当します。
 この工程管理を医薬品製造管理に応用した手法が、PATやRTRT(リアルタイムリリーステスト)概念になります。
 つまり、完成品を直に検査する場合は検査頻度が限られますが、パラメータによって工程管理する場合はオンライン検査が可能になります。ただし、パラメータを適切に選択することが重要になります。
 また、水質管理においてはこの2つの考え方は、二者択一ではなくて、それぞれの考え方を補完するものと筆者は考えています。
 
 PAT:Process Analytical Technology
 RTRT:Real Time Release Test
 

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