GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第9回】

1 犯人捜しと叱責
 ある人に「GMPは犯人探しだから嫌いだ」と言われたことがあった。その人の言い分は、記録には作業者や実施者を記載し、逸脱等の処理において、その記録に逸脱の原因を記載しなければならないからである。製造記録や試験記録には、その実施した作業者や試験者を記載しなければならない。逸脱がヒューマンエラーならば、その逸脱となる作業は誰が起こしたかを明確にしないと、手順書の理解をしていない等の原因を明らかにできない。以前にもお話したが、「教育訓練の徹底」では、是正措置として不足である。犯人探しをして、叱るだけでは、何も問題の解決にはならないのである。しかし、多くの場合、「誰がやった!」「どうしてこんなことをしたんだ!」「手順書を読んで、二度と同じことをするな!」となる。誰もがシステムとして動いていないと思うことは明白だが、これが実情であろう。
 データインテグリティが求められる中、input情報は正しいことをどのように確認されているだろうか。分析装置からその結果データが正しく移行したことは、CSVとして、バリデートすればよい。しかし、人が入力する場合、誤入力のチェックが必要となる。入力データのチェックは誰が行うのか。どのタイミングでするのか、チェックで必ず発見できるか、問題は山積である。100%信頼できるためのデータとするために何ができるのか。リスクマネジメントとして、誤入力によるリスクを分析し、その低減化を図ることが求められる。メールの誤送信防止のために、送信をクリックすると、宛先確認するシステムを導入されることも多いが、つい、確認もせず、送信していないか。自分の作業に対しては、チェックすることが難しい。それは、自身の作業を正しいと思い込んでいるからである。ヒューマンエラーを起こした作業者に、間違いを確認しなかったのか尋ねても、確認した、と言い、間違っていることをその場で認識していない。指差呼称も間違い防止の一つである。チェックの記録も重要だが、チェックばかりに注視され、チェックすべき内容が見落とすことも多い。複雑で理解しにくいとエラーは起きやすいが、単純で簡単なことも長時間、繰り返すと見落とすことも多い。また、男女差別ではないが、目視検査は、女性向で、男性では、女性のように目視検査で検出はできないようである。適材適所ではないが、作業者の性格等も把握をし、作業に見合う人事配置も重要である。その為には、各作業に対する必要なスキルを明確にしなければならない。教育訓練を座学やOJTばかり考えがちだが、その能力の判定をすることも教育訓練である。そのスキル判定方法を適正に定め、個々の評価を行うことこそ、ヒューマンエラー防止のための教育訓練である。ヒューマンエラー防止の教育がより良い改善に向かうようPDCAサイクルとして進める必要がある。

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<図 PDCAサイクル>

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