医療分野でのベトナム進出に関する法規制及び新薬事法細則のポイント【第2回】

 医療分野でのベトナム進出について、前回の連載ではWTOコミットメントに基づく外資規制の内容について確認しました。今回は、ベトナムでの医療機関の開設にあたって必要な手続、要件等を検討します。
 
1 現地法人の設立
 ベトナム国内で医療機関を開設するためには、当該医療機関の運営主体として、まず現地法人を設立する必要があります。
当該現地法人の設立にあたっては、Law67/2014/QH13(投資法)及びLaw68/2014/QH13(企業法)に基づき、投資登録証明書(IRC)及び企業登録証明書(ERC)の取得が必要となります。この点、IRCは外資企業によるベトナムへの投資許可に該当し、ERCは日本における法人登記に該当するものと言えます。
 IRCの取得手続においては、ベトナム計画投資局に対して、開設する医療機関の事業計画、予定される人員・設備等の内容、現地企業との合弁会社とする場合には合意契約書1)等を提出する必要があります。投資許可に関する実質的な判断はIRCの取得段階において行われますので、法人登記に該当するERCの発行はより形式的な手続となります。IRCの取得段階においては、所管の人民委員会や計画投資局との間で、投資計画の内容やその実現可能性等について協議を重ねながら慎重に手続を進めていく必要があります。
 
2 医療機関運営許可の取得
 現地法人の設立後、当該現地法人において、医療機関運営許可を取得する必要があります。医療機関運営許可の発行主体は、計画投資局ではなくベトナム保健省となります。
 Law40/2009/QH12(診断治療法)第42条、第43条及び第46条に規定されている医療機関運営許可の申請書類として主なものは、以下のとおりです。
 1)医療機関の運営を事業内容とする現地法人のIRC
 2)医療従事者のリスト
 3)各医療従事者の医療従事証明の写し
 4)法定条件を満たす十分な人員及び設備を備えていることを示す説明書類
 5)医療機関の組織・運営に関する規程類
 
 上記3)の医療従事証明の取得に関連して、ベトナム国外の医療従事者(日本人医師等を含みます)がベトナムにおいて医療サービスを提供する場合には、診断治療法第19条及び第23条並びにDecree109/2016/ND-CP(医療従事証明・医療機関運営許可に関する政令(本政令))第6条等に基づき、ベトナム国外における医療資格証明書や無犯罪証明書等の提出に加え、当該医療従事者がベトナム語を流暢に話せることが要求されます。
 このベトナム語要件をクリアするためには、ベトナム語により実施された12か月以上のトレーニングプログラムを完了していること、ベトナム国内の大学等が行うベトナム語認定試験に合格していることなどが要求され(本政令第17条)、これをクリアすることは実務上非常に難しいものと思われます。
 通訳人を利用することにより医療従事者自身へのベトナム語要件の適用を回避する方法もありますが、当該通訳人についても、語学能力だけではなく、医学に関する学位の取得や所定のトレーニングプログラムを修了していることなど、一定の医学知識を有していることが要求されており(本政令第18条)、そのような人材を確保することは容易ではないと思われる点に留意する必要があります。

 

1) 外資規制の部分で検討したとおり、外資100%による医療機関の開設が可能ですが、
  ビジネス上の判断として現地パートナーとの合弁を選択する可能性は十分にあると思います。

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