医薬原薬の製造【第30回】(後編)

ボイラーの排ガス熱回収とブロー水による熱ロス
次に排ガスの熱回収について考察します。排ガスの熱回収には、二つの方法があります。一つは、燃焼に用いる空気を予熱する方法。もう一つは、供給水を加熱する方法です。小型ボイラーの多くは、後者の方式を取ります。熱交換器を使って排ガスと供給水を熱交換します。この装置は、エコノマイザーと呼ばれています。空気を予熱する方式は、大型ボイラーで良く用いられているようですが、説明は省略させていただきます。
 
 
上記が、排ガス熱回収装置の付いたボイラーの模式図です。燃焼ガスが熱交換器につながれ、供給水の加熱に使用されています。ここで注目いただきたいことは、排ガスの温度が100℃以下になっている点です。上記のような熱回収装置を付けると、排ガス中の水は、100℃以下となって凝集します。この凝集熱を回収することができるということです。前に計算したように、この凝集熱(高発熱量と低発熱量の差)は、低発熱量Qlowの5.9%になりますので、これだけでボイラー効率を5.9%上げることができます。結局空気比1.3で運転した場合、残りの排ガスの持つ熱量が(25℃から250℃まで加熱のエネルギー)分が、17.3-5.9=11.4%となりますので、排ガスの熱を回収することができれば、25℃まで冷却で11.4%のボイラー効率のアップになります。この11.4%の熱をどこまで回収できるか、どこまで排ガスの温度を下げることができるかが省エネの決め手になります。
 
排ガスの熱回収について以上述べてきましたが、他にもボイラーの熱効率を支配する因子がありますので、それぞれについて簡単に述べていきます。
 
  1. 蒸発管中のスケール発生による伝熱不良とブロー水。
  2. ボイラー負荷の変動による損失
 
1 スケール発生による伝熱不良
 
ボイラーは、供給水を蒸発させて蒸気を発生させますので、供給水中の塩分は、経時的に濃縮されてきます。供給水中にCa,Mg分とCO2分が含有されていると、CaCO3,MgCO3が析出してきます。析出した炭酸塩は、金属に比べて極端に熱伝導率が低いので、ボイラーの伝熱が悪くなり、熱効率が下がります。具体的にはボイラーの排ガスの温度が上がってきます。
 
これを防止するために、供給水中のCa, Mg分は軟化器でNa分に変換されます。軟化器は、Na型強酸性スルホン酸樹脂です。以下の式によって樹脂にCaやMg分が吸着され、Naに変換されます。
 
(Resin-SO3Na)2 + Mg2+ → (Resin-SO3)2Mg + 2Na+
 
ボイラーによってNa+ も濃縮されてきます。Na塩の溶解度が高いとは言っても、濃縮を無限に行っていきますと、析出してくることがあります。これを防止するため、ボイラー缶内の水は、一部捨水されています。これがブロー水です。ブロー水の持つ熱量は、捨てられていることになります。通常小型貫流ボイラーのブロー水は、供給水の10-15%で運転されます。ボイラーメーカーの推奨運転条件(公称ボイラー効率運転時)は7%程度です。ブロー水によってどの程度熱が捨てられているかについて次に考察してみます。
 
ブロー水を0.5MPa、151.84℃と仮定します。ブロー水は蒸気ではないので、捨てられる熱量には、蒸発潜熱を含みません。従ってブロー水による熱ロスはそれほど大きな値になりません。以下に計算経過を示します。
0.5Mpa, 151.84℃の蒸気の持つエンタルピーh'': 2747.5 KJ/Kg
0.5Mpa, 151.84℃の水の持つエンタルピーh':640.115 KJ/Kg
25℃の水の持つエンタルピーh:104.84 KJ/Kg
ブロー率Bとする。
 
数値は、以下より取りました。  
計算結果が以下です。
※クリックでエクセル表をダウンロードできます     

エクセル表は、ブロー率を入れると自動的に計算するようになっています。表示では、15%としています。ブロー率が15%で、熱ロスは3.5%ほどになります。この数値はそれほど大きな値ではありませんが、ブロー率を下げることは、省エネになることは間違いありません。

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