WFI製造プロせすへの思い【第5回】

5. パイロジェンとものさしについて
 WFIに含まれてはならないモノはPyrogenだと教えられ、製薬用水の仕事を始めました。Pyrogen: pyogeneous substance(発熱性物質)は、恒温動物体内で体温上昇作用を引き起こす物質の総称であります。注射によって異常な熱が発生しては大変ですから、WFIに含まれてはならないことは誰もが納得できます。

1)パイロジェン試験
 製薬用水の仕事を始めた頃、日本薬局方にはパイロジェン試験が収載されていました。「健康なウサギ3羽に注射して体温上昇を測定する」試験だったと記憶します。WFI中に残留するPyrogen量を調べる「ものさし」として、ウサギの体温上昇を測定していたのです。記憶に残るウサギによるPyrogen測定イメージを示します。
 


ウサギによるPyrogen測定


 試料をウサギの体重1kg当たり10mL注射したとき、0.6℃(あるいはウサギ3羽の合計で1.4℃)以上の体温上昇が認められると、Pyrogenを含む溶液との定義だった記憶します。
 健康なウサギを飼育する係りの人は楽しくもありますが、世話に手間がかかったことでしょう。「健康なウサギ」とあいまいな記憶しかなく、当時の日本薬局方を詳しく調べようと思い立ちましたが、古い薬局方は見つかりません。
 

2)旧版薬局方を見かけなくなった背景は
 ISO9000シリーズ認証と関係しています。ISO査察の際は、常にあらゆる最新バージョンの基準書を用意することを指摘しますから、この弊害が起こりました。
 日本薬局方は広辞苑サイズの大きな書物として出版されていますから、書棚に置くと目立ちます。ISO査察の際に、「旧版日本薬局方を使っている」と指摘事項になると、後々面倒な手順が必要になりますから、最新版を残し旧版は処分してしまいました。
 今となると、なんと浅墓なことをしたと思いますが後の祭り、旧版を調べるには国会図書館へ出向く必要があります。

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