オーナーのプロジェクトマネジメント【第11回】

今回も引き続き、基本設計ステージについて記載していく。
 
参考 以前に記載した記事の目次
 1.  はじめに
 2.  プロジェクトステージの概要
 3.  何をマネジメントするか
 4.  プロジェクト計画に関連する主要な問題点
 5.  プロジェクトマネジャーの役割と責務
 6.  プロジェクトマネジャーの資質
 7.  プロジェクトで使用することば
 8.  外部への依頼範囲
 9-10. FS(Feasibility Study)ステージ
11-13. 基本計画(概念設計)ステージ
 14.  基本設計ステージ【その1】

15. 基本設計ステージ【その2】
(3) 予算算出
 基本設計ステージにおける予算算出の精度は、ISPE日本本部のEM COPによると、±10%といわれている。基本設計ステージ終了時点では、FSや基本計画ステージに比べると、対象のプラントの内容が大幅に精度アップされ、また、その後のステージでの業務範囲や内容もほぼ決定されている。また、サブコントラクター(建築工事会社、空調設備会社、機器据付工事会社、配管工事会社、電気設備工事会社、計装設備工事会社など)やベンダー(機械メーカー、DCSメーカーなど)へ見積のとれる仕様書が作成されているので、予算精度は大幅にアップし、基本設計終了時の予算が、以降のステージでの実行予算となることが一般的である。
 
例えば、以下のような情報をベースに予算算出を行うことになる。
・プロセス記述書
・プロセスブロックフロー
・確定プロセスフロー
・物性データ最終版
・物質収支最終版
・製造法、運転レシピ、タイムシート
・設計基準書(設計条件書)
・P&ID
・基本配置図
・機器リスト
・確定URS、DCS-URS
・自動化システム構成図、システムハード仕様書、ソフトウェア概念構成図
・機器仕様書(ベンダー見積のとれる仕様書)
・建築基本設計図、主要構造材料表、および各室内仕様書
・ユーティリティ設備仕様書
・ユーティリティ消費量リスト
・廃水・廃棄物処理設備仕様書
・確定運転方案(製造法とタイムシート)
・材質選定基準
・汚染物質データ
・原材料および廃棄物リスト
・各工事仕様書/仕様図
・コミッショニングとクオリフィケーション計画
・業務仕様書
 など
 
 基本設計ステージでは、これらの基本設計パッケージをベースに、予算算出を行う。その手法としては、個々の見積もりを積み上げていくBottom Up方式となる。実際に各ベンダーやサブコンからの見積を入手したり、製薬企業に精度の良い積算システムを有していればそれを使用したり、その混合方式により予算算出を行う。
 この基本設計終了段階にまで達すれば、見積金額をベースにした競争見積は、十分可能である。見積に影響するプラントの仕様やプロジェクトの遂行方法などもほぼ確定しているためである。この段階であればランプサム契約が妥当である。
 ただしよく誤解があるのは、製薬企業の方で基本設計パッケージは完成したので、競争見積が可能であると思い込む場合がある。その内容を見ると基本計画に毛の生えた程度のものであることが多い。しかし、受注企業は、相手がお客様であるため、なかなか本音を言えないのが通常である。基本設計パッケージがほぼ完成しているかどうかの簡単な判断は
・機器配置図において、機器の位置を示す寸法が入っているか。
・P&IDがほぼ完成しているか(原薬でいえばユーティリティのドレン、エアー抜きを除いてほぼ完成している。製剤でいえば、ベンダーパッケージ内の情報もある程度入手している)。
・機器リストに詳細な仕様の記載があり、機器仕様書にて機器購入の見積がとれるか。
・プロジェクトの業務が明確であり、その所掌範囲が決定しているか。
といえる。となると殆どの国内製薬企業では、このレベルの基本設計パッケージの作成は困難であり、現実的にはエンジニアリング会社やゼネコンに作成を依頼していることになる。

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