医薬品製造設備の洗浄バリデーション【第4回】

【第4回】 洗浄バリデーションの検討すべき内容(2)
-サンプリング箇所の選定、定量方法の設定、残留許容限度値の決定、その他-
 
Validationの一般要件と法規制
洗浄バリデーションの基本コンセプトとして、
「医薬品の有効性および安全性を確保するためには、承認された成分以外のものが含まれていないことが必須である。そのためには、製造環境からの異物を混入させないこと、および製造設備に付着した残留物を次に製造する品目に混入させないことが重要である。製造の残留物の次製造品目への混入は、全ての設備・機器を洗浄し、清浄化することにより防止できる。」
 
4.1 検討すべき内容
4) サンプリング箇所の選定
 サンプリング箇所の設定には、製造設備の構造と洗浄手順書から判断して残留物が多いと予測される場所および製造設備の構造上、薬剤等と接触する面積が最も広い場所をターゲットとすること。また、サンプリング箇所の妥当性を明らかにするため、準備段階として、設備・機器の最も洗浄し難い箇所(ワーストロケーションまたはホットスポットおよびクリティカルエリア)を含めた多くのポイントを目視確認等で予め分析してサンプリングポイントを選定し、計画書に図等で明記すること。例えば、目視確認が困難である時、洗浄が容易な薬剤等を機器に塗布し、軽く洗浄した後、場所別(蓋、側面、底面、内壁・内面、攪拌棒、攪拌羽根、コネクター部、軸、バルブ、錠剤等輸送ベルト、バッフル、金網、スプレーガン・ホース先端部、排出口等)のポイントを分析しワーストポイントを求める等である。なお、最も洗浄し難い箇所に対しては、十分なサンプリング量を考慮し、洗浄が困難である場合には、分解洗浄を考慮すること。
 なおサンプリング箇所の選定には、汚染物質の種類と発生源を特定することが必要となる。医薬品原薬・製剤工場における汚染物質発生と残留由来の例として、以下の観点から考える必要がある。
 
(1) 製造工程操作由来の残留物汚染:原材料、残存中間体、分解生成物、変性物など(原薬工場の場合は、溶媒回収を含む)のキャリーオーバー (ICHQ7A)
(2) 製造工程外由来の汚染:製造設備が設置されている製造室、または屋外などからの汚染物質の混入や、原材料・中間物の分解・変質・変性物など。
(3) 製造設備との化学反応または製造設備からの溶出:原料や中間体と設備構成材料との反応、あるいは溶出などにより、汚染物質が生成する場合。(4-1 1)項参照)
(4) 他の製造品目とのクロスコンタミネーション
 
参考事例:
 原薬工場における残留物としては、以下が知られる11)
 (a)残留溶媒:製造設備内に残留する溶媒は、最終段階において水などの無害溶液と置換され除去されるか、乾燥、蒸発などの方法により、原薬から無害なレベルまで除去される。製造側で安全な残留量のレベル(許容残留限度値)を設定することと、洗浄後の残留量がその値以下であることをバリデートすることが要求される。
 (b)洗浄残留物:製造機器に残る残留物、ロット間にまたがる残留物、品種切り替時の洗浄残留物、複数の中間体を同一設備で製造する場合の切り替え洗浄残留物など
 (c)外部から添加された助剤などの残留:添加剤、触媒(原材料)、重金属など工程操作の必要に応じて外部より添加される助剤など
 (d)生産機器に由来する汚染物質:製造に使用する機器・機材のライニングの剥離、フィルター繊維の脱落・ちぎれ、機器の破損による異物混入、ボルト・金属片、機器摺動部からの脱落・破損、シール液などの混入。
 これらについても、洗浄バリデーションにより残留物管理が適切に行わなければならない。

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