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WFI製造プロせすへの思い【第26回】

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執筆者:布目 温

WFI製造プロせすへの思い【第25回】

WFI製造プロせすへの思い

【第26回】非蒸留法が普及する可能性を検討する

本記事は2018年5月31日に書籍「製薬用水の実践知識/Q&A(前編)」(発行 : 株式会社シーエムプラス)として発刊いたしました。
※書籍版と本記事は体裁や付属資料など、一部異なる仕様となります。

 蒸留器を使わないWFI製造方法が普及する可能性を検討します。結論から言うと可能性は大です。なぜなら安全なWFIを製造する最終装置として、蒸留器採用がベストではないからです。併せて日本では、非蒸留法によるPyrogen分離に取り組んできた先人達の実績があるからです。
 先人達:この分野の先輩達へ敬意をこめて呼びます。
 
1. WFI最終装置の機能は
 「蒸留」という操作によって、Purified Water (精製水)中に存在するPyrogenを分離することができますが、その分離機能は蒸留器機種ごとで異なります。全ての蒸留器において、理想的な「蒸留」という単位操作が行われるとは限りません。
 Pyrogenを分離する機能は、分子量レベルの物質を排除できる「膜分離」のほうが、「蒸留」よりも確実であると考えます。
 
2. 日本におけるRO/UFによる取組み
 日本のWFI製造現場では、この半世紀の間に、膜によるPyrogen分離への取り組みがされました。1970年代には、米国から輸入したROを利用して、平膜によるビーカスケール試験に始まり、ROモジュールを利用してのパイロット試験、1980年代には、ROによるWFI製造装置の稼働へ進みました。
 1982年には、製薬会社と膜メーカーと装置メーカー三者が構成メンバーとなり、膜協会(高分子膜分離技術振興協会)が設立され、ここで検討された膜分離(RO and UF)によるWFIを製造する案が、結果的に、第十一改正日本薬局方第一追補におけるWFI製造法としての「超ろ過法」収載へつながりました。
 ROによるWFI製造と並行して、1980年代には、分画分子量6000を表記するUFによるPyrogenフリー水の製造が稼働しました。このUFが広く日本で普及した背景には、RO水の透過側から時折微生物が検出される現象が発生したからでした。
 筆者が知る現場でも、ROを交換したところ、交換前は無菌であったRO水から微生物が検出され、解決に1か月を要することも経験しました。これらの現場は次第に、熱水殺菌が可能な、かつ分画分子量6000を表記するUFへの更新が進みました。
 このPyrogen 分離を設置目的とする装置からのUF水が、蒸留器へ供給され、現在も多くが稼働中です。

3. いわばチャレンジテストデータが蓄積されている
 蒸留器の前段にUFが採用されているWFI製造現場では、精製水中のエンドトキシンをUFによって実際に分離しているデータが蓄積されています。つまり、それぞれの現場で日常的にチャレンジテストが繰り返されていることになるのです。
 よって日本では、いわば安全装置的な役割を果たしている蒸留器を外すのか、あるいは、既存の蒸留器の位置に、新たな膜分離を設置するのかを検討することへ進みます。
 蒸留法よりも安全な、WFIを確実に製造できる非蒸留法採用へ進むのは、時間の問題であると考えます。

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布目 温

布目 温

布目技術士事務所
技術士 衛生工学部門:水質管理
1972年栗田工業(株)入社、1992年野村マイクロ・サイエンス(株)入社。2011年布目技術士事務所(製薬用水コンサルタント)開設。製薬用水のスペシャリスト。