2018.02.23.FRI

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ラボにおけるERESとCSV【第38回】

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執筆者:望月 清

ラボにおけるERESとCSV【第37回】

ラボにおけるERESとCSV

FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(8)

■4月12日、13日
門外漢のためのコンピュータ化システムバリデーション
~事例解説で身に付けるCSV速習~

 

7.483における指摘(国内)
前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。
 
■M社 2016/7 /22 483
施設:製剤工場


Observation 2
ラボ記録が不完全であり、テストデータの完全な記録が含まれていない。電子記録が使われているが、バリデーション、記録維持、および監査証跡の要件を満たしていない。そのため、電子記録が確かであり、信用でき、紙記録と同等であることを保証できない。特に;
1) OOS処理のSOPには、全てのテスト結果を報告するよう記載されていない。
2) クライアントサーバに保存されたデータをQCラボにおいて削除できる。
3) スタンドアローン型ワークステーションにおいて、Windows OSの日時を変更できてしまう。
4) QCラボにおいて、データをコピーペーストし、USB、CD、DVDなどの外部デバイスに保存できる。
5) QCラボにおいて、結果をクライアントサーバに保存することなく分析を行ったり結果をプレビューすることができる。
6) QCラボにおいて、複数プロジェクトのテスト結果をコピー、保存でき、プロジェクトから結果を削除できる。
7) QCラボの職員は、ケミストとしてログインし、次に管理者としてログインし、そしてケミストとしてログインできる。2014年から2016年の間のEmpower3 ユーザーアクセスログをプリントアウトしたところ、「ケミストとしてログインし、次に管理者としてログインし、再びケミストとしてログインした」事例が数え切れないほど含まれていた。
 
★解説:
1)項について
OOSの処理を行う場合、全てのテストデータを記録する必要がある。さもないと、良いとこ取りの繰り返しテストを行っているのではないかと疑われる。たとえば;
▷ 予想外不一致の原因を明確にしないまま再テストを行い、良い結果が出たら正式記録としている
▷ 最初のテスト結果を破棄し、再テストの記録しか残していない
FDAは「Guidance for Industry, Investigating Out-of-Specification (OOS) Test Results for Pharmaceutical Production」においてOOS処理のガイダンスを示している。このガイダンスにはその根拠法令(連邦食品・医薬品・化粧品法、CGMP)も記載されている。このガイダンスを参照し、法令違反とならないようなOOS処理手順とする必要がある。このガイダンスの要旨はファームテクジャパン2018年2月号を参照されたい。
 
2)項について
電子生データを削除できてしまうという指摘である。実際には削除したことがなくても、このような指摘を受ける。
 
3)項について
データの良いとこ取りをしていないことの証明は、関連するデータのタイムスタンプをより所とすることが多い。したがって、データインテグリティ対応においてまず最初に行うべきことは時刻(タイムスタンプ)の真正性確保である。Windowsベースのアプリケーションは多くの場合、OSの時刻をデータや監査証跡のタイムスタンプに使用している。本指摘は、「GMP従事者がOSの時刻を変更できるので、データや監査証跡につけられたタイムスタンプの真正性を保証できない」というものであると考えられる。この指摘への対応は以下のようにするとよい。
・ GMP従事者は、時刻調整権限のない一般ユーザーでOSにログインする
・ GMPに従事しないIT部門の職員などが管理者権限でOSにログインし、時刻調整を行う
ただし、一般ユーザーでOSにログインしてアプリケーションを使用する場合、アプリケーションによっては機能に支障が出る場合があるので注意が必要である。
 
4)項について
「データをコピーペーストし、USB、CD、DVDなどの外部デバイスに保存できる」との指摘であるが、このこと自体に問題はない。外部デバイスに保存したデータを取り込んで、データのすげ替えができるとの指摘かもしれない。理解できない指摘内容は、査察期間中に査察官と十分にディスカッションしておく必要がある。さもないと、483指摘に対し適切に対応できない。

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望月 清

望月 清

合同会社エクスプロ・アソシエイツ代表。
1973年山武ハネウエル株式会社(現アズビル)入社。分散型制御システム(DCS)を米国ハネウエル社と分担開発。2002年よりPart 11およびコンピュータ化システムバリデーションのコンサルテーションを大手製薬会社にご提供。2009年より微生物迅速測定装置の啓蒙普及に従事。2014年5月より現職。