2018.02.09.FRI

品質システム(PQS)

GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第6回】

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執筆者:中川原 愼也

GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第5回】

GMPヒューマンエラー防止のための文書管理

データインテグリティ

1.  入力ミス、操作ミス
 GMPにおける手順書の作成や指図書及び記録の管理においてコンピュータを切り離すことは無理であろう。手順書や記録を紙ベースとして原本管理しているとしても、そのコンピュータにある手順書のデータや記録のデータをCSVとして管理することは求められる。記録の様式が旧バージョンのまま使用されていて、その原因を探ると、現場で古い様式をダウンロードして使用しているケースは間々ある。その為にも、データ管理としなければならない。
 紙面にしろ、電子データにしろ、input情報が正しいものとして入力されたであろうか。多くのエラーは、人による入力ミスや操作ミスが引き起こすものである。プログラムを組む時も多くは、人によるミスで、バグ等が生じる。そのエラーを防ぐために、チェックすればいいと意見も多いが、チェックで見逃す可能性も高い。見逃すからダブルチェックしても、見逃す可能性は0にはならない。エラーを防ぐにはまずは発生をいかに低くするかが重要である。
 それでは、いかに入力ミスを減らすことができるのか。これをすれば入力ミスをなくす正解などはない。作業環境に問題があるのか、入力画面に問題があるのか、入力項目に問題があるのか、それは実際の作業者が入力しにくい点はどこにあるかを明確にし、特性要因図等を利用してリスク分析することが必要である。エラーが起きたとき、作業者を叱り、再教育するだけでは不十分である。作業者がそのinput情報の重要さを認識することは必要であるが、エラーの要因を作業者の認知度に限定してはならない。作業者にその操作方法のみ教育訓練することでは不足である。そのプロセスを理解することで、ミスを一層、防止することになる。なぜ、その作業をするか理解しないままにすると、エラーを起こした時に気が付かないことになる。リスクを認知するために工程を理解することが重要である。CSVガイドラインにおいて、システム導入時のリスク分析が求められている。入力作業者の声をきちんと聴き、リスクがないか検討することが必要である。データインテグリティを確保するためのALCOA原則1)は、次のとおりである。
 
ALCOA原則
Attributable(帰属性): 帰属/責任の所在が明確である。
Legible(判読性):判読/理解できる。
Contemporaneous(同時性):同時である。
Original(原本性):原本である。複製物*や転記したものではない。
 〔*Certified Copy(原本と同一であることが保証されている複写物)を除く〕
Accurate(正確性):正確である。

  入力ミスをシステムで防御できるのは、明らかにある範囲から逸脱している場合で、エラー値を返すことで対応する。しかし、それが範囲内ならば、異なるデータを受け入れ可能となる。入力ミスや操作ミスを「0」にするのは不可能ではあるが、どこまで「0」に近づけるかは作業者の意識による。「人の振り見て我が振り直せ」で、どのような状況で入力ミスや操作ミスが起きるかをリスク分析して、予防措置に結び付けることが重要である。

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中川原 愼也

中川原 愼也

高田製薬株式会社生産本部品質統括部門品質統括部長
1984年神奈川県庁に入庁し、1997年国立公衆衛生院(現在の国立保健医療科学院の前身)でGMP研修を受講後、薬務課及び小田原保健所等で医薬品等の製造販売業、製造業の許認可、審査、指導を主にGMP・GQPリーダー査察官として16年にわたり活躍した。その間、MRA(日・欧州共同体相互承認協定)の締結の際のEUの調査、2005年の製造販売承認制度の施行に携わり、PIC/S加盟にあたり、厚生労働省の委員等委嘱を受け、次の活動に参加した。
平成20、21年度 GMP/QMS調査・監視指導整合性検討会委員
平成21、22年度 厚生労働科学研究~GMP査察手法の国際整合性確保に関する研究
2012年に神奈川県庁を退職し、医薬品原薬輸入商社であるコーア商事株式会社で、品質保証部長として国内管理人としてのGQP取決め及び医薬品製造業としての GMP管理を統括した。2015年から株式会社ファーマプランニングにて、GxPコンサルタント業務に携わり、2017年高田製薬株式会社に入社、4月より同大宮工場製造管理者に就任。