2018.01.13.SAT

再生医療

再生医療等製品の品質確保のための要求事項【第5回】

この記事を印刷する

執筆者:水谷 学

再生医療等製品の品質確保のための要求事項【第4回】

再生医療等製品の品質確保のための要求事項

【第5回】製造施設の運用

 ここでは再生医療等製品製造の施設(細胞培養加工施設)の運用における考え方と、現状にて生じる課題について概説します。
 
●現状の細胞製造における製造管理と品質管理(運用)の考え方
 再生医療等製品は、これまでにお話しをした通り、細胞以外の原料や工程操作の手順を変更するだけで製品の同等性の証明が困難になる、すなわち、「プロセス・イズ・プロダクト」です。そのため、再生医療等製品などの細胞製造の品質マネジメントでは、細胞製造施設において実施される、無菌操作環境維持作業および製造工程作業の記録を活用することが要求されていると考えます。
 例えば、生きた細胞を製品とする再生医療等製品の製造では、滅菌(無菌化)工程を持つことが困難です。そのため、最終製品の品質管理においては、無菌性を保証するため、全工程において無菌操作が実施されたことを確認することが重要だと考えます。特にロットを構成する製造では、衛生管理において確認された、施設の清浄度管理記録(環境モニタリング)が製品の品質管理において必要になる場合が生じます。
 同時に、現在の科学技術レベルでは、製品の品質規格に係る品質試験のほとんどは、最終製品から製造工程が適切に実施されたことを確認(検知)することは困難です。すなわち、現状の最終製品において、PCRやフローサイトメトリーにて細胞の表面抗原等の測定を実施する、細胞を同定するための評価項目は、特定の細胞の種類を同定しているだけで、対象を網羅的に評価することはできていません。したがって、逸脱無く細胞加工が実施されたことを証明することはできません。例えば、培地交換の作業において培地に用事添加する活性因子を入れ忘れたり、作業が想定する工数(時間)を大きくオーバーしてしまっていたり、工程内で何かしらの逸脱が生じていたとしても、細胞に生じた変化は最終製品の品質試験項目から検出(判断)することはできないと考えます。無論、品質規格に影響が無いならば、製品に問題はない可能性もありますが、逆に、想定外の変化が生じた可能性を否定することも難しいと考えます。そのため、最終製品の品質管理において、取り違え等が発生しておらず、逸脱無く製造が実施されたことを確認するためには、各工程の作業が正しく実施されたことの記録(工程モニタリング)が不可欠となります。
 製造では、施設(構造設備)管理、衛生管理、購買管理のそれぞれを適切に運用することによって、混入防止、混同防止および交差汚染防止を適切に機能させることが求められます。これらの活動は、ハードウェアとソフトウェアの相互補完により実施されるため、運用を適切に実施するためには、作業者の教育訓練が重要になります。これらの運用の上で製造管理、すなわち細胞製造性を考慮した工程操作が適切に実施されることで、無菌操作および細胞加工に係る品質を確保するための機能を維持することが可能になると考えます。
 運用において得られた記録(情報)は、継続的に解析を行うことで、安定した供給を実施するために欠かせない道具となります。運用のマネジメントとしては、他の製造業と比較しても、特別なことを行っているとは言えないと思います。しかしながら、最終製品での管理が難しく、プロセスにばらつきが生じやすい上に、原料細胞の受け入れ規格が詳細に決定できない場合が多い、再生医療等製品の品質管理では、製造管理の情報が製品のバリデーション(ベリフィケーション)や照査(予防・是正)において必要な情報となる可能性は低いものではないと認識しますので、適切に活用されることが望ましいと考えます。

1 / 2ページ

水谷 学

水谷 学

大阪大学 大学院工学研究科 生命先端工学 特任講師。
1997年群馬大学大学院工学研究科博士後期課程を中退。国立循環器病センター研究所生体工学部にて生体適合性材料の研究を行った後、株式会社東海メディカルプロダクツにて循環器用カテーテルの開発および製造に関わる。2004年より株式会社セルシードにて再生医療に係る開発および品質保証を担当し、臨床用細胞加工物の工程設計や細胞培養加工施設の設計と運用を実施。東京女子医科大学での細胞シート製造装置開発を経て、2014年より現職。細胞製造システムの開発に従事。日本再生医療学会臨床培養士制度委員会委員、H-CARM特定認定再生医療等委員会委員。

Books

書籍一覧

Service menu

GMP Platform提供のサービスです