2017.12.15.FRI

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ラボにおけるERESとCSV【第36回】

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執筆者:望月 清

ラボにおけるERESとCSV【第35回】

ラボにおけるERESとCSV

FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(6)

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7.483における指摘(国内)
前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。
 
■K社 2016/6 /3 483
施設:CRO

 
Observation 1
ラボのデータが不完全である。
1) ICPにおいて;
  ▷ データを削除できる
  ▷ ハードディスク中のデータをアプリケーションを介さずに消去できる
  ▷ 分析者はデータを保存しないことを選択できる
2) DSCシステムの監査証跡がレビューされていない
 
★解説:
1)項について
▷ 査察官はこのICPはダイナミック・データでありオリジナル形式の電子記録を維持すべきと判断したと思われる。スタティック・データと捉えるべきかダイナミック・データと捉えるべきか判断がわかれる場合がある。査察官と意見が異なる場合は、査察官とディスカッションするとよい。スタティック・データの場合、紙やPDFファイルで保存してよい。ただし、関連する監査証跡を含めて維持する必要がある。詳細はMHRAガイダンスもしくはPIC/Sガイダンス第8.11節を参照されたい。
▷ 「アプリケーションを介さずに消去できる」というのはエクスプローラ等のOS機能によりデータを削除できてしまうという指摘である。この指摘が散見されるようになってきたが対応は容易ではない。例えば以下の様な対策案が考えられるが、いずれの案もシステム供給者との協議が必要である。
   ✓リレーショナルデータベース化
   ✓データ格納フォルダーのアクセス権限を制限
   ✓アプリケーションの自動フルスクリーン表示とアプリケーション画面に
    おけるOS操作の無効化
   ✓ダイナミック・データであると判断された場合には、電子記録を維持し
    電子記録によりデータレビューを行う必要がある。したがって、ダイナ
    ミック・データにもかかわらずオリジナル形式の電子記録が維持されて
    いない場合には、「紙記録のみによるデータレビューは不適切である」
    と指摘される。
2)項について
  ▷DSCシステムがダイナミック・データであるなら;
   ✓オリジナル形式の電子記録を維持する必要がある
   ✓データレビューは電子記録により精査する必要がある
   ✓データレビューにおいて電子記録中の監査証跡をレビューする必要がある
  ▷DSCシステムがスタティック・データであるなら;
   ✓オリジナル形式の電子記録、あるいは紙の記録のどちらで維持してもよい
   ✓ただし、紙の記録で維持する場合、関連する監査証跡を含めて維持する
    必要がある
    (出典:MHRAガイダンス、PIC/Sガイダンス第8.11節)
良いとこ取りをしていないことを証明するには、監査証跡を維持しておく必要がある。


Observation 2
リースした分析機器を使用しているが、リース会社の適格性が評価されていない。このリース会社は、機器の予防保全やキャリブレーションのスケジューリングと実施、予定外の保守、マニュアルや手順書の作成、教育などの責任を負っている。
 
★解説:
分析機器をリースしている会社が、機器の予防保全やキャリブレーションのスケジューリングと実施、マニュアルや手順書の作成、教育などのGMP上の責任まで負っている。すなわちGMP業務をリース会社に業務委託していることになる。この場合、GMP業務の委託先を監査するなどして業務委託先の適格性を保証する必要があるとの指摘と思われる。


Observation 4
予期せぬ不一致の調査を、その不一致が影響するかもしれない製品へ展開していない。2015年2月から12月にかけて微粒子サイズのOOTが6回発生したが、この機器はチェックされキャリブレーションされていたにもかかわらず機器の問題であると結論づけられた。2016年1月にこの微粒子サイズの問題はメーカにおいて確認され、この微粒子サイズアナライザーの調整がなされた。しかし、2015年2月から12月の間にこの機器よって分析されたデータに対する影響調査はなされていなかった。データは機器の問題の影響を受けているかもしれないし、キャリブレーションにおいてこの問題が発見できなかった理由の調査も必要である。
 
★解説:
本指摘は以下のcGMP要件を満たしていないためになされた指摘と考えられる。
  ▷cGMP §211.160 (b)(4)
   分析者は以下を保証しなければならない。
   ✓所定の性能に適合した機器のみを使用
   ✓全ての機器は適切に校正されている
  ▷cGMP §211.192
   ✓OOSとなった場合、十分な調査を行うこと
   ✓その調査は同じ品目の他のバッチ、あるいはそのOOSが関連する品目
    にまで広げること
   ✓その調査は記録し、調査記録には結果とその後の対応を含めること

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望月 清

望月 清

合同会社エクスプロ・アソシエイツ代表。
1973年山武ハネウエル株式会社(現アズビル)入社。分散型制御システム(DCS)を米国ハネウエル社と分担開発。2002年よりPart 11およびコンピュータ化システムバリデーションのコンサルテーションを大手製薬会社にご提供。2009年より微生物迅速測定装置の啓蒙普及に従事。2014年5月より現職。