2017.12.01.FRI

品質システム(PQS)

GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第4回】

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執筆者:中川原 愼也

GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第3回】

GMPヒューマンエラー防止のための文書管理

GMP記録書(2)

1. 1から100までの数字の合計
 カール・フリードリヒ・ガウスの小学校での逸話1)で、1から100までの数字の合計を出す課題を即座に答えたことは、ご存知の方も多いだろう。
 
【問題】
  1+2+3+4+5+6+7+8+9+10+……
       ……+91+92+93+94+95+96+97+98+99+100=
【答】5050

 ガウスが導いたのは、(1+100)×100÷2の計算式である。ここでこの数式を説明することは省略するが、答えを求める途中経過を現在のGMP記録は求めるのである。データインテグリティを確保するために、インプットデータをいかに処理してアウトプットが導き出されたか明確にし、記録することが必要である。
 もう1点、ガウスの逸話を例にしたのは、ヒューマンエラーを防止するためには、作業の効率化が必要であるからである。もし、1+2+3+……と順番に計算をすると99のステップの計算をすることとなる。間違いを生じる可能性が99ステップになってしまう。では、ガウスが行った計算では、3ステップの計算で済むわけで、計算間違いの可能性がその分低くなる。早く結果を導き出せるだけでなく、間違いも少なくなる点に注目してほしい。
 ヒューマンエラーは、単純な作業の繰り返しでも起こるが、複雑で長い時間が必要となるときにも生じる。複雑な作業では、作業者の理解が十分でなく、エラーが生じる。単純な作業でも、繰り返すことにより、ミスが起きる。その作業をいかに認識して、エラーを減らすかは、その現場の作業者が業務を理解し、いかに効率的に業務を進めることを常に考え、必要な改善を行うことが重要である。
 製造販売承認書における製造方法や試験方法について、詳細な記載を求められ、適合性調査では、その根拠たるデータの提示が必要となる。データインテグリティ確保のため、生データの管理も厳しく求められる。試験の生データは、昔(私がGMPを担当し始めた平成10年ごろ)は、担当者のノートに記載されていることが多く、そのノートもGMPの管理対象となっていないこともあった。最近は、薄層クロマトグラフィ(TLC)の結果として、写真等が求められるのは当たり前で、場合により、写真の改ざん防止対策も追及されることもある。写真の色やコントラストの編集も簡単できるソフトもあり、そのデータインテグリティが確保されていることを証明することも難しくなっている。昔の写真は色あせ等が起き、保存性の点で問題であったが、現在の写真データは、真正性の点で修正がないことを示す必要となる。以前、セロハン紙にTLCの結果を写し取ったものを生データとして管理している製造所もあったが、鉛筆で写し取ったものは、査察でNG判断とされるかもしれない。写真のように加工ができないし、そのスポットの濃さが試験者の技術で鮮やかに写し取られ、見やすく、コピー等を行い、修正できない対策をとれば、生データとしてもよいと思う。

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中川原 愼也

中川原 愼也

高田製薬株式会社生産本部品質統括部門品質統括部長
1984年神奈川県庁に入庁し、1997年国立公衆衛生院(現在の国立保健医療科学院の前身)でGMP研修を受講後、薬務課及び小田原保健所等で医薬品等の製造販売業、製造業の許認可、審査、指導を主にGMP・GQPリーダー査察官として16年にわたり活躍した。その間、MRA(日・欧州共同体相互承認協定)の締結の際のEUの調査、2005年の製造販売承認制度の施行に携わり、PIC/S加盟にあたり、厚生労働省の委員等委嘱を受け、次の活動に参加した。
平成20、21年度 GMP/QMS調査・監視指導整合性検討会委員
平成21、22年度 厚生労働科学研究~GMP査察手法の国際整合性確保に関する研究
2012年に神奈川県庁を退職し、医薬品原薬輸入商社であるコーア商事株式会社で、品質保証部長として国内管理人としてのGQP取決め及び医薬品製造業としての GMP管理を統括した。2015年から株式会社ファーマプランニングにて、GxPコンサルタント業務に携わり、2017年高田製薬株式会社に入社、4月より同大宮工場製造管理者に就任。