2017.10.20.FRI

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ラボにおけるERESとCSV【第34回】

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執筆者:望月 清

ラボにおけるERESとCSV【第33回】

ラボにおけるERESとCSV

FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(4)

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7.483における指摘(国内)
前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。

■I社 2016/6/17 483
施設:原薬工場


Observation 1
生データの維持とレビューができていない;
全ての生データを維持するよう規定されておらず、報告されたデータしか維持していない。
分析者は報告しないデータを削除していた。HPLCとGCの電子ファイルを査察調査したところ、多くのクロマトグラムが削除されたり、もしくは報告されていないことが判明した。IRの電子ファイルも削除されていた。

クロマトグラムが削除されたり報告されなかった例;
1) GCのクロマトグラムがコンピュータのゴミ箱に捨てられていた。
  そのファイルを復元したところ;
    ◇ 2015/9/9~9/10に実行したシーケンスファイルが、2016/5/31に
      削除されておりその理由は記録されていなかった
    ◇ 削除されたもののいくつかは2015/9/11に再実行され正式記録と
      していた
2) HPLC#15において、2014/2/28にテストし、2014/3/2に再テストした。
  さらに、HPLC#16において、3回目のテストを行い正式記録とした。
3) HPLC#16におけるテストにおいて、クロマトグラムが削除され、同じファイル
  名のクロマトグラムと差し替えられた
 
洗浄バリデーション中の微生物テストおよびエンドトキシンテストにおいて、サンプル調製の回数、重量、培地ロット番号、インキュベータに関する生データが維持されていない。
  
★解説:
データインテグリティに係わる用語を以下にまとめる。
生データ
・少なくとも、品質判定に用いる全てのデータを生データと規定すること
生データとなる電子記録を規定すること
(出典:PIC/S GMP第4章 文書化)
・データを生成した作業を完全に再構築できるものであること
(出典:MHRA データインテグリティ・ガイダンス)
メタデータ
データの意味を理解するのに必要な情報
・データの数値だけでは何を意味するのかわからない
たとえば「23」という数値は、「mg」といった単位表示のようなメタデータがなければ何の意味もない
・データを収集した日時のタイムスタンプ、データを生成したテストや分析を実施した人のユーザーID、データ収集に使用した機器のID、監査証跡などもメタデータ
(出典:FDA データインテグリティ・ガイダンス)
オリジナル・レコード
・紙であろうが、電子であろうが最初に捉えた情報 (原本性)
(出典:PIC/S データインテグリティ・ガイダンス 第7.5節)
真正コピー(True Copy)
・オリジナル・レコードの正確な検証済みコピー
(出典:MHRA データインテグリティ・ガイダンス)
ダイナミック・レコード
・データ処理、データ解析、データを拡大表示できるような形式の記録。例えば、電子的に維持されているクロマトグラフィのオリジナル・レコード
(出典:WHO データインテグリティ・ガイダンス 第3章)
スタティック・レコード
・紙やpdfの様に、データが固定されており再処理や拡大表示ができないような形式の記録
(出典:WHO データインテグリティ・ガイダンス 第3章)

HPLCやGCの生データはクロマトグラムだけではなく、シーケンスファイルを含むメソッドファイルや監査証跡も生データとなる。HPLCやGCの生データはダイナミック・レコードであるので、オリジナル・レコードもしくはその真正コピーを電子記録として維持しなければならない。HPLCやGCからのプリントアウトは、電子生データの一部の正確なコピーである。HPLCやGCからのプリントアウトだけでは生データとはならない。プリントアウトといったスタティック・レコードではHPLCやGCによるテスト結果を精査できない。ダイナミック形式の電子生データにより精査する必要がある。
 
1)項、2)項について
繰り返しテストを行い、採用しなかったテストの生データを捨てていたとの指摘である。良いとこ取りテストの可能性を疑われているが、その疑いを否定するのは容易ではない。
3)項について
生データをすげ替えていたとの指摘である。

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望月 清

望月 清

合同会社エクスプロ・アソシエイツ代表。
1973年山武ハネウエル株式会社(現アズビル)入社。分散型制御システム(DCS)を米国ハネウエル社と分担開発。2002年よりPart 11およびコンピュータ化システムバリデーションのコンサルテーションを大手製薬会社にご提供。2009年より微生物迅速測定装置の啓蒙普及に従事。2014年5月より現職。